透析時間が少ないと合併症を招きやすい!
腎臓病が進行して腎機能が著しく低下すると、通常、機械を使って血液をろ過する「透析療法」を始めることになります。
透析を始める時期は、クレアチニン値が8mg/dL以上が一つの目安で、そのほかに患者さんの症状(浮腫、心不全、肺水腫、貧血など)や、日常生活での障害度などを、総合的に見て判断します。
透析療法には、ダイアライザー(透析膜)という装置を利用する「血液透析」と、自分の腹膜を利用する「腹膜透析」があります。
現在、透析を受けている患者さんの95%以上は血液透析です。
●血液透析
血液を体の外に出して、ダイアライザーの中を通す間に、尿毒素や余分な水分、老廃物を取り除き、きれいになった血液を再び体内に戻す治療法です。
血液透析を始める約2週間前には、「シャント」を作っておく必要があります。
シャントは、前腕の動脈と静脈を手術でつないだ血管です。
静脈内を動脈の血液が流れることで、静脈の血流が顕著に増加します。
その影響で太くなった前腕の静脈の2ヵ所に針を刺します。
その一つの針から血液をポンプで外に出し、ダイアライザーを通してろ過し、もう一つの針からきれいになった血液を体内に戻すということをくり返します。
ダイアライザーには、直径0.2mm程度の細い管が1万本以上、束になって入っています。
その管の内側を血液が流れ、外側を透析液が流れます。
透析液は、電解質(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)やアルカリ剤が溶け込んだ液体です。
細い管は無数の小さな穴が開いた半透膜でできており、この膜を介して、血液と透析液の間で必要なものと不要なものの交換が行われます。
血液透析は、継続して行う必要があります。
現在、1回4時間の透析を週3回行うのが一般的です。
これ以下の時間や回数では、さまざまな合併症を招きやすくなり、死亡率が高まることもわかっています。
血液透析のしくみ

腹膜透析は腹膜炎や感染症に注意が必要
こうして透析を行うことで、腎臓のかわりに、水分量の調整や、血液中の老廃物(クレアチニン、尿素窒素などの尿毒素物質)の除去ができます。
また、酸性に傾いた血液を弱アルカリ性に戻してくれます。
しかし、塩分、カリウム、リンなどは十分除去できないことがあります。
その場合、カリウムやリンを下げる薬を処方します。
また、70〜80%の患者は、高血圧を合併するため、降圧剤も必要です。
そのほか、透析では改善できないこともあります。
腎臓から造血ホルモンが十分に分泌されないため、それを補う注射(赤血球造血刺激因子製剤)が必要です。
ビタミンDを活性化する腎臓の機能がないため、活性化ビタミンD製剤を服用(注射)しなくてはなりません。
このように血液透析で、腎臓のすべてをカバーできるわけではありません。
予防的治療や検査などが必要です。
●腹膜透析
自分のおなかの腹膜を透析膜として使う治療です。
血液透析のような大きな設備を必要とせず、自宅でできます。
腹膜透析は始める1ヵ月前に、透析液をおなかに入れるための管(カテーテル)を手術で埋め込んでおきます。
カテーテルを通して、おなかの中に透析液を一定時間注入しておくと、腹膜を介して血液中の余分な水分や老廃物がおなかの中の透析液に移ってきます。
その老廃物などを含んだ透析液を体の外に出して、血液をきれいにします。
1日3〜4回、1回に30分程度かけて透析液のバッグを交換します。
また、寝ている間に機械を使って透析を行う方法もあります。
血液透析と違って、持続して行えるので、体調面ではいい状態を保てます。
それに、透析施設には、検査や診察のために、月に1〜2回行けば済みます。
しかし、清潔な状態で行わないと、腹膜炎や感染症などを招く危険性があります。
また、5年以上経つと、腹膜炎になって腹膜が癒着し、腹膜の機能が衰えてかたくなる腹膜硬化症を起こすことがあります。
そのため、7〜8年で腹膜透析から血液透析へ移行するケースもあります。
最近では、透析施設と同じ装置を使って、血液透析を自宅で行う「在宅血液透析」という方法もあります。
この方法は、通院が不便な海外では普及しているところもあります。
しかし、機械の操作や血管に針を刺すことも自分の責任でやらなくてはなりません。
最後に腎移植についてもふれておきます。
腎移植には元気な人の腎臓をもらう「生体腎移植」と、亡くなった人から腎臓を提供してもらう「献腎移植」があります。
腎移植では、移植された腎臓の拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を一生飲む必要があります。
しかし、腎移植がうまくいけば、健常な人と同じように生活できますし、食事の制限もありません。
解説者のプロフィール

金田浩
かもめクリニック理事長
●かもめクリニック
http://www.kamome-clinic.com/