【医師解説】IgA腎症の根本原因「喉」に注目!新しい治療法「扁摘パルス療法」とは

【医師解説】IgA腎症の根本原因「喉」に注目!新しい治療法「扁摘パルス療法」とは

IgA腎症は、長い経過で進行し発症から30年で約半数の人が慢性腎不全になり、透析療法に移行していきます。10年ほど前までIgA腎症は治らない病気といわれてきました。しかし私たちが開発した「扁摘パルス療法(扁桃摘出・ステロイドパルス療法)」でこの病気も治るようになりました。【解説】堀田修(堀田修クリニック(HOC)院長)


堀田 修
1983年、防衛医科大学校卒業。
仙台社会保険病院腎センター長などを経て、2011年、堀田修クリニック(HOC)を開院。日本腎臓学会学術評議員。1988年IgA腎症の根治治療として扁摘パルス療法を考案。同治療の普及活動と臨床データの集積を続ける。著書に『腎臓病を治す本』(マキノ出版)など多数。

IgA腎症の根本原因はのど(咽頭)にある!

透析療法に至る病気として、糖尿病性腎症に次いで多いのが、IgA腎症です。
この病気は、アジア人に多く、日本でも慢性糸球体腎炎の半数以上を占めています。

腎臓の糸球体は、血液をろ過して尿を作るところです。
IgA腎症は、この糸球体内の毛細血管に、抗体(免疫反応を起こす物質)の一種である免疫グロブリンA(IgA)が沈着し、炎症を起こす病気です。

この病気になると、腎機能が徐々に低下して、赤血球やたんぱくが尿に漏れ出します。
最初に血尿が出て、進行すると、必ず尿たんぱくが認められるようになります。

IgA腎症は、長い経過で進行し、発症から30年で約半数の人が慢性腎不全になり、透析療法に移行していきます。
10年ほど前まで、IgA腎症は治らない病気といわれてきました。

しかし、私たちが開発した「扁摘パルス療法(扁桃摘出・ステロイドパルス療法)」で、この病気も治るようになりました。
扁摘パルス療法は、扁桃を摘出し、ステロイドホルモン剤を投与して、糸球体の炎症を抑える治療法です(詳しくは後述)。

私はこの治療をこれまでに、約2500例行いました。
下のグラフのように、発症3年以内の早期に治療を行えば、80%以上が寛解(血尿とたんぱく尿が消えて病気をコントロールできる状態)しています。

また残りの2割弱の患者さんも、「慢性上咽頭炎」の治療を行うと、寛解することがわかりました。
つまり、この二つの治療で、早期のIgA腎症なら、ほぼ100%治せるようになったのです。

従来は、IgA腎症の治療に、炎症を抑えるステロイド治療しか行われていませんでした。
しかし、糸球体に炎症を起こしている大元の原因は、実は、腎臓から遠く離れた扁桃や上咽頭(のどのいちばん上の部分)にあるのです(下の図参照)。

IgA腎症が起こるメカニズムを簡単に説明します。

扁桃や上咽頭は、人間の免疫システムの最前線です。
ここに細菌やウイルスが付着すると、体を異物から防御するための免疫システムが働きだします。

扁桃や上咽頭では各種の免疫細胞が産生され、ウイルスや細菌と戦います。
これが扁桃炎や上咽頭炎です。

扁桃や上咽頭に慢性炎症が続くと、一部の免疫細胞は血液に乗って全身に移動します。
その免疫細胞が作った抗体の一つであるIgAが糸球体に沈着して炎症を起こし、二次疾患としてIgA腎症が発症するのです。

こうした二次疾患は、全身のどこでも起こる可能性があります。
例えば、慢性関節リウマチのような自己免疫疾患も、同様のメカニズムで起こります。

なるべく早期に治療を始めるのがポイント

扁摘パルス療法は、まず感染の大元である扁桃を切除し、その1週間後に、ステロイド剤を点滴で3日間投与するパルス療法を行います。
このパルス療法を3週間くり返したあと、経口のステロイド剤に切り替えて、徐々に薬を減らしていきます。

この治療が効果を上げるポイントは、なるべく早期に治療を開始することです。
現在の日本腎臓学会のガイドラインでは、尿たんぱくが1日0・5mgを超えた段階で扁摘パルス療法が行われます。
しかし、寛解・治癒を目指すためには、そのタイミングは疑問です。

炎症を火事にたとえると、パルス療法は火事を消す治療です。
火事が起こっている間は「血尿」が出ます。

そして、火事が収まって焼け跡になると、傷んだ糸球体から「尿たんぱく」が漏れ出ます。
ですから、尿たんぱくが増えるのを待ってパルス療法を行っても、手遅れになるおそれがあるのです 糸球体は全部で200万個もありますから、火事で全部が壊れることはありません。

しかし、残された糸球体が少なければ、そこに過大な負担がかかり、腎機能が落ちていきます。
ですから、少しでも早く炎症を抑え、糸球体を残すことが大事です。

私は、尿たんぱくが少ない段階から扁摘パルス療法を行っています。
早期に炎症を抑えることができれば、糸球体のダメージも少なく、寛解・治癒する可能性が高くなります。

このスタートが遅れると、尿たんぱくが残り、血尿が消えても、少しずつIgA腎症は進行していきます。

鼻うがいで上咽頭炎やIgA腎症を予防できる

 もう一つ、IgA腎症を含めた病気の予防・改善にお勧めしているのが、上咽頭炎の治療です。

血尿を顕微鏡で調べれば、赤血球が糸球体から出ているかどうかわかります。
これまで健診などで尿の異常を指摘されたことのない人が、突然、糸球体からの血尿が出るようになった場合、血尿の原因はIgA腎症の可能性が高いのです。

今、糸球体に軽い炎症しか起こっていなくても、いずれ悪化する危険性があります。
その引き金になるのが、上咽頭の炎症です。
これを治療しておけば、IgA腎症の悪化を防ぐことができます。

治療は、上咽頭の炎症部に塩化亜鉛という薬を塗ります。
炎症があれば痛みと出血がありますが、なければ痛みも出血もありません。
それが診断になり、治療にもなります。

この治療は短時間で済みますし、患者さんの体への負担もあまりありません。
しかも、尿たんぱくが陰性の早期の段階であれば、この治療で約6割の人の血尿が消えます。

慢性扁桃炎も慢性上咽頭炎も、ほとんど自覚症状がありません。
しかし、ふだんから口呼吸をしている人、のどに慢性的な違和感や痛みのある人は注意が必要です。

慢性上咽頭炎の予防・治療としては、「鼻うがい」が有効です(下の図参照)。

鼻うがいで鼻を洗浄すると、上咽頭に付着したウイルスや細菌を洗い流すことができます。
慢性上咽頭炎だけでなく、IgA腎症やカゼ、インフルエンザなどの予防・改善にも有効です。

残念ながら、慢性上咽頭炎の治療を行っているのは、全国でもごく一部の医療機関だけです。
しかし、扁摘パルス療法は2014年に標準治療になり、全国の大学病院や総合病院で受けられるようになりました。

どの医療機関で治療したらいいのか、わかりにくいようでしたら、「IgA腎症根治治療ネットワーク」のホームページからお尋ねください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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