10 人全員の血糖値が 下がった「糖尿穴」
私の治療院には、腰痛、ひざ痛、股関節痛など、痛みの症状に悩む患者さんが、連日訪れます。
患者さんの話をよく聞き、状態を把握したうえで、鍼や灸、整体、マッサージ、指圧などのなかから、最も適した方法を選び治療に当たっています。
関節痛だけでなく、ほかの悩みを抱えている患者さんも少なくありません。
なかでも多いのが、「糖尿病を改善したい」という患者さんです。
糖尿病の場合、血液検査で血糖値の高さを指摘され、食事療法や服薬で治療に当たっているケースがほとんどです。
それなのに、「数値が改善しない。どうしたらいいか」という相談を、よく受けます。
そんな患者さんに勧めているのが、左足にあるツボを刺激する「太ももの1点押し」です。
このツボは、私の師匠である宮本紘吉先生から「膵臓のツボ」として教えてもらいました。
そのため、私は膵臓の働きが衰えている患者さんに、このツボ押しをよく行ってきました。
あるとき、「膵臓は血糖値を下げるインスリンを出す臓器だから、糖尿病も改善するのでは」と思いついたのです。
そこで、3年ほど前に、糖尿病の患者さん10人に協力してもらい、左太もものツボを押す前後で、血糖値の変化を調べました。
すると、10人全員の血糖値が下がったのです。
後日、このツボが「糖尿穴」と呼ばれていることを知りました。
それ以来、私は糖尿病に悩んでいる人に、左太ももの中心を押すように勧めています。
体の左側に現れる四十肩ひざ痛、腰痛にも著効

では、やり方をご紹介しましょう。
❶ひざが直角になる高さのイスに腰かけます。
❷ツボの位置は、左足のつけ根からひざまでの中間点で、太ももの幅の左右中央です。
この周辺を目安にして、指で前後左右に皮膚をなぞり、グッと押してみて痛いところを探します。
その痛い場所が糖尿穴です。
❸両手の親指を重ねてツボの上に置き、グッと体重をかけて5秒ほど押し続けます。
これを3回ほどくり返します。
このツボは、ひざを直角にしたときに現れるので、①の姿勢を保って押しましょう。
糖尿病やその傾向のある人が押すと、強い痛みを感じますが、そうでない人はさほど痛くないはずです。
テレビを見ているときや、公園のベンチなど、ひざが直角になるイスに腰かけているときなら、いつ行ってもかまいません。
1日に何回行ってもけっこうです。
「なぜ左足なのか」という理由は、はっきりわかりません。
ただ、インスリンの分泌腺を持つ膵臓が、体の左寄りにあることが関係していると思われます。
私の治療経験から見ても、糖尿病は、膵臓がある体の左側のトラブルと連動することがわかっています。
例えば、糖尿病の人は多くの場合、左の股関節がかたく、開きにくいのです。
左太ももの糖尿穴を押すと、血糖値が下がるとともに、左股関節の動きがよくなるケースが多く見られます。
また、糖尿病の人は、左手が上がりにくいという特徴もあります。
糖尿穴を押すと、左手もスムーズに上がるようになります。
糖尿病のうち、このツボ押しが効くのは、膵臓からのインスリンの分泌が悪い人と、左の股関節がかたくなっている人です。
糖尿病には、肝臓の機能低下が関係している場合があります。
肝臓が原因の場合、このツボを押しても効果はありません。
糖尿穴を押しても血糖値が下がらなければ、肝臓の機能低下を疑ってください。
糖尿穴は、体の左側に出た痛みやしびれにもよく効きます。
私の経験では、四十肩、ひざ痛、腰痛、座骨神経痛などの改善に、著効を発揮します。
糖尿病だけでなく、体の左側に痛みやしびれ、動きにくさなどが現れたら、すぐにこのツボを押してみてください。
症状の改善が期待できるでしょう。
自分の手の指を使うツボ押しは、誰でも簡単にできて、安全な方法です。
病院での糖尿病治療と併行して、日々の生活に取り入れてください。
解説者のプロフィール

佐々木繁光
1957年、千葉県生まれ。日本大学薬学部卒業後、薬剤師として病院に勤務。鍼灸師とあんまマッサージ指圧師の資格を取得し、治療家の道へ進む。治療院での施術のほか、整体教室を開催するなど、セルフケアにも力を入れている。共著に『一瞬整体で痛みが消える! 病気が治る!』
(マキノ出版)などがある。