頻尿や尿もれにお勧めは〝やまかけ酢納豆〟
納豆を食べるとき、私はいつも酢を入れています。
これをテレビで話したところ、知らない人が多いのでしょうか、反響が大きく驚きました。
私が納豆に酢を入れるのは、まず、とても食べやすくなるからです。
酢を混ぜると納豆の粘り気が緩くなり、フワッとした泡状になります。
また、しょうゆやタレを使わないことによる、減塩効果も見逃せません。
本来、納豆などの発酵食品は、微生物によって栄養素が分解され、独特のうまみを醸し出しているため、塩気がなくてもおいしく食べられます。
そのままでも十分味わいがありますが、味つけすることに慣れていると、もの足りないでしょう。
そんなとき、同じ発酵食品である酢を混ぜることで、うまみが増し、塩分を足さなくても満足感が得られます。
私の場合、納豆1パックに酢を小さじ1杯ほど入れて混ぜ、さらにカツオ節を加えます。
朝食なら、卵を入れることもあります。
夜に納豆を食べるときは、酢とカツオ節を入れてよく混ぜたあと、薄く切った生のタマネギを加えます。
酢によってタマネギの辛みが抑えられ、うまみが強調されて、とてもおいしくなります。
生のタマネギには、睡眠誘発作用があります。
こうした作用には個人差がありますが、私は効果を実感しているので、神経が高ぶったりイライラしたりする日は、タマネギ入りの酢納豆をいただきます。
そうすると、気持ちが落ち着いて、スーッと入眠でき、朝まで熟睡できるのです。
また、酢納豆に、すりおろしたヤマイモを合わせた「やまかけ酢納豆」もお勧めです。
頻尿や尿もれといった、泌尿器系のトラブル改善にお勧めです。
このように好みや健康効果によって、いろいろな食材をプラスしやすいのも、シンプルな味わいの酢納豆の利点かもしれません。
酢納豆のオススメアレンジ

1日1回食べれば体力と活力が増す!
漢方の世界でも、栄養豊富な発酵食品を重要視しています。
特に、酢は、薬として扱われるほどの薬効を持ちます。
体力が落ち始める中高年の患者さんには、漢方薬を飲む水に、酢を混ぜてもらいます。
酢の効果で食欲が出て、体力と活力が向上します。
また、酢をとると、感染症になりにくくなります。
体力がつき、免疫力が上がるということもありますが、別の側面からも説明できます。
人間の体は、弱酸性に保たれるのが理想です。
アルカリ性に傾くと、病原菌などへの抵抗力が下がり、炎症が起こりやすくなります。
そんなときに酢をとると、体が酸性に傾くので、炎症が治まるのです。
例えば、膀胱炎をくり返す人や、ニキビが出やすい人は、酢をこまめにとることで症状が改善したり、再発を予防できたりします。
醸造酢に含まれるクエン酸は、疲労回復に効果絶大です。
夏バテしたときや、重労働のあとに、酢をとってみてください。効果を実感できるでしょう。
ペットのイヌが、夏場にエサを受けつけず、体毛が抜けるほど弱ってしまったことがあります。
酢を垂らした水を与えたところ、徐々に食欲が戻り、毛も生えそろいました。
ダイズも、漢方では、むくみ取りや解毒、消炎などに用いることがあります。
ただ、納豆菌で発酵させた納豆は、漢方では用いません。
近い物は、黒ダイズを麹菌と塩で発酵させた大徳寺納豆(香豉)でしょうか。
塩分の多い物は調味料として使われ、塩分の少ない物はカゼ薬や外用薬に配合されます。
漢方では、「必要な栄養素が不足することで病気になる」という考え方があるため、栄養豊富なダイズは古来、推奨されてきました。
現代栄養学においても、ダイズに含まれるイソフラボンが、骨粗鬆症や更年期障害を予防・改善する効果などが解明されています。
このように、酢も納豆も非常に優秀な食品ですが、その栄養素は、体に蓄積できません。
朝でも夜でもいいので、1日1回、酢納豆を食べることをお勧めします。
体力と活力が増して免疫力がアップし、病気になりにくい体をつくることができます。
特に夏の疲れが出やすい時期には、ぜひお試しください。
解説者のプロフィール

丁 宗鐵
1947年、東京生まれ。横浜市立大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科修了。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。北里大学・東洋医学総合研究所研究部門長、東京大学大学院客員教授、東京女子医科大学特任教授を経て現職。百済診療所院長。
●百済診療所
http://kampochiryou.com/