【糖尿病を予防する】正しい歯垢ケアは歯ブラシではなく「デンタルフロス」で 食前後は「舌回し」

【糖尿病を予防する】正しい歯垢ケアは歯ブラシではなく「デンタルフロス」で 食前後は「舌回し」

昭和の時代から、歯科医師の間では、「糖尿病の人は歯周病になりやすく、治りにくい」といわれていました。最近になって、「歯周病の治療をすると、糖尿病が改善に向かう」という報告が多く上がり始め、さらに「歯周病の人は糖尿病になりやすい」ということも、わかってきたのです。【解説】森昭(竹屋町森歯科クリニック院長)


森 昭
大阪歯科大学卒業後、勤務医期間を経て、1995年に竹屋町森歯科クリニックを開院。2007年、MDE(メディカル&デンタルエステ)協会を設立し、唾液分泌を促進する予防歯科の普及に努める。『脳卒中で死にたくなければアゴを押しなさい』(マガジンハウス)、『歯はみがいてはいけない』(講談社)など著書多数。

口腔内の状態が改善して 血糖値が下がる例は多い

昭和の時代から、歯科医師の間では、「糖尿病の人は歯周病になりやすく、治りにくい」といわれていました。

最近になって、「歯周病の治療をすると、糖尿病が改善に向かう」という報告が多く上がり始め、さらに、「歯周病の人は糖尿病になりやすい」ということも、わかってきたのです。

歯周病になると、炎症を起こした組織から炎症性サイトカインという物質が産生され、歯茎の毛細血管から血液中に入り込みます。

そして、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きを阻害し、糖尿病を発症・悪化させるのです。

実際、歯周病の患者さんは、健康な人に比べて2倍以上も糖尿病になりやすいといわれます。
口腔内を清潔にする目的は、歯や歯茎の健康を守ることだけではありません。

病気にかかる危険性を減らし、全身の健康を守ることにもつながるのです。
私は歯科医師なので、全身の病気を判断する立場ではありません。

しかし、口腔内の状態が改善することで、血圧や血糖値が基準値まで降下する例を、数多く見てきました。

ここで注意していただきたいのが、口腔ケアの内容です。

皆さんは「歯磨きをしていればOK」と思っていませんか?
「歯をきれいにする」ということは、食べかすを取り除くことではありません。

細菌の塊かたまりである「歯垢」を除去することです。
もちろん、食べかすを取り除けば、歯垢のえさになる糖類を減らすことになります。

ですから、全く無意味ではありませんが、歯垢を取り除く最善の方法とはいえません。
まず、「食後すぐの歯磨きが正しい口腔ケア」という認識を、改めてください。

歯は、糖質を含む物を飲食したあと、やわらかくなります。
やわらかくなった歯の表面を修復するのが、唾液なのです。

食後すぐに歯磨きをすると、歯ブラシで歯が削られ、唾液は歯磨き剤といっしょに口の外に出てしまい、かえって虫歯を作ることになります。

歯垢を取るケアの基本は 歯ブラシではなくフロス

唾液には、抗菌作用(歯周病菌の増殖を抑える)、pH調整作用(飲食後、酸性に傾いた口内を中性に戻して虫歯を防ぐ)、洗浄作用(口臭の原因である歯垢の増殖を抑える)など、さまざまな役割があります。

毎食すぐに歯磨きをすると、唾液のこうした恩恵を受けられません。
歯の健康を守るどころか、虫歯や歯周病、口臭の原因となるのです。

口腔内の健康を保つには、歯磨き剤をつけた歯ブラシで歯をこするのではなく、デンタルフロス(歯間清掃用の糸)や歯間ブラシを使って、歯と歯の間の歯垢や食べかすを取り除くと同時に、唾液の通り道を作ることが重要です。

歯垢は、食後すぐにできるわけではありません。
糖質を含んだ飲食をしたあと、約24時間で作られるといわれます。

そして、歯垢がいちばんできやすいのは、睡眠中です。睡眠中は唾液がほとんど出ないからです。
そう考えると、歯垢除去は、夜寝る前と、朝起きたときに行うのがよいということになります。

歯科で指導を受けている人は、その指示に従ってください。
ここでは、プロの指導を受けていない人に向けて、歯垢を効率よく取り除き、唾液を十分に出して口腔内に行き渡らせる方法を紹介します。

❶起床後、デンタルフロスを歯間に通し、口をすすぐ。

❷歯磨き剤をつけない歯ブラシで、歯を磨き、口をすすぐ。

❸朝食後、デンタルフロスで食べかすを取り、口をすすぐ。舌回し(後述、下図)で唾液を出す。

❹昼食後、夕食後も、デンタルフロスと舌回しを行う。

❺就寝直前に、デンタルフロスと、歯磨き剤をつけない歯ブラシで歯磨きをする。

デンタルフロスが基本で、歯ブラシは補助的な存在です。
外出時に持ち歩くのは歯ブラシではなく、デンタルフロスにしてください。

最後に、舌回しのやり方を説明しましょう。

❶口を閉じて、舌を、上唇と歯茎の間に入れる。

❷口を閉じたまま、歯茎の外側をなぞるように舌を回す。
上中央→上右奥→下右奥→下中央→下左奥→上左奥→上中央と、約3秒かけて1周する。
これを10回くり返す。

❸反対回しも同様に10回行う。

舌回しは、食後に行うことで唾液の分泌を促すのが目的ですが、食前に行うと食べ過ぎの予防にもなります。食事制限をしている糖尿病のかたは、食前と食後に舌回しを行うとよいでしょう。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【梅干しの健康効果】肌ツルツル!96歳の私が元気で仕事ができるのは梅干しのおかげ

