【ハーバード大元准教授が考案】生活習慣病、肥満の改善に役立つ「長生きスープ」

【ハーバード大元准教授が考案】生活習慣病、肥満の改善に役立つ「長生きスープ」

私が患者さんに勧めているのが、4種の野菜を20分ほど煮て作る「ファイトケミカルスープ」です。このスープが、がんの予防や治療の助けとして、また糖尿病や高血圧といった生活習慣病の改善、肥満の解消、体質改善など、さまざまな面で大きな効果を上げています。【解説】高橋弘(ハーバード大学医学部元准教授、麻布医院院長)


髙橋 弘
 1951年、埼玉県生まれ。77年、東京慈恵会医科大学卒業後、同大学院(内科学専攻博士課程)へ進み、同附属病院で臨床研修。85年、ハーバード大学医学部に留学。同大学附属マサチューセッツ病院にて、フェロー、助手、助教授を経て准教授となる。東京慈恵会医科大学教授などを経て、2009年より現職。食事と病気の関係に着目してファイトケミカルの研究に情熱を注ぎ、ファイトケミカルスープを考案。『ハーバード大学式「野菜スープ」で免疫力アップ!がんに負けない!』『ハーバード大学式「野菜スープ」でやせる!若返る!病気が治る!』(ともにマキノ出版)など著書・監修書多数。

「免疫栄養学」の研究から生まれたスープ

 私が日々の診療で心がけているのは、最良の医療と最新の医療情報を患者さんに提供することです。しかしそれだけでなく、「薬だけに頼らない医療」も提案しています。それは、食事によって病気の予防や改善に務めることでもあります。
 その具体的な方法として、私が患者さんに勧めているのが、キャベツ、ニンジン、タマネギ、カボチャの4種の野菜を20分ほど煮て作る「ファイトケミカルスープ」です。
 このシンプルな野菜のスープが、がんの予防や治療の助けとして、また糖尿病や高血圧といった生活習慣病の改善、肥満の解消、体質改善など、さまざまな面で大きな効果を上げています。先日、あるテレビ番組で、「ハーバード大学式長生きスープ」として紹介されましたが、まさに「健康で長生きするために最適なスープ」と言えるでしょう。
 私がこの、ファイトケミカルスープ(長生きスープ)を考案したのは、がんの患者さんのご家族のひと言がきっかけでした。「(がんになった妻に)どんな物を食べさせたらよいのでしょうか」。同じような相談が、その後もがんの患者さんやご家族から、相次ぎました。
 がんの原因の35%は食事にあることが、疫学調査でわかっています。そうであるなら、がんになったときに何を食べたらよいのか、何を食べさせたらよいのかは、患者さんやご家族にとって切実な問題です。
 しかし病院では、がんの治療はしても、食事の指導まで行うことはほとんどありません。
 相談を受けた当初、私にも答えが見つかりませんでした。その後、試行錯誤を重ねた末に考案したのが、ファイトケミカルがたっぷり含まれた長生きスープでした。
 このスープの誕生には、私のアメリカでの研究が色濃く反映されています。
 私は1985年にハーバード大学に留学し、臨床のベースになる免疫学、遺伝子工学、分子生物学を学びました。
 その後いったん帰国して再度ハーバード大学に戻り、准教授として大学院生に教えるかたわら、肝炎、遺伝子、がんの免疫療法の研究や臨床経験を積んでいました。
 その研究の中で私が注目したのが、「植物の力」でした。
 折しもアメリカでは、糖尿病や脳卒中、心筋梗塞、がんなどの病気は食事や生活習慣に原因があることがわかり、食生活の改善に国を挙げて取り組んでいました。そして90年代になると、がんに予防効果のあるデザイナーフーズ・リストが発表されたのです。
 そこにリストアップされた野菜には、ファイトケミカルがたくさん含まれています。
 私はこのファイトケミカルに着目し、ファイトケミカルと免疫の研究を深め、「免疫栄養学」という新しい研究分野を打ち立てました。ファイトケミカルをとるための長生きスープは、その研究から生まれたもので、効果も科学的な根拠に裏づけられています。

