老廃物の排出を促進し血液を浄化する!
ふくらはぎが「第2の心臓」と呼ばれていることは、ご存じの人も多いでしょう。
心臓は、人体においてポンプの役割を果たし、血液の3割を頭部へ、7割を心臓から下へと送ります。
しかし、下半身へ送られた血液を心臓に戻すためのポンプはありません。
心臓に戻るはずの静脈血は、重力の影響を受け、どうしても下半身に滞りがちになります。
全身の血流が悪くなると、必要な酸素や栄養素が、各器官の細胞に行き渡らなくなります。
また、静脈血が停滞すると、老廃物を回収して静脈に流れ込むリンパの流れも悪化します。
リンパの働きは、体内の免疫システムを機能させるうえでも、重要です。
血流の悪化は、体内の各所の機能を低下させるため、さまざまな疾病の要因となるのです。
そこで重要となるのが、ふくらはぎの存在です。
運動などによってふくらはぎを効果的に動かすと、筋肉がポンプの役割を果たします。
下半身に滞った静脈血を、心臓へと戻してくれるのです。
また、ふくらはぎ同様に、足の裏の重要性も見逃せません。
足の裏は、「内臓の鑑」といわれるほど、反射区(全身の各臓器や器官につながる末梢神経)が集まっています。
腎臓の反射区は、足の裏の、中央より少し上辺りです。
反射区を刺激すると、その部分に対応する臓器へ集中的に血液が送られることが、研究で判明しています。
そこで、私たちのクリニックで治療に取り入れているのが、「内臓トレーニング」です。
これは、ふくらはぎや足の裏などへの刺激に重点を置いた独自の理学療法です。
内臓の活性化を図り、自律神経のバランスを整えるため、数々の方法を組み合わせ、血流を改善します。
滞った血流がスムーズになれば、老廃物の排出が促進されるので、血液が浄化されます。
腎臓は、体内で血液をろ過して、老廃物を尿として体外に排出する、浄水場のような存在です。
体内を流れる血液がきれいなら、それだけ腎臓にかかる負担も減ります。
腎臓の負担が減れば、衰えていた機能が回復します。
内臓トレーニングが、糖尿病性腎症や慢性腎炎など、腎臓病の改善につながるのは、こうしたわけなのです。
7割以上が腎機能を改善・維持している!

内臓トレーニングでは、自力療法として、ふくらはぎを効果的に動かす歩き方や、マッサージ法などを指導しています。
同時に、より治療効果を高めるため、専用の低周波電気治療器を用いています。
もともと人間の体には、微弱な電流が流れています。
この生体電流に似た低周波の電流を人体に通電すると、筋肉が収縮して血行がよくなります。
この治療法は、半世紀以上前から研究され、主に肩こりなど、筋肉痛の治療に使われてきました。
その治療を受けた患者のなかに、腎臓をはじめとした内臓機能の回復例が多く見られたことに着目したのが、内臓トレーニング理論の始まりです。
腎機能を測る目安の一つに、クレアチニン(Cr)値があります。
基準値は医療施設によって異なりますが、5・0mg/dl前後(腎臓の残存機能10%)になると、人工透析の導入が検討され始めるようです。
Cr値は、一度上がり始めるとなかなか下がらないといわれています。
しかし、内臓トレーニングを実践した腎臓病の患者さん192人のCr値を調べたところ、45・3%が低下し、25・5%が維持しています(2006年12月~2011年12月、内臓トレーニング協会調べ)。
つまり、ふくらはぎなどへの刺激により、全身の血流をよくすることで、7割以上の患者さんが、腎機能を改善または維持できているのです。
次に、その一例をご紹介しましょう。
85歳の男性・Aさんは、大の美食家でした。
糖尿病性腎症を患っても、食事療法を拒んできた結果、症状が悪化。
Cr値は4・85mg/dlまで上がり、主治医から人工透析を勧められるようになりました。
内臓トレーニングを友人の紹介で知り、熱心に取り組んだところ、1ヵ月後には、Cr値が一気に2・52mg/dlまで降下しました。
しかし、過去1~2ヵ月の血糖状態を示す数値であるヘモグロビンA1cは、まだ10・1%もありました(基準値は4・6~6・2%)。
そこで、さらに根気よく継続したところ、3ヵ月後には、Cr値が2・01mg/dl、ヘモグロビンA1cの値も、7・1%まで下がりました。
主治医からは、「これは奇跡。透析の必要は、一生ないでしょう」と、太鼓判を押されたそうです。
そして半年経ったころには、Cr値は1・81mg/dlまで降下。
ヘモグロビンA1cは6・0%と、ついに基準値内まで下げることができたのです。
人工透析の危機を脱出し、糖尿病も乗り越えたAさんは、5年ほど経った今も元気に暮らしています。
内臓トレーニング理論の根幹は、ふくらはぎなどへの刺激による血流促進と、自律神経系の安定化です。
治りにくいといわれる腎臓病を克服する突破口は、この二つにあるのです。