油に溶けやすい薬効をいただく健康常備食
タマネギは優れた薬効を持つ食材ですので、積極的にとりたいところですが、毎日、皮をむいて切るところから始めるのは、手間がかかります。
タマネギをある程度、下ごしらえした状態で、常備しておくと便利でしょう。
近年話題の、タマネギを酢漬けにした「酢タマネギ」も、そうした方法の一つです。
そこで今回は、同様に簡便なうえ健康効果のある常備食として、「タマネギのオイル漬け」をご紹介しましょう。
タマネギのオイル漬けは、その名のとおり、みじん切りにしたタマネギを、オリーブオイルに漬け込んだ物です(作り方は下の図解参照)。
タマネギをオリーブオイルに漬けておくメリットは、五つあります。
❶タマネギの有効成分を増やした状態で摂取できる
❷有効成分が体内で吸収されやすくなる
❸オリーブオイルの健康効果もプラスされる
❹保存性が高まる
❺すぐに料理に使えて便利
作り方を順に追いつつ、これらのメリットについて説明しましょう。
タマネギの主成分は、含硫アミノ酸といって、イオウを含んだアミノ酸です。
タマネギを切るとその細胞膜が破壊され、酵素反応が始まります。
まず、辛み成分および催涙成分がほぼ同時に発生し、その後、におい成分などの脂溶性成分へと性質が変化します。
オイル漬けを作る際は、タマネギをみじん切りにするといいでしょう。
繊維を断ち切り酸素に触れる面を多くすると、酵素反応が起こりやすくなります。
細かく刻まなくても、粗みじん程度で十分です。
みじん切りにしたら、におい成分を増やすため、30分~1時間ほど放置し、空気にさらします。
一度こうしておけば、調理のたびに時間をおいて待つこともありません。
その後、清潔な瓶にタマネギを入れ、上からオリーブオイルを、ひたひたになるまで注いでください。
前項で述べたように、タマネギのにおい成分には、多くの健康効果があります。
この成分は脂溶性、つまり油に溶けやすい性質です。
油といっしょにとると、体内で吸収されやすくなるのです。
タマネギをあらかじめオリーブオイルに漬けておけば、わざわざ意識しなくても、油といっしょにとることができます。
タマネギのオイル漬けの作り方

オリーブオイルと合わせれば相乗効果!
こうしてタマネギを漬け込んだオリーブオイルには、におい成分が溶け出しています。
このオイルもぜひ、料理に活用してください。
オリーブオイルの主成分は、オレイン酸です。
これは、分子構造の違いから、不飽和脂肪酸のうちのオメガ9系に分類されます。
オレイン酸には、タマネギ同様に、悪玉コレステロールを減らし動脈硬化を予防・改善する働きがあります。
加えて、高い抗酸化力がある点、老化防止や美肌、整腸に効果がある点などもタマネギと共通しています。
オリーブオイルとタマネギをいっしょにとることで、相乗効果が期待できるのです。
また、抗酸化力があるというのは、酸化しにくいということ。
最近ブームの、オメガ3系のエゴマ油やアマニ油は、酸化しやすく、扱いが難しいものです。
その点、オリーブオイルは、加熱調理にも向いています。
タマネギのにおい成分は、加熱すると10倍以上に増えるので、せっかくオイル漬けにするなら、加熱調理に向く油を選ぶのがベターです。
ちなみに、有効成分として名高いケルセチンも熱に強いので、加熱しても健康効果が損なわれることはありません。
酸化しにくいオリーブオイルに漬け込むことで、タマネギの保存性が高まるのも魅力です。
下ごしらえが済んだ状態のタマネギを、欲しいときにすぐ調理に加えることができるので、利便性にも優れています。
上記の作り方は、最も簡単な方法です。
ひと手間加え、作る段階でタマネギを電子レンジにかけて短時間加熱しておくと、料理にそのまま使う場合でも、より高い薬効が得られます。
前項を参照し、お望みの健康効果に合わせ、加熱する状態とタイミングを選びましょう。
おいしくて健康に役立ち、さまざまな料理に重宝するタマネギのオイル漬けを、ぜひお試しください。
解説者のプロフィール

西村弘行
北翔大学・北翔大学短期大学部学長。東海大学名誉教授。名古屋大学大学院農学研究科修士課程修了後、北海道大学にて農学博士号を取得。北海道大学助教授、北海道東海大学教授・学長を歴任し、現在に至る。タマネギのことなら何でもご存じの、タマネギ博士として有名。