MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【高齢者の転倒】足首の筋力低下が原因!寝たきりを防ぐ「つま先&かかと歩き」のやり方

【高齢者の転倒】足首の筋力低下が原因!寝たきりを防ぐ「つま先&かかと歩き」のやり方

高齢者が寝たきり(要介護状態)に陥る原因は、大きく2種類に分けられます。脳梗塞などの血管系の問題と、骨折などの整形外科系の問題です。つま先&かかと歩きを行って、無理なくじんわりと足の筋肉を鍛え、年を取っても動ける体づくりを目指しましょう。【解説】久保明(銀座医院院長補佐・抗加齢センター長)

足首を動かす三つの筋肉を鍛えることが重要

近年、健康長寿を語るうえで、「フレイル」という言葉が注目されています。
日本語に訳すと「虚弱」を意味します。

医学的にフレイルとは、加齢に伴って筋力や心身の活力が低下した状態を指します。
そして、高齢者の病気の専門医が集まる日本老年医学会は、2年前に、「高齢者の多くは、フレイルの状態を経て要介護状態になるので、早期発見をして対処することが必要」と、医療・介護関係者に呼びかけました。

高齢者が寝たきり(要介護状態)に陥る原因は、大きく2種類に分けられます。
脳梗塞などの血管系の問題と、骨折などの整形外科系の問題です。

フレイルにかかわるのは、後者の整形外科系の問題です。
骨折だけでなく、骨粗鬆症や変形性関節症、加齢による筋力低下など、いわゆるロコモティブシンドローム(運動器の障害により、要介護になるリスクの高い状態)全般が関係します。

簡単にいえば、「加齢に伴って筋力が低下する」→「自分の思うような動作が困難になる」→「最終的に寝たきりになってしまう」という危険性が生じるのです。
そして、寝たきりになる前段階に起こるトラブルとして多いのが、転倒です。

転倒の原因はさまざまですが、特に下半身や筋肉に注目すると、大きく三つの原因が挙げられます。

❶股関節の動きが悪い。
❷ひざの関節が十分に曲がっていない。
❸足首がかたく、思っているほど足が上がっていない。

ここで注目したいのが、原因❸です。
これを防ぐためには、足首からつま先をスムーズに上下させる、「足首を動かす筋肉」を鍛えることが重要です。

足首を動かす筋肉は、主に三つあります。
ふくらはぎの腓腹筋とひらめ筋、そして、いわゆる弁慶の泣き所(すねの前面)にある前脛骨筋です。
腓腹筋とひらめ筋はかかとを上げる動作(つま先立ち)と、前脛骨筋はつま先を上げる動作(かかと立ち)と連動します。

そして、この三つの筋肉を同時に、簡単で効果的に鍛えられるのが、「つま先&かかと歩き」です。
これにより、三つの筋肉を同時に鍛えることができます。

かかと歩きは20m歩ければ十分 !

まずは、「つま先&かかと立ち」から試してください。
ノルマの回数は特にありませんが、往復で10回も行えば十分です。

足首を動かす三つの筋肉は、普通に生活している限り、大きく刺激されることはありません。
意識的にケアをしないと、どんどん衰えていきます。

そのため、急につま先&かかと歩きを実行すると、こむら返りを起こす場合があります。
ですから最初は、つま先&かかと立ちを少しずつ実行して、自分の三つの筋肉の状態を確かめましょう。

なお、つま先&かかと立ちを行うときは、壁や机、イスなどにつかまりながら、足元が安定した場所で行いましょう。
基本的にどこでも実行できますが、通勤電車やバスで行うのは危険です。

慣れたところで、次は、つま先&かかと歩きです。
こちらはとにかく、無理のない程度に行ってください。

最初は、室内で数歩歩くだけでもかまいません。
慣れてきたら、少しずつ距離を伸ばしていき、最終的に20mも歩ければ十分です。

靴をはいたまま行っても問題ないので、散歩のときに実行するのがお勧めです。
これらのトレーニングを行ったとき、どうしても上手にできない、すぐにペタンと足先やかかとを下ろしてしまう、という人がいるかもしれません。

その場合、腰に異常がある可能性があります。
足首を動かす三つの筋肉は、腰の神経が支配しているので、腰に異常があると、スムーズに動かすことができないのです。

心配でしたら一度、整形外科で見てもらうことをお勧めします。
今回ご紹介したトレーニングは、足首を丈夫にして、転倒予防、ひいては寝たきりを防ぐために、多くの人にお勧めです。

つま先&かかと歩きを行って、無理なくじんわりと足の筋肉を鍛え、年を取っても動ける体づくりを目指しましょう。

つま先&かかと立ちのやり方

解説者のプロフィール

久保明
銀座医院院長補佐・抗加齢センター長。常葉大学健康科学部教授。東海大学医学部医学科客員教授。アンチエイジング医療の第一人者。人の老化度を科学的に測るエイジングドックを開発。銀座医院では「プレミアムドック」を立ち上げ、その結果に基づく運動・栄養・点滴療法などを実践している。
●銀座医院
https://www.ginzahospital.com

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
納豆はコレステロールや脂質の含有量が少なく、糖尿病や脂質異常症を引き起こす可能性が低い優れた食材です。ナットウキナーゼには、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし血栓を作りにくくする効果があり、動脈硬化を予防します。アマニ油と摂ると血管若返りに効果が期待できます【解説】広川慶裕(認知症予防医・ひろかわクリニック院長)
認知症が進行すると、自分がいる場所がどこで、話している相手は誰かなど、自分の置かれている状況の見当がつきにくくなってきます。これを「見当識障害」といいます。現実見当識訓練は、脳に残っている機能に働きかけて現実見当識を高め、認知症の進行を遅らせることを目指します。【解説】石井映幸(ふれあい鶴見ホスピタル副院長)
近年、記憶と関連の深い脳の海馬などでは、新しい細胞が毎日生まれていると判明しています。ですから、脳の萎縮が進んでも、それをカバーする脳内の環境作りは十分可能だといえます。今からでも遅くはありません。耳もみを早速実践して、脳の血流を活発にしてください。【解説】広川慶裕(ひろかわクリニック院長)
片足立ちは、有酸素運動とバランス運動を兼ねています。片足立ちを1分続けることは、50分歩くのとほぼ同じ運動量になります。有酸素運動が認知症予防に有効であることは、多くの研究データが示すところです。また、転倒予防という点からも優れています。【解説】長谷川嘉哉(土岐内科クリニック院長・医療法人ブレイングループ理事長)
食後2時間血糖値の高い人ほど、アルツハイマー病の発症リスクが高く、中年期に糖尿病になって、病歴の長い人のほうが、海馬の萎縮が強いことも判明しました。したがって、食事の最初に野菜をたっぷり食べ、食後の血糖値が上がらないようにすることも大事です。【解説】二宮利治(九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生分野教授)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル