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【スロージョギング】室内でもOK 糖尿病の血糖値を下げ うつ病にも効果あり

【スロージョギング】室内でもOK 糖尿病の血糖値を下げ うつ病にも効果あり

突然ですが、ジョギングはお好きですか? 嫌いな人がほとんどかもしれません。ジョギングは疲れるし、苦しい。そう思っているようでしたら、それは走るペースが速すぎるのです。私の提唱する「スロージョギング」なら、そんなことはありません。【解説】田中宏暁(福岡大学スポーツ科学部運動生理学研究室教授・医学博士)

ウォーキングとは比較にならないほど高い効果

 突然ですが、ジョギングはお好きですか?
 嫌いな人がほとんどかもしれません。
 ジョギングは疲れるし、苦しい。そう思っているようでしたら、それは走るペースが速すぎるのです。

 私の提唱する「スロージョギング」なら、そんなことはありません。

 ひざが痛くてつえをついていたのに、スロージョギング開始からわずか1年半でフルマラソンを完走した人がいます。たった2年でホノルルマラソンに挑んだ75歳の男性もいます。

 天皇陛下と美智子皇后も毎朝、午前6時半からのお散歩の合い間にスロージョギングを楽しくお続けになっている様子がニュースで伝えられました。

 スロージョギングとは、鼻歌を歌ったり、おしゃべりしたりしながらできる速さで行うジョギングのことです。
 笑顔を絶やさず走れることから、私たちはこの程度の運動強度を、「ニコニコペース」と呼んでいます。まったく走ったことがなくても、運動が苦手な人でも、今すぐ楽しくできるのが、スロージョギングです。

 心臓もバクバクしないので、90代から始めても安全に長く続けることができます。
 人によっては歩くよりも遅い速さになるので、「それならウオーキングでいいのでは?」と思われるかもしれません。

 ところが、スロージョギングの消費カロリーは、ウオーキングの約2倍!

 疲労物質の乳酸がたまらないギリギリの運動強度なのでらくにできるのにもかかわらず、ウオーキングとは比較にならないほどの効能があるのです。

筋肉を動かさないと糖尿病は悪化する

 その一つが糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防・改善効果なのです。

 運動を行うとその刺激で、筋肉の中にある糖の輸送体が筋膜や筋細胞の表面に誘導されます。輸送体が速やかに血液中から筋肉内に糖を取り込むので血糖値が下がり、糖尿病が改善するのです。

 また、それ以上に注目されているのが、脂肪細胞から分泌される「アディポサイトカイン」という物質の作用です。
 アディポサイトカインには、コレステロールと同じように善玉と悪玉があります。内臓脂肪が増えるとともに、悪玉アディポサイトカインも増えます。

 これが臓器に作用して炎症を引き起こし、糖尿病などの生活習慣病を発症させます。今ではほとんどの生活習慣病は、この悪玉アディポサイトカインが原因だと考えられています。

 しかも、新たにわかったことですが、筋肉を動かさずにいると、筋肉から悪玉アディポサイトカインが分泌されるのです。内臓脂肪が多くて、運動をしない糖尿病の人にしてみれば、まさにダブルパンチでしょう。

 悪玉アディポサイトカインを減らすには、細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリア機能を高めるたんぱく質の遺伝子、これを発現させる運動がカギとなります。

 それには、ウオーキングでは効果がなく、乳酸がたまらないギリギリの強度のスロージョギングが最適とのデータが出たのです。興味深いことに、それも一度にやるよりは数回に分けてこま切れにやるほうが、最も効果的に血糖値を下げることがわかったのです。

人間はもともと走るように作られている

 具体的なやり方は別記事で解説していますが、30分に1回、スロージョギングを3分程度行うだけで、血糖値は下がります。この程度の運動なら、準備運動も整理運動もいりません。スーツを着た会社員も実践できます。

 私たちはこの研究で、アメリカ生理学会賞をいただきました。「ノーペイン・ノーゲイン(痛みなくして、得るものはなし)」という世界の運動の概念は、スロージョギングで見事くつがえったのです。

 糖尿病患者に対する本格的な研究はこれからですが、すでに基礎研究ではすばらしい成果が上がっています。
 最後になりますが、1970年ごろまで、糖尿病になる日本人はごくわずかでした。糖尿病の主な原因は、食べすぎと運動不足、あとは遺伝的要因です。

 現代人の摂取カロリーは、1964−1970年をピークに減り続けています。原因は運動不足としか考えられません。

 人間は走ることで獲物をとらえ、進化をしてきました。私たちの体は、誰もが長く走れるようにできています。
 それが車社会となり、走ることを失ったために、体にさまざまな不調が出てくるのです。

 スロージョギングは、糖尿病はもちろん、高血圧や抗加齢、ダイエット、早期認知症、うつ症状など、幅広い領域から効果が期待され、今や韓国、ポーランド、ドイツでもスロージョギング協会が発足されました。

 皆さんも、健康維持と病気の予防・治療に、ぜひスロージョギングを取り入れてください。

解説者のプロフィール

田中宏暁
福岡大学スポーツ科学部教授、福岡大学身体活動研究所所長。1947年生まれ。東京教育大学体育学部卒、医学博士。専門は運動生理学で、肥満や動脈硬化性疾患などの生活習慣病の治療と予防に有効な運動処方に関する研究が主なテーマ。高齢者や運動経験のない人でも、らくに楽しく続けられることができ、しかも生活習慣病の予防や改善に役立つ「スロージョギング」を提唱。世界中から注目され、脳機能の改善やサルコペニアの改善に効果的であることもわかっている。著書多数。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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