近視の人の多くは交感神経が緊張状態
目が疲れてショボショボすると、私たちは自然にまぶたに手をやり、こすったり、もんだりします。このように眼に不快感が現れるのは、自律神経のバランスが乱れている証拠です。
自律神経は、体の諸機能を無意識のうちに調整する神経のこと。体を活動状態にする「交感神経」と、体を休息状態にする「副交感神経」とがバランスを取って働き合っています。
目が疲れてこすりたくなるのも、交感神経の緊張から副交感神経の働きが抑えられ、涙の量が少なくなっているからです。
同様に、日本人の多くが抱える近視も、交感神経の緊張を背景に発症・進行していく病気ともいえます。
近視は屈折異常の一つです。本来は網膜上に焦点を結ぶ光が、網膜の手前で焦点を結ばれるため、遠くの物がぼやけて見えにくくなってしまうのです。
その際、解剖学的に問題とされるのは、角膜表面から網膜までの距離(眼軸)です。「眼軸が伸びるほど近視も強くなる」と、一般には言われています。
しかし、近視の度数=屈折度数が同じであっても、視力が同じとは限りません。屈折度に合わせたメガネをかけて視力1.0の人もいれば、視力0.5の人もいます。
「暗い部屋で読書は禁物」の本当の理由
そこで、かかわってくるのが自律神経です。自律神経のバランスは、眼球に入る光の量を調整している瞳孔(瞳)の大きさを見るとわかります。瞳は、交感神経が優位になると周囲の光彩が伸びて大きくなり、副交感神経が優位になると光彩が縮んで小さくなるしくみになっているからです。
実際、近視の人の目を観察すると、総じて瞳が大きく、交感神経優位の体調にあるようです。また、光彩の反応で自律神経の働きを測定する機器で調べても、近視が進行するときは交感神経が過度に緊張し、副交感神経の働きが抑制されていることが確認されます。
このように瞳が開いた状態では、焦点深度が浅くなり、ピント合わせに余計な力がかかります。すると調整力をつかさどる毛様体筋も徐々に疲労・緊張していき、視力の低下を招いてしまうのです。
交感神経を過度に緊張させる原因は、ストレスです。そもそも自律神経は、日中は交感神経が優位に、夜から明け方にかけては副交感神経が優位に働くようにプログラムされています。
夜ふかしや寝不足など、この生理的変動を超えた生活スタイルが、自律神経のバランスを乱す最大のストレスです。そう考えれば、昔から「暗い部屋での読書は禁物」といわれるのも納得できるでしょう。
こうした生活習慣に精神的ストレスが加わると、交感神経はいっそう緊張度を増し、近視も進みやすくなります。
視力回復のための「爪もみ」のやり方
解説者のプロフィール

本部千博
日本ホリスティック医学協会顧問。1985年、岐阜大学医学部卒業。協立総合病院で研修後、内科医として勤務。1989年、岐阜大学医学部眼科学教室に入局。2005年、名古屋で「ほんべ眼科」を開業。「近視は治せる病気である」をモットーに、独自の視力回復法や生活指導によって、近視化の予防や老眼の進行防止に力を入れている。また、排毒・解毒法を中心に据えた内科の健康相談などを行っている。
ところで、近視は緑内障を発症させる一因にも挙げられています。
緑内障も、眼圧によって網膜の視神経が圧迫・障害される病気です。眼圧の上昇が近視の発症・進行に影響しているなら、緑内障になりやすいのも当然でしょう。正常眼圧緑内障の患者には冷え症の合併症が多く、自律神経のバランスが悪くなっていると考えられます。
このほか、老眼や白内障、さらには糖尿病、高血圧性網膜症、中心部がゆがんで見える中心性漿液性網脈絡膜症の根底にも、明らかに自律神経の失調が存在します。自律神経をバランスよく働かせることが、目の健康を守る基本なのです。
そこで、お勧めしたいのが「爪もみ」です。
神経はネットワークを作って働き合っています。爪の生えぎわは神経が密集する部位なので、爪もみをすると刺激が瞬時に自律神経に伝わり、交感神経と副交感神経のバランスが整えられるのです。
事実、反応の早い人なら、爪もみを終えた瞬間に目の前が明るくなり、物が見えやすくなっているのがわかるでしょう。1日2~3度を目安に、根気よく続けてください。