どんな薬も腎障害を引き起こす危険性がある
慢性腎臓病(CKD)の患者さんは、何種類もの薬を服用しているケースが多いと思います。
たくさんの薬を飲むことに、不安や抵抗を感じている人もいるのではないでしょうか。
しかし、医師から処方された薬は、自己判断で勝手にやめてはいけません。
なぜなら、腎機能が低下している人、特に末期腎不全の人は、薬で補わなければ本来の体の機能が果たせなくなっているからです。
6〜7種類もの薬が出されていたとしても、末期腎不全の人にとっては、それが生きていくために必要不可欠なものなのです。
とはいえ、薬は代謝の過程で必ず腎臓を通るため、どんな薬でも腎臓にダメージを与え、腎障害を引き起こす危険性があることも事実です。
では、特に腎障害を招きやすい注意すべき薬をいくつか紹介しましょう。
薬剤性腎障害の原因として多いのは、上位から順に、①鎮痛薬として一般的に使われているNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、②抗ガン剤、③抗菌薬(抗生物質)、④造影剤(画像診断検査時に使う薬)という統計が出ています。
①NSAIDs
最も多いNSAIDsは、ステロイドでない解熱鎮痛薬の総称。
アスピリンやイブプロフェンなど、市販されている鎮痛薬もすべて含みます。
血管拡張作用を抑制する働きがあるため、腎臓への血流が低下し、虚血性の腎障害を招くのです。
慢性腎臓病の患者さんは、市販の鎮痛薬でも使用しないことです。
②抗ガン剤
抗ガン剤のなかにも腎毒性の強いもの(シスプラチンやメトトレキサートなど)があり、糸球体腎炎や尿細管障害などを起こします。
また、ガン患者は抗ガン剤に加えて、免疫抑制剤や抗生物質などの腎障害の副作用を持つ薬の投与も少なくありません。
腎機能の低下している人は、これらの薬の用量に注意が必要です。
③抗菌薬
我が国は、抗菌薬の使い過ぎといわれています。
そのため、抗菌薬による腎障害も少なくないのです。腸内環境も悪くなります。
慢性腎臓病患者は、安易に抗菌薬治療を受けてはいけません。
④造影剤
画像診断の検査で使う造影剤によって、腎臓への血流障害、尿細管障害を起こし、腎機能に悪影響を及ぼします。
慢性腎臓病の患者さんに使うと、急激に腎機能が低下して急性腎不全になり、透析が必要になるケースもあるので要注意です。
このほか、抗リウマチ薬、抗甲状腺薬、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー、漢方薬などによる、腎障害の報告もされています。
なお、アメリカの統計でも、薬剤性腎障害を起こす原因薬として、いちばん多いのは非ステロイド性抗炎症薬です。
しかし、2〜4番は、プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカー、抗てんかん薬です。
日本はこれらの薬の害に対する認識が低いため、前述した統計結果には入っていないのでしょう。
慢性腎臓病で注意が必要な薬

市販薬、サプリメントもむやみに飲まない!
こうした薬剤性腎障害のリスクを少しでも減らすためには、無駄な薬は使わないことです。
とはいえ、最初に述べたように、腎臓病の患者さんにとって薬を勝手にやめるのは危険です。
では、どうしたらよいのでしょうか。
やってほしいのは、一つひとつの薬に対して、「何を目的とした薬か」「今の私にほんとうに必要かどうか」を、主治医に確認することです。
例えば、「以前、ひざ痛があって鎮痛薬を処方してもらったけど、今は痛みがない」というのであれば、鎮痛薬はもう必要ないかもしれません。
「胃薬を処方してもらっているけど、胃の症状はない」というのであれば、その薬をやめてもいいかもしれません。
そういったことを医師に相談してください。
湿布薬などの貼り薬は見落としがちですが、これもやはり薬です。
慢性腎臓病の人も、そうでない人も、使っている薬のすべてが必要かどうかを確認し、不要な薬を一つでも減らすことが大事です。
注意してほしいのは、できるだけ腎臓内科の専門医に相談することです。
腎臓の専門医はさまざまな副作用を考慮しながら慎重に薬を処方します。
他科で処方された薬もすべて開示して、指示を仰ぎましょう。
加えて、市販薬、サプリメントなども、自己判断でむやみに飲まないことです。
これらもすべて腎臓を通って代謝されます。
健康によいといわれる青汁も、カリウムの数値が高い人は安易に飲まないことです。
思いのほかカリウムが含まれていて、不整脈などを起こす高カリウム血症を招く危険性があるからです。