唾液の分泌を促して口内フローラを整えろ!
皆さんは、ふだん口の中に乾きを感じることはありませんか。
私は、口内環境のことを口内フローラと呼んでいますが、健康を維持するためには、常に口内フローラを良好に保たなければなりません。
そのときに重要なのが唾液の分泌です。
唾液には強い殺菌作用があり、口腔内の細菌の繁殖を抑制し、清潔に保ってくれます。
唾液の分泌が少なくなる就寝時の直前に、歯磨きが勧められているのはそのためでもあります。
しかし、昨今、唾液が正常に分泌されないかたが増えています。
その理由の一つが、過度なストレスです。
現代はストレス社会といわれているとおり、人々は仕事に忙殺され、人間関係に悩まされています。
すると、体の諸機能をつかさどる自律神経の働きが悪化するのです。
自律神経とは、私たちの生命活動を担っている大事な神経のこと。
血管や臓器、筋肉の働きは、この自律神経が調整しています。
つまり、自律神経の乱れは、あらゆる病気の引き金といっても過言ではありません。
そして、自律神経には、交感神経と副交感神経という2種類があります。
交感神経は、活動時や緊張時に働くため、主に昼間に優位になります。
一方の副交感神経は休息時に働くため、主に夜間に優位になります。
1日を通して両者がバランスよく働くことで、私たちの健康状態は維持されていますが、過度なストレスが常態化すると、交感神経ばかりが優位になってしまいます。
すると、体は常に緊張状態になり、口の中は乾きやすく、口内フローラも乱れてしまうのです。
自律神経が乱れると、臓器や血管の働きは悪化し、高血圧や糖尿病などの誘因となります。
さらに、唾液の分泌が少なくなって口内フローラが悪化することで、歯周病を招きます。
歯周病とは、歯周病菌によって歯肉やあごの骨などに炎症が起こる病気です。
歯周病菌は、歯と歯茎の間のすきま(歯周ポケット)にもぐり込んで増殖し、歯肉の腫れや出血を引き起こします。
症状が進行すると、歯周ポケットがだんだん深くなり炎症はあごの骨にまで及び、最後にはあごの骨が溶けて、歯が抜け落ちてしまうのです。
そこで重要なのが、自発的に唾液の分泌を促し、同時に自律神経の乱れを整えることです。
その方法として私が患者さんに勧めているのが、耳の下をもむ「耳の下もみ」です。
気持ちがリラックスしストレスを取り除く!
副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整うことで、血圧や血糖値の降下、耳鳴りやめまいの緩和、うつ病や不眠など精神疾患の改善が期待できるでしょう。
さらに、耳の後ろにある完骨というツボをいっしょに刺激すると、より効果的です。
完骨は、自律神経のバランスを整える特効ツボとされ、両耳の後ろにある出っ張った骨(乳様突起)の下のくぼんだところにあります。
最後に、耳の下もみで、血糖値が下がり、耳鳴りが改善した例をご紹介しましょう。
70歳の女性Oさんです。
Oさんは、過去1〜2ヵ月の血糖状態がわかる指標であるヘモグロビンA1cの値が、6・8%と高めでした(基準値は、4・6〜6・2%)。
食事制限をしても、いっこうに下がらなかったといいます。
そこで、朝晩の2回、耳の下を毎日刺激しました。
すると1年と経たないうちに、ヘモグロビンA1cは6・1%に下がり、みごと基準値内に収まるようになったのです。
加えて、長年の悩みの種だった耳鳴りや肩こりまで解消したといいます。
耳の下もみにやり過ぎということはありません。皆さんもぜひお試しください。
耳の下のちょうど奥歯が位置する辺りには、耳下腺という唾液が分泌される唾液腺があります。
ここを指でもみ刺激することで、質のいい唾液の分泌が促されるのです。
唾液には、サラサラ唾液とネバネバ唾液の2種類があります。
緊張したときに、口の中が乾いてネバネバしていることはありませんか。
これは、質の悪いネバネバ唾液ばかりが分泌されている状態です。
ネバネバ唾液は緊張時に分泌され、口臭や歯周病の原因にもなります。
一方のサラサラ唾液はリラックス時に多く分泌され、口臭や歯周病を抑えてくれるのです。
唾液腺は三つありますが、このうちサラサラ唾液が分泌されるのは耳下腺しかありません。
よって、耳下腺を集中的に刺激することで、サラサラ唾液だけが分泌され、口内フローラの状態は整っていくのです。
耳下腺への刺激は、気持ちをリラックスさせ、ストレスを除去する働きもあります。