活性酸素という体のゴミを消すファイトケミカル

 ファイトケミカルは、植物が紫外線や害虫などから自分自身を守るために、自ら作り出す成分です。植物の色、香り、辛味、苦味、渋味などのもとになっていて、植物ごとにさまざまな種類があります。
 ファイト(Phyto)はギリシャ語で「植物」、ケミカル(Chemical)は英語で「化学」、つまり、植物由来の天然の化合物という意味です。
 ファイトケミカルは、たんぱく質や炭水化物、脂肪のような従来の栄養素ではありません。ですから、エネルギーや筋肉や骨、血液などにはなりません。
 しかし、従来の栄養素にはない、とても重要な働きがあります。それが、体内で作られた「ゴミ」を消去する機能です。 私たち人間は、栄養素を酸素で燃やしてエネルギーを作り、日々の活動源にしています。そのエネルギーを作るさい、活性酸素というゴミが出ます。ちょうど、車がガソリンを燃やして排気ガスを出すのと同じです。
 活性酸素は体内に蓄積され、過剰になると、より毒性の強い「ヒドロキシラジカル」という超悪玉の活性酸素になります。この悪玉活性酸素が体内の脂肪やたんぱく質、核酸(遺伝子)などを傷つけて、動脈硬化やがん、老化、その他さまざまな病気の発症因子になるのです。

 この悪玉活性酸素を中和して消去する働きが、ファイトケミカルにはあります。

その作用は、このように幅広く多様ですが、これを見ると、ファイトケミカルは人間の健康の根幹を左右する重要な物質であることがよくわかると思います。 

野菜もスープも全部食べる

 私が野菜を生のまま食べるのではなく、スープにすることを勧めているのは、この大事なファイトケミカルを十分活用できるようにする、いちばん簡単な方法だからです。
 ファイトケミカルは、植物の細胞の中に存在します。しかし、植物の細胞は、硬くて丈夫な細胞壁に囲まれています。
 この細胞壁は人間の消化酵素では消化されず、ミキサーでドロドロに砕いてもなかなか壊れません。しかし、一定以上加熱すると、細胞壁を壊すことができ、ファイトケミカルが吸収されやすくなります。
 ファイトケミカルは熱に強い安定的な物質なので、加熱しても効力が損なわれることはありません。むしろ抗酸化作用はジュースなどよりずっと強くなるという研究(前田浩・熊本大学名誉教授の記事参照)もあります。


 スープの中にはファイトケミカルだけでなく、水溶性のビタミン類や食物繊維が溶け出しています。一方、具の野菜には、体内でビタミンAに変換されるα、β‐カロテンや脂溶性のビタミンE、不溶性の食物繊維が入っています。
 ですから、具もスープも全部食べてください。それだけで、一日に必要なビタミンA、C、Eの摂取量のすべてと、食物繊維の半分がまかなえます。
 ビタミンエース(A、C、E)には抗酸化力や免疫を高める作用、食物繊維には、解毒作用や腸内環境を整える作用があります。
 朝のカップ1杯のスープ。この習慣が、健康と長生きの秘訣だと私は思っています。

→「長生きスープ」の作り方はコチラ

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


【ファイトケミカル】1日分のビタミンA・C・Eをまかなえる「野菜スープ」作り方と食べ方

【ファイトケミカル】1日分のビタミンA・C・Eをまかなえる「野菜スープ」作り方と食べ方

基本の野菜スープを全部食べれば、400gの野菜と、ビタミンやファイトケミカルをたっぷりとることができるのです。その健康効果は、計り知れません。【解説】髙橋弘(麻布医院院長・ハーバード大学医学部元准教授)


【ブロッコリーの栄養】茹ですぎに注意!便秘解消・シワ対策に効果のある食べ方・使い方

【ブロッコリーの栄養】茹ですぎに注意!便秘解消・シワ対策に効果のある食べ方・使い方

ブロッコリーは、野菜の中でも栄養が飛び抜けて豊富で、多くの健康効果や美容、ダイエットにも効果を期待できる、まさに「野菜の王様」です。体にいい成分の宝庫であるブロッコリーを、積極的に食生活に取り入れない理由はありません。【解説】木村至信(秋山眼科医院耳鼻咽喉科部長、木村至信BANDリーダー)


【がんを予防する野菜のとり方】ファイトケミカルは“加熱”が必須 抗がん剤の副作用減

【がんを予防する野菜のとり方】ファイトケミカルは“加熱”が必須 抗がん剤の副作用減

生の野菜をそのまま食べても、わずかしかファイトケミカルを吸収することができません。野菜を煮込むことで、ファイトケミカルがスープに抽出され、生食とは比較にならない強力な抗酸化パワーを得ることができます。【解説】前田浩(崇城大学栄誉教授・熊本大学名誉教授)


