軽い耳鳴りなら2ヵ月で改善する
耳鳴りのある患者さんは、ほぼ例外なく、首や肩にコリがあります。
そういう患者さんに私が必ず行う施術が、わきもみです。
わきをもみほぐすと、軽い耳鳴りなら2ヵ月、重症でも1年くらいで改善しています。
Aさん(50代・男性)は、テレビの音が聴こえないほどのひどい耳鳴りにずっと悩まされていました。
昔、テレビの放送時間が終わると、ザーッという音とともに砂嵐の画像が流れました。
そのザーッというような音が両耳で鳴り響いて、会話もままならないというのです。
Aさんの体に触ると、首と肩がコチコチにこっていました。
わきに触ると、叫び声を上げて痛がります。
そこで、毎週通っていただき、自律神経を整える背骨の施術と、わきもみを念入りに行いました。
そうしたところ、1年ほどの通院で、耳鳴りがほとんど気にならないくらいに軽減。
期間は長くかかりましたが、Aさんは、「耳鳴りから解放された」と、とても喜んでいました。
Bさん(50代・女性)は、仕事が忙しいうえに親の介護が重なって、ある日突然、右耳に耳鳴りが始まりました。
肩や首に触ると、やはりすごくこっています。
そこで、わきもみを中心にした施術を行ったところ、すぐに耳鳴りが軽くなりました。
ただ、その日よくなっても、しばらくするとまたひどくなるというように、症状が周期的に現れました。
しかし、施術を続けるうちに気にならない日が増えてきました。
そして、Bさんの耳鳴りは、2ヵ月ほどで消えました。
お二人とも50代で、更年期や仕事の忙しさが関係しているようでした。
原因のわからない耳鳴りは、ストレスやホルモンと関係あるのかもしれません。
難聴の進行も抑えられる!
わきもみで耳鳴りが改善するのは、東洋医学的にも西洋医学的にも理由があります。
まず、東洋医学的な話からしましょう。
わきの周辺には、2本の経絡(生命エネルギーの一種である気の通り道)が通っています。
一つは心包経で、手のひら側の中指から腕の内側、わきを通って胸の外側に至る経絡です。
もう一つは三焦経といって、手の甲側の薬指から腕の外側、わきの背中側、耳の後ろを通って、こめかみに至る経絡です。
この二つの経絡は、表裏の関係にあり、お互いに強く影響し合っています。
通常、耳鳴りの治療では、三焦経のツボを刺激します。
しかし、心包経も同時に刺激することで、より高い効果が期待できるのです。
また、心包経は精神活動をつかさどる心経という経絡とも深い関係にあり、ストレスがあると通りが悪くなります。
ですから、心包経の流れを促すと、心経の通りもよくなり、ストレスが関係するような耳鳴りの改善にも役立ちます。
私が患者さんに教えているわきもみは、この心包経と三焦経を同時に刺激します。
西洋医学的な観点からも、わきの下をもむ効果は大きいといえます。
鎖骨の下からわきの下へ、血管や神経が通っています。
腕を動かす仕事が少なくなった現代人は、わきの周囲の筋肉がかたくなる傾向にあります。
すると、血管や神経が圧迫されて、血液の流れや神経の通りが悪くなるのです。
わきの下に通る腕神経叢は、首すじ(頸椎5番から胸椎1番)からわきの下を通って腕に伸びている神経の束で、心包経の位置とほぼ重なっています。
わきをもむと、わきの下の筋肉がほぐれ、頭部や腕への血流が促進され、腕神経叢の通りがよくなります。
そうして、首・肩のコリが取れると、耳鳴りの改善につながります。
鍼灸では、耳鳴りは耳の周りのツボに鍼やお灸をするとよく効きます。
しかし、それらのツボを使わなくても、わきをもむだけで十分効果が得られます。
めまいや難聴のある人も、首、肩、わき周辺がこっているので、このわきもみが有効です。
実際、回転性のめまい(良性発作性頭位めまい症)のあるかたに、わきもみを行ったところ、めまいの頻度が少なくなりました。
難聴も、わきもみをすることで、進行が抑えられると思います。
わきもみは自分でもやることができます。
そのやり方は、下の図解を参照してください。
耳鳴りのある側のわきを重点的にもみ、反対側のわきもできればもみましょう。
痛気持ちよい強さで、片側1分ほどもみます。
これを、1日3回を目安に行うといいでしょう。
耳鳴りに効くわきもみは、体の温まっている風呂上りがお勧め

解説者のプロフィール

坂本実穂
坂本均整施術所所長・姿勢保健均整師・鍼灸師
●坂本均整施術所
http://www.sakamoto-body.co.jp/