解説者のプロフィール
象の足のように太いひどいむくみによく効く
中高年の女性のなかには、足がむくんで、象の足のように太くなっている人がいます。
これは、東洋医学でいう「瘀血」で、古い血液が滞った状態です。
加齢により腎機能が衰えると、水分代謝が低下します。
血液の流れも悪くなり、瘀血になりやすくなります。その結果、足全体がむくんで、疲れやすくなるのです。
そういう人に、ぜひお勧めしたいのが、かかとのツボ刺激です。
かかとの周囲には、水分代謝をよくするツボがいくつかあります。
その一つが、「水泉」です。水泉は、かかとの内側にあるツボです。
内くるぶしのすぐ後ろに、アキレス腱のくぼみがあります。
そのくぼみから指幅1本分くらい下の、かかととくるぶしの真ん中あたりに水泉があります。
むくみのある人は、そのツボを押すと穴が開いているようにへこむので、すぐにわかります。
水泉は、水分代謝をつかさどる腎経という経絡(生命エネルギーの一種である気の通り道)のツボです。
腎経のなかでも、郄穴と呼ばれる作用の強いツボに属し、急性期の症状によく用います。
ですから、足のひどいむくみにもよく効くのです。
そのほか、膀胱炎、頻尿、冷え症などの治療にも、このツボはよく用いられます。
水分代謝をよくするもう一つのツボは、足の裏のかかとのふくらみの真ん中にある「失眠」です。
不眠に効くツボとして有名ですが、このツボには利尿作用もあり、尿の出を促してむくみを解消してくれます。
尿の出がよくなることで、夜間頻尿も改善してきます。
夜中に目を覚ますことが減り、そういう意味でも、いい睡眠が取れるようになります。
私はふだんの治療によくお灸を使いますが、これらのツボにお灸をすると、皆さん、尿の出がよくなったと驚かれます。
尿の出が悪くて体内の余分な水分を排出できなければ、水毒(老廃物)がどんどんたまり、体がむくむだけでなく、膀胱炎を起こしやすくなります。
しかし、尿をしっかり出して、水分の流れがよくなれば、むくみや膀胱炎を予防でき、低下した腎臓や膀胱の機能も回復してきます。
かかとを中心に石踏みをすると疲れにくくなる!
水泉や失眠のツボは、お灸を使う代わりに、手の指で刺激しても、効果が期待できます。
水泉は、親指の腹で、10〜15秒、ギューッと強く押してください。
それを5〜6回くり返します。
左右の足に行い、むくみのひどい側は、少し多くします。
1日2〜3度行いましょう。一方、失眠は足の裏のかかとにあるツボです。
かかとは皮膚が厚く、鈍感なところです。
したがって、強い刺激でないと効果がありません。
そこで私は、小石(玉砂利)を踏む「石踏み」をお勧めしています。
丸い小石を浅めのダンボールに敷きつめ、その上で足踏みをします。
小石は、ホームセンターや園芸店などで購入できます。
こうして石踏みをすると、失眠が刺激されて尿の出がよくなり、血流もよくなります。
足の裏に痛みを感じることがありますが、多少は我慢して続けてください。
続けるうちに、だんだん痛みは軽くなるはずです。
1日に5〜10分、かかとを意識して、ゆっくりしっかりと石踏みするといいでしょう。
かかとがガサガサしている人は、かかとの血流が悪くなっています。
かかとを中心に石踏みをすると血流がよくなって、かかとがキレイになり、足も疲れにくくなります。
水泉のツボ、失眠のツボの刺激方法

関村順一
ekimura鍼灸院院長・東京医療専門学校講師
●ekimura鍼灸院
https://sekimura-sinkyu.com