【梅干しの健康効果】肌ツルツル!96歳の私が元気で仕事ができるのは梅干しのおかげ

梅干しは、毎年同じように漬けていても、毎年仕上がりが違います。今年おいしくできたから、来年もおいしくできるとは限りません。でも、難しく考えることはありません。私も最初は人に聞きましたが、あとは全部、我流。梅干しは、自分で漬けて、初めていろいろな発見があります。【解説】藤巻あつこ(料理研究家)


【梅干し】美肌・病気知らずの96歳!藤巻あつこ流“梅の漬け方”とアレンジレシピ

【梅干し】美肌・病気知らずの96歳!藤巻あつこ流“梅の漬け方”とアレンジレシピ

おなかが痛いとき、梅肉エキスをなめたり、梅干しをお湯で溶いたものを飲んだりしませんでしたか?梅の持つ整腸作用や血液サラサラ効果は「薬」と言っても過言ではありません。今年こそ梅を使った健康法にチャレンジしてみませんか?【レシピ考案】藤巻あつこ(料理研究家)【料理・スタイリング】古澤靖子


【歯周病菌の除菌方法】3DSとは?歯周病が原因の様々な病気を予防する注目の歯科技術

【歯周病菌の除菌方法】3DSとは?歯周病が原因の様々な病気を予防する注目の歯科技術

ムシ歯や歯周病は、口の中にいる細菌が原因で起こります。ご存じのように、ムシ歯や歯周病は歯を失う最大の原因となります。そこで注目されているのが、ムシ歯や歯周病の原因菌を除菌する「3DS」(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)という技術です。【解説】花田信弘(鶴見大学歯学部探索歯学講座教授)


【食後高血糖の改善】なんとキウイを加えると血糖値スパイクを予防できると判明

【食後高血糖の改善】なんとキウイを加えると血糖値スパイクを予防できると判明

糖質制限ダイエット中は「糖質を食べたい」と思いながらも、無理に我慢することになります。この「我慢」がクセモノです。それが続かなくなったときには、糖質のドカ食いをしがちだからです。そこで私がお勧めするのは、糖質制限に果物、特にキウイを役立てることです。【解説】足立香代子(臨床栄養実践協会理事長・管理栄養士)


【ダイエット効果】おやつもOK!糖質を味方にする痩せる食事の極意 ポイントは“足し算”

【ダイエット効果】おやつもOK!糖質を味方にする痩せる食事の極意 ポイントは“足し算”

「間食はいけない。我慢すべき」というのも「引き算食べ」の発想。それを続けていると、食欲が爆発するときがやってきて逆効果です。ここでは「足し算食べ」を実践するための具体的なヒントをいくつかご紹介しましょう。【解説】足立香代子(臨床栄養実践協会理事長・管理栄養士)


最新の投稿


【足裏マッサージの効果】もんで血流をよくすると体の不調は解消できる! 難しく考えないのがポイント

【足裏マッサージの効果】もんで血流をよくすると体の不調は解消できる! 難しく考えないのがポイント

立ったり、歩いたり、走ったり……人が生きている間、ずっと体重を支えている「足」は「第2の心臓」と呼ばれるほど脳や体、心に関与している部位です。足を正しく、しっかりケアすることが健康寿命を伸ばすうえで何よりもたいせつなことなのです。【解説】行本昌弘(官足法友の会会長)


【足裏のもみ方】認知症や突発性難聴が改善した!コツは足指まで「すきまなく、深く」

【足裏のもみ方】認知症や突発性難聴が改善した!コツは足指まで「すきまなく、深く」

足をもむ官足法は自分でできます。実践すれば必ず健康になります。「足をもめば健康になる。よくなるまでやり抜く」という自信と強い気持ちを持ち、ぜひ足もみを健康づくりにお役立てください。ここでは、脳・目・耳に効く足のもみ方をご紹介しましょう。【解説】行本昌弘(官足法友の会会長)


【男性不妊の原因と治療法】妊活中の男性 禁欲しても精子は増えず タイミングと回数がカギ

【男性不妊の原因と治療法】妊活中の男性 禁欲しても精子は増えず タイミングと回数がカギ

何回も射精をくり返すと精子の数が減る、という心配は無用です。禁欲期間が長すぎると、精子の運動率が低下するうえ、精子のDNA損傷率も高くなることがわかっています。【解説】今井健(GAIA鍼灸整骨院院長・柔道整復師・鍼灸師) 【監修】吉田壮一(よしだレディースクリニック院長)


眼科医推奨「視界スッキリ薬膳」目の不調を改善する食品とは

眼科医推奨「視界スッキリ薬膳」目の不調を改善する食品とは

目にまつわる多くの症状の根本原因は、血液の質と血流の低下です。心臓から送り出された質のいいきれいな血液が全身をスムーズに巡り、毛細血管にきちんと行き届けば、目の症状は改善に向かいます。【解説】小栗章弘(おぐり眼科名古屋院・長浜院理事長)


血流アップで視界スッキリ“目にいい食事” 眼科医推奨薬膳レシピ(1)

血流アップで視界スッキリ“目にいい食事” 眼科医推奨薬膳レシピ(1)

老眼、近視、緑内障や白内障、黄斑変性にドライアイ……眼科の諸症状は、目薬などの局所的なケアで治る、と思っていませんか?それでは、根本的な改善は望めません。【解説】小栗章弘(おぐり眼科名古屋院・長浜院理事長)【料理】MICHIKO(食養生士・料理研究家)