鳥は高血糖でも長生きなのはインスリンがないから

トリは高血糖だが動脈硬化にならない
地球上で最も進化した生物である「鳥類」は、ヒトから見ると、ものすごい高血糖なのをご存知でしょうか。
ヒトの血糖値は、空腹時で100mg/dl前後。これにたいしてトリは、約300~800mg/dlもあるのです。
それでいて、トリは動脈硬化にならず、しかも長生きです。
実は、トリの体内ではインスリンが分泌されず、外からインスリンを補っても作用しません。
トリは、長い時間、空を飛び、筋肉を動かし続けます。このとき、筋肉のエネルギー源になるのが血中のブドウ糖です。そのため、常に高血糖である必要があるのです。
さらにトリは、飛んでエサを見つけることができるので、飢餓のリスクがありません。そのため、エネルギー源(脂肪)を蓄える必要がないのです。
インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンです。その働きの本質は、血糖値を下げることではありません。
インスリン本来の働きは、血糖値上昇分を中性脂肪に変換して、飢餓に備えるため、脂肪をためこむことにあります。
脂肪をためこむことで肥満を招くことから、インスリンは別名「肥満ホルモン」と呼ばれています。
前述のとおり、インスリンには、動脈硬化を進める活性酸素を増やしたり、老化や低血糖をもたらしたりするなどマイナス面があります。
インスリンを持たないトリは、このマイナス面から逃れ、高血糖でも肥満にならず、糖尿病はもちろん、動脈硬化をはじめとする合併症とも無縁なのです。
合併症の真犯人はインスリン
ヒトの場合にも同じことがいえます。
1型糖尿病の人や、BMI25未満(体格指数のことで、計算式は体重÷身長(m)の2乗)のやせていて高血糖の人は、インスリンの分泌が少なく、トリと同じタイプといえます。
このタイプは、インスリンの影響が小さいので動脈硬化が進みにくく、合併症も起こりにくい不老長寿体質といえます。
逆に、BMIが25以上で、太っていて高血糖という人(メタボ型)は、インスリンが過剰に分泌され、脂肪をためこみやすく、動脈硬化を進行させて、合併症を起こしやすいタイプといえます。
ただし、体形だけで判断してはいけません。
やせて見えても筋肉量が少なく、体脂肪率が25%以上あれば、やはりインスリンの分泌が過剰な状態です。
この場合も、肥満タイプと同じく、合併症を起こしやすいといえます。
多くの患者さんの経過を診ていえることは、高血糖そのものは、たいした問題ではないということです。
インスリン過多の状態こそが動脈硬化を進め、糖尿病の合併症を引き起こしているのです。悪いのはインスリンなのです!
そうはいっても、やせ型糖尿病だとしても、高血糖だと健康診断で引っかかります。そうなると気になるかたも多いでしょう。では、どうすればいいのでしょうか。
やせ型・メタボ型それぞれに最適な低インスリン療法のやり方をご紹介します。
解説者のプロフィール

新井圭輔
1981年京都大学医学部卒業。あさひ内科クリニック院長。上中里医院特別顧問。臨床の中で多くの糖尿病患者の治療に携わり、「定説は真実とは限らない」として、定説を覆す「低インスリン療法」を提唱。インスリンを補わない、分泌させない治療で、糖尿病の合併症を防ぐ治療に効果を上げ、多くの医師の賛同を得ている。著書『糖尿病に勝ちたければ、インスリンに頼るのをやめなさい』(幻冬舎)が好評発売中。