気の巡りを改善して肺や胃腸の症状に効く
暑くて寝苦しい夜が続くと、熟睡できず、疲れが取れないという人も多いでしょう。
そんな人にお勧めしたいのが、シソを煮出して作る「シソジュース」です。
シソは、漢字で「紫蘇」と書きます。
中国には、この名前にまつわるおもしろい逸話が残っています。
カニを食べて食中毒を起こし、死にかけた若者に、時の名医が紫色の葉を煎じて飲ませたところ、若者はたちどころに蘇生しました。
以来、この紫色の葉を、「紫蘇」と呼ぶようになったというのです。
現代では、青ジソが刺し身のつまとして添えられますが、皆さんは食べていらっしゃいますか。
シソには魚介類についた細菌を殺す作用があり、食中毒を防ぐ働きがあります。
ですから、刺し身だけでなく、シソもいっしょに食べたほうがいいのです。
シソは、日本古来の在来種という説もありますが、漢方薬として中国から持ち込まれたという説もあります。
その漢方では、シソは「蘇葉」という生薬(漢方薬の原材料)で、葉だけでなく花や実も乾燥させて使います。
香りがよく、味は辛(からい)、性質は温(温める)が特徴です。
また、気(生命エネルギーの一種)の巡りを改善して、肺や胃腸の症状に効くとされています。
蘇葉を使った代表的な漢方薬が、「香蘇散」です。
この薬は、カゼのひき始めによく用いますが、いらだったとき、気持ちが落ち着かないとき、眠れないときなどにも処方します。
そのほか、神経を鎮める「半夏厚朴湯」や、ぜんそくに効く「柴朴湯」など、いろいろな漢方薬に配合されています。
更年期障害やめまい、イライラが緩和
●不眠を改善する
シソは、漢方では理気剤として使われます。
理気とは、気の巡りをよくし、うっ滞(停滞した状態)を取り除く作用のことです。
気が巡るようになれば、精神状態が落ち着き、自然に安眠がもたらされます。
また、シソには冷房などで冷えた体を温める作用があります。
ですから、冷えからくる不眠にも効果が期待できます。
●胃腸の調子を整える
夏は冷たい物のとりすぎや冷房で、胃腸が弱り、消化不良や食欲不振、胃痛などを起こしやすくなります。
シソは、おなかの気を巡らせて、胃腸の症状を和らげ、調子を整えてくれます。
●自律神経のバランスを整える
気の巡りがよくなれば、自律神経(全身の血管や内臓の働きを、意志とは無関係に調整する神経)も整います。
その結果、更年期症状やめまい、イライラといった症状の緩和にも役立ちます。
●夏バテの予防・改善
夏バテは、暑さによる胃腸の不調、自律神経のバランスのくずれ、水分の摂取不足などから起こります。
シソジュースは、これらを改善する要素をすべて満たしているので、夏バテの予防・回復には最適です。

シソジュースは、シソの煮汁を作り、そこにクエン酸やハチミツなどを加えて味を整えるのが一般的です。
しかし、クエン酸の代わりに梅干しを加えてもいいでしょう。
梅干しにはクエン酸も塩分も含まれているので、夏場の疲労回復や塩分補給になり、熱中症予防にも大いに期待できます。
シソの煮汁をコップに半量ほど入れ、梅干しを1個加えてほぐします。
水やお湯を足して薄め、ハチミツを適量加えると、飲みやすくなります。
このように、不眠を解消したり、弱った胃腸を整えたりするだけでなく、熱中症の予防にも役立つシソジュースは、夏の飲み物として最適です。
ただし、こうした優れた飲み物も、体質によって合う、合わないがあります。
体質に合わない場合は、効果が期待できないこともあるのです。
シソジュースがおいしい、心地よいと感じれば体質に合っていますし、感じなければ合わないと考えていいでしょう。
できれば、クエン酸やハチミツを加える前に、一度、味を試してください。
解説者のプロフィール

丁宗鐡
横浜市立大学医学部大学院修了。医学博士。北里研究所東洋医学総合研究所研究部門長、東京大学大学院医学系研究科助教授などを経て、現職。著書に『「カレーを食べる」と病気はよくなる』(マキノ出版)など多数。
●百済診療所
http://kampochiryou.com/
シソには青ジソと赤ジソがありますが、成分に大きな違いはなく、効能もほとんど変わりません。
違いは、赤ジソにはアントシアニンというポリフェノール、青ジソにはクロロフィル(葉緑素)が多く含まれているといった程度です。
シソの有効成分は、葉の裏にある小さいつぶつぶの中に入っています。
シソの葉を煮出すと、その有効成分がたっぷり溶け出します。
ですから、シソジュースを飲むと、次のようなシソの効能が期待できます。