血流がよくなり動脈硬化や脂質異常症も改善する
私は東洋医学の専門家としての観点から、タマネギの薬効についてお話しします。
中国語では、タマネギを「洋葱」といいます。
漢字からもわかるように、もとは西洋原産のネギですが、さまざまな健康効果があることは、中国でも古くから知られてきました。
タマネギは、漢方では主に、
❶去湿化痰作用
❷清熱解毒作用
❸平肝作用の三つの作用があります。
❶は、体内の水分の流れをよくして、タンを取り去る作用。
❷は、熱を冷ます解熱作用。
そして注目すべきは、❸の肝を穏やかに整える作用です。
東洋医学における「肝」の意味するところは、肝臓を中心として関係する範囲全体です。
血を貯蔵して流れを調整し、生命の維持活動に重要な役割を果たします。
情緒や目の働きとも深い関連があります。
肝がいい状態にあると、一種の生命エネルギーである「気」が、体中をスムーズに巡るので健康が保たれます。
逆に、気の巡りが悪いと、全身にさまざまな影響が及びます。
例えば、体の上の部分に気が集まると、頭に熱がこもり、足もとは冷えてしまいます。
健康にいいといわれる「頭寒足熱」ならぬ、「頭熱足寒」。
これは、西洋医学でいう高血圧の状態です。
めまいやほてり、耳鳴りといった自覚症状が現れます。
タマネギをとると、平肝作用により、気がスムーズに流れます。
頭に上った気が下がるので、血液の流れもよくなり、高血圧や糖尿病、動脈硬化、脂質異常症といった、血液に関連した生活習慣病が改善に導かれます。
それに伴い、めまい、ほてり、頭痛やイライラ、便秘、耳鳴りなどもよくなります。
近視や老眼、白内障といった目の症状の改善にも役立つでしょう。
捨てるにはもったいない強力な抗酸化力!
漢方では、中身の部分に薬効のある食べ物は、その皮の部分にも強い効能があるといわれています。
タマネギの場合、あの茶色い皮です。
タマネギの白い部分を積極的に食べるだけでも、これまで述べてきたような優れた健康効果を得ることができます。
そして、皮の成分を取り込むことで、さらなる効果を実感できます。
また、食べ物の表面である皮の成分を摂取することは、人体の表面に現れた症状を消し去ることに通ずるとも考えられています。
ですから、タマネギの皮は、肌荒れなど皮膚の症状の改善にも、大いに役立つのです。
漢方の古い医学書に、タマネギの皮だけの薬効を解説した文献や臨床例は見当たりません。
それでも、タマネギの持つ三つの作用が、白い部分と同等以上にあることは経験的にわかっており、よく知られています。
科学的に見ると、タマネギの皮には、ポリフェノール(色素成分)の一種であるケルセチンが非常に豊富に含まれています。
ケルセチンは強力な抗酸化力を持ち、高血圧や糖尿病、動脈硬化の予防・改善、アレルギー反応の抑制などに効果があることが、さまざまな研究により判明しています。
このタマネギのケルセチンを手軽に、効率的に摂取するためにお勧めなのが、皮を煎じて、お茶として飲む方法です(作り方は下の図解参照)。
1日にコップ2杯ほど飲用することで、先に挙げた諸症状が改善されると期待できます。
2番煎じまでは、有効でしょう。
タマネギの皮には、ただ捨てるにはもったいないほどの薬効が隠されています。
ぜひお試しになり、健康の向上に役立ててください。
タマネギの皮茶の作り方