非アルコール性脂肪肝炎(ナッシュ)が改善!生活習慣病を予防する「ファイトケミカルスープ」とは

非アルコール性脂肪肝炎(ナッシュ)が改善!生活習慣病を予防する「ファイトケミカルスープ」とは

私の治療の理想は、患者さんが薬だけに頼るのではなく、食事など生活習慣の重要性に気づいて見直していただくことです。そうすれば、難しい病気であっても改善する可能性はじゅうぶんにあります。【解説】髙橋弘(麻布医院院長・ハーバード大学医学部元准教授)


【がん予防の食事】は「野菜スープ」が一番と研究者が断言 ファイトケミカルを効率的に摂れる!

【がん予防の食事】は「野菜スープ」が一番と研究者が断言 ファイトケミカルを効率的に摂れる!

「植物は、なぜがんにならないのだろう?」私は研究を進め、植物に大量に含まれるファイトケミカルに、がん予防効果があることを突きとめました。緑茶のカテキン、トマトのリコピン、ホウレンソウのルテイン、ニンジンやカボチャのカロテノイドなど、身近な野菜に含まれています。【解説】前田浩(崇城大学栄誉教授・熊本大学名誉教授)


最新の投稿


【眼瞼下垂】見た目の老化に加え不眠・頭痛の原因 手術と自分でできる予防法

【眼瞼下垂】見た目の老化に加え不眠・頭痛の原因 手術と自分でできる予防法

眼瞼下垂とは、まぶたの機能に障害が生じて、まぶたが開きづらくなっているものをいいます。まぶたが下がってくると、上眼瞼挙筋を強く収縮させて物を見ようとするため、目の上奥が痛くなる群発頭痛や眼精疲労が起こります。【解説】松尾清(松尾形成外科・眼瞼クリニック院長、信州大学医学部特任教授・名誉教授)


【自律神経を整える】ヒプノセラピー(催眠療法)とは?潜在意識と繋がって免疫力を高める

【自律神経を整える】ヒプノセラピー(催眠療法)とは?潜在意識と繋がって免疫力を高める

私は診療でヒプノセラピー(催眠療法)を用いています。催眠を特別な状態と感じられるかもしれませんが、誰でも1日に十数回は催眠状態を体験しています。起床時や就寝前の意識がぼんやりしているとき、瞑想やヨガなどをして心静かにしているときは、実は催眠状態にあります。【解説】萩原優(イーハトーヴクリニック院長)


【高血圧】手のツボ「合谷」を押すだけで、なぜ血圧が20~30ミリ下がるのか?

【高血圧】手のツボ「合谷」を押すだけで、なぜ血圧が20~30ミリ下がるのか?

高血圧は、自覚症状がほとんどありません。しかし放っておけばやがて動脈硬化を起こし、脳卒中や心筋梗塞といった重大な合併症の引き金になりかねない。まさに、”見えない敵”なのです。そんな〝見えない敵〟とは、どのように戦ったらいいのでしょうか。【解説】渡辺尚彦(東京女子医科大学医学部教授(東医療センター内科))


【不眠症】原因はブルーライトによる眼精疲労?目も「枕」で休めるとぐっすり眠れる

【不眠症】原因はブルーライトによる眼精疲労?目も「枕」で休めるとぐっすり眠れる

最近、疲れ目やかすみ目といった目の症状と同時に、不眠を訴える人がいます。よく「眼精疲労」という言葉を耳にしませんか?眼精疲労とは、目を使うことによって体にさまざまな悪影響が出現し、休んでもそれが解消できない状態のことをいいます。【解説】松本拓也(松本眼科院長)


【慢性疲労・ストレス】原因はパソコンによる指の疲れ 血流改善効果のある「指そらし」でセルフケア

【慢性疲労・ストレス】原因はパソコンによる指の疲れ 血流改善効果のある「指そらし」でセルフケア

指には、交感神経の線維が集中しています。ストレスや緊張を感じたときは、交感神経が優位になって、指に張り巡らされた血管がギュッと締まります。指そらしは、座ったままできるので、運動が苦手な人でも手軽に取り組むことができます。1日に何回やってもかまいません。【解説】富永喜代(富永ペインクリニック院長)