アルツハイマーなど心や脳の病気が改善
私は、長年、おなかを診ることで、うつや不眠、アルツハイマーなど、さまざまな病気を治してきました。
心や体に不調のある人は、おなかをさわると、例外なく冷えています。
この冷えを取り、おなかの調子を整えると、体調だけでなく心の病気も改善していきます。
おなか(腸)こそ、心身の健康の根源だからです。私がそれに気づいたのは、趣味の盆栽がきっかけでした。
植物を育てている人ならわかるでしょうが、花や葉が枯れたとき、真っ先に疑うのは根腐れです。
根っこは、土から栄養や水を吸収するところ。そこが腐れば、花も葉も枯れてしまいます。
人間も同じです。栄養や水分を吸収する腸は、植物でいえば根っこです。その腸の働きが悪くなると、全身に病気が出てきます。
病気を治すには、症状が出ているところではなく、大本の腸を治療しなければならないのです。
進化の過程をたどると、腸の重要さがよくわかります。動物の体の中で最初にできた臓器は腸です。
最も原始的な生物は、口と腸と触覚しかありませんでした。
「おなかがすいた」と感じるのも、「栄養をとれ」と命じるのも、腸だったのです。
その指令を出しているのは、腸の粘膜に散在している基底顆粒細胞です。
この細胞が、食物などから入ってきた情報を周囲の細胞に伝えます。
そして、その情報をもとに、ホルモンを分泌します。
このホルモンは、脳にも重大な影響を与えます。
アルツハイマーはこのホルモンの分泌が機能しなくなった状態、すなわち、腸の基底顆粒細胞の劣化によって起こると考えられます。
実際、腸を温めたり、腸の機能を回復させたりすると、うつや不眠、アルツハイマーといった心や脳の病気も改善するのです。
うつの患者の8割は社会復帰している!
腸の働きは、腸内細菌によって守られています。
ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌は、腸内で乳酸や酢酸などの有機酸を作り、腸内を酸性にします。
そうして、病原菌の増殖をおさえたり、有害物質を分解したりします。こうした腸の働きは、ぬか床によく似ています。
ぬか床には乳酸菌や酵母菌が繁殖しており、これらの菌が野菜を発酵させて、おいしいぬか漬けを作ります。
しかし、手入れを怠ると菌のバランスがくずれ、ぬか床にカビを発生させます。
腸も同じで、管理が悪いと腸内細菌のバランスがくずれます。大腸菌などの悪玉菌がふえて有害物質が発生したり、大事な基底顆粒細胞に異変が生じたりします。
そこで腸も、ぬか床のように上手に扱って、いつもよい状態に保つ必要があります。
ぬか床は温度が低すぎると、乳酸菌や酵母菌が働きません。
腸も同じで、冷やすと善玉菌の活性が低下してしまいます。
ですから腸も、適度に温めることが、善玉菌を活性化させ、腸内環境の改善につながるのです。
そのためには、体を冷やす食品ばかりをとらないことです。
それは単に、冷たいものを飲食しないだけではありません。
東洋医学では、食品を、体を温めるもの、冷やすもの、どちらでもないものに分けています(一覧参照)。
体を温める食品、冷やす食品

もし、体を冷やす食品をとったら、温める食品で補ってください。
そこで、腸を温めるために、ふだんの料理に活用してほしいのが、熟成度の高い発酵食品の調味料です。
それは、酢やみそです。
特に、熟成度の高いバルサミコ酢をお勧めします。バルサミコ酢の原料は、濃縮ブドウ果汁です。
ブドウは、果物のなかでは数少ない、体を温める食品です。
バルサミコ酢は、それを長期間、樽で熟成して造ります。
アミノ酸やクエン酸、ポリフェノールなどが豊富で、有用な微生物も多数含まれます。
バルサミコ酢をとると、腸が温まって善玉菌が活性化するのに加え、クエン酸が悪玉菌の増加を抑制してくれるので、腸内環境がよくなります。
それによって、腸の動きが活発になり、便通を促進してくれます。
また、バルサミコ酢には、血糖値を下げる作用があることも報告されています。
私はバルサミコ酢を、しょうゆの代わりに刺身や豆腐にかけたり、サラダのドレッシングとして使ったりしています。
1日に小さじ1杯くらいは、とっているでしょう。また、みそにも腸を温める作用がありますから、みそ汁もほぼ毎日飲んでいます。
こうして腸を冷やさないようにすると、腸の機能がよくなり、基底顆粒細胞も元気になります。
それが心の状態を安定させて、うつや不眠などの改善に役立つのです。
こうした食事指導に加えて、私は漢方薬を使った治療を行いますが、うつの患者さんなら8割が、社会復帰できるほどよくなっています。
心の病気だけでなく、アトピー性皮膚炎や難治性の病気も、基本は腸を温め、健康にすることで快方に向かいます。