MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【前田浩の最強の野菜スープ】抗がん剤研究の世界的権威が愛飲のスープの正体

【前田浩の最強の野菜スープ】抗がん剤研究の世界的権威が愛飲のスープの正体

私が開発を目指しているのは、正常細胞を傷つけず、がん組織だけに作用を集中させる、抗がん剤です。実用化すれば、患者さんは副作用に苦しむことなく、生活の質を保ちながら治療を受けることができます。しかし、どれほど治療が進歩しても、ガン予防の重要性に変わりはありません。【解説】前田浩(熊本大学名誉教授)

抗がん剤の研究者だからこそ予防の重要性を痛感

 私は長年、副作用のない抗がん剤を目指して研究を続けてきました。従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常細胞も傷つけてしまうため、吐き気や脱毛、食欲不振、造血機能障害、神経障害など、さまざまな副作用を伴います。

 私が開発を目指しているのは、正常細胞を傷つけず、がん組織だけに作用を集中させる抗がん剤です。実用化すれば、患者さんは副作用に苦しむことなく、生活の質を保ちながら治療を受けることができます。
 しかし、どれほど治療が進歩しても、「そもそもがんにならないようにする」ことの重要性に変わりはありません。
 私は、抗がん剤の研究を行う一方で、がん予防の研究も進めてきました。

 長年の研究から得た結論は、「がん予防には野菜スープがいちばん」ということです。

 がんの発症には、猛毒の活性酸素がかかわっています。紫外線、化学物質、タバコ、慢性炎症などが呼吸で取り入れた酸素から活性酸素や一酸化窒素を生じさせ、細胞や遺伝子を傷つけ、正常細胞をがん細胞に変異させます。活性酸素を消去することが、がん予防に直結するのです。

 私たちの体には、活性酸素を消去する物質を作る働きが備わっています。ところが年齢とともにこの働きは低下し、活性酸素を処理しきれなくなります。

 そこで、役立つのが野菜スープなのです。野菜には活性酸素を消去するさまざまな抗酸化物質が含まれています。
 代表がファイトケミカル(植物が紫外線や害虫などから身を守るために作り出す物質の総称。植物の色素や香り、苦味などを構成している成分)です。トマトのリコピン、ホウレンソウのルテイン、ニンジンやカボチャのカロテノイドなど、ファイトケミカルは身近な野菜に豊富に含まれています。

 ファイトケミカルのがん予防に関する研究は欧米を中心に進み、発がん物質の解毒、がん細胞の成長・増殖の抑制、免疫力を高めてがん細胞への攻撃力を強化するなどの働きが認められています。野菜を十分に食べ、ファイトケミカルをとることが、がん予防の最善策といえましょう。

野菜の抗酸化成分をとるにはスープがベスト

 野菜スープには、ビタミン類、ミネラル類など、ファイトケミカル以外の有効成分も丸ごと溶け出しています。野菜スープをとることで、サラダとは比較にならない強力な抗酸化パワーを得られます。

 野菜を加熱すると、ビタミンCが壊れてしまうのではないかと、心配するかたがいるかもしれません。ビタミンC単体では加熱に弱いのは確かです。

 しかし、野菜に含まれるビタミンCは、種々の抗酸化成分の働きで安定化し、壊れにくくなっています。
 スープ作りのポイントは、複数の野菜を入れること。さまざまな成分の相乗的な働きで抗酸化パワーがより高まります。

 お勧めは、ホウレンソウ、コマツナ、ブロッコリーなど緑の濃い野菜、旬の露地野菜です。これらは抗酸化作用が強いことが実験でわかっています。

 私も、毎日朝食で野菜スープを欠かさずとっています。量は大きめのマグカップに7分目ほど。減塩を意識してスープに味つけはしていませんが、隠し味にみそや岩塩、カレー粉を少し入れることもあります。

 家内が作る野菜スープには、タマネギやニンジン、ジャガイモ、セロリ、カボチャ、ダイコンの葉など、季節ごとに旬を迎える6種類ほどの野菜が入っています。

 野菜の3倍ほどの水を鍋に入れて1時間弱煮たあと、ハンドミキサーでトロトロのポタージュ状にするのが我が家流です。
 のどごしがなめらかなスープは朝食にぴったりです。みなさんも野菜スープを健康維持にお役立てください。

 野菜といえば、サラダで食べる人が多いようです。しかし、生野菜をそのまま食べた場合、ファイトケミカルはわずかしか吸収できません。

 ファイトケミカルの多くは、野菜の細胞のなかにあります。細胞は、セルロースという食物繊維の一種でできた頑丈な細胞壁に包まれています。

 ファイトケミカルを取り出すには、細胞壁を壊さなくてなりませんが、人間の体内では、セルロースを消化できません。
 野菜を嚙んだり、包丁で刻んだりした程度では大半の細胞壁は壊れず、細胞の中の有効成分を吸収できないのです。
 実際、生野菜を食べた後に検便を行って便を観察すると、野菜の細胞は未消化のままそっくり便に排泄されています。

 野菜の有効成分をあますところなくとるベストな方法が、野菜を加熱し、スープとしてとることです。野菜をゆでるだけで頑丈なセルロースの細胞壁はあっけなく壊れ、細胞や細胞膜からファイトケミカルがスープに溶け出すからです。

 私たちの実験で、野菜の活性酸素を消去する働きは、生野菜をすりつぶしたものより、野菜を5分間煮出したゆで汁のほうが10倍~100倍強いことが明らかになっています。(グラフ参照)

ポタージュにすると口当たりがよく飲みやすい!

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
大腸にできるポリープの中には、放置すると大腸がんになってしまうものがあります。従来は、ポリープの切除に伴う出血などのリスクと、大腸がんの発症リスクをはかりにかけて、「小さなポリープは様子を見る」という考え方が主流でした。しかし近年、その考え方が変わりつつあります。【解説】松尾恵五(東葛辻仲病院院長)
現在、国内で承認されている免疫療法はまだ一部のがん対象に限られていますが、近い将来、さらに多くのがんへの適応が予定されています。ことに、従来の治療だけでは治らなかった進行がんを食い止め、生存率を上げる効果が期待されています。【解説】角田卓也(昭和大学医学部腫瘍内科主任教授)、【取材】山本太郎(医療ジャーナリスト)
1990年代、アメリカでガンの予防が期待できる食品群を一覧にする「デザイナーフーズ計画」というプロジェクトが発足しました。ニンニクは、そのピラミッド型の一覧図の頂点、すなわち、最もガン抑制効果が期待できる食品の一つとされています。私たちもニンニクのにおい成分を調べました。【解説】関泰一郎(日本大学生物資源科学部教授)
急に目立ってきたホクロの中には、正常とは異なる「危険なホクロ」が隠れていることが…。皮膚の腫瘍の中でも極めて悪性度の高い「メラノーマ」の始まりの可能性があるのです。安易にレーザーでホクロを取るような行為を見かけますが、重大な自体を招く危険性があるのです。【解説】赤須玲子(赤須医院院長 皮膚科専門医・医学博士)
脳腫瘍の切除手術は難易度が高く、手術後にマヒや言語障害などの後遺症が生じてしまうことも少なくありません。しかし近年、後遺症の起こりにくい「覚醒下手術」が注目を集めています。【解説】篠浦伸禎(がん・感染症センター都立駒込病院脳神経外科部長)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル