現代人に多い足の指の変形は自律神経まで乱す
産婦人科医である私が足に着目することを、意外に思うかたは多いかもしれません。
産婦人科の内診台の患者さんを診察するとき、私が最初に見るのは、足です。
足を見てから、子宮や卵巣を診察するうちに、しだいにその相関性について考えるようになりました。
現代人は、足の指が変形していたり、足のアーチ(上部が半円形になった構造)がくずれたりしている人が、非常に多く見られます。
足の指が変形して重心が不安定になると、かかとの骨が内側か外側に傾きます。
すると、バランスを取ろうとして、その上に乗っているすねの骨が傾き、姿勢を維持するために骨盤、背骨の順にずれが生じます。
さらには下あごがずれて、噛み合わせの問題も引き起こします。
噛み合わせが悪くなると、咀嚼がうまくできずに消化不良を招き、生殖器を含む内臓全般に負担がかかるのです。
また、あごの位置のずれは、片方の歯で噛むクセや食いしばり、歯ぎしりにつながり、片頭痛や首肩のコリ、あごの痛みなど、筋肉の過緊張による症状を誘発します。
これに伴って、内臓や血管、ホルモン分泌を調整する自律神経のバランスも乱れてきます。
このように、体はすべてつながっています。
ですから私は、婦人科疾患や不妊症の患者さんを診る際、足の指や姿勢、食いしばりの有無なども、診察項目に含めているのです。
私は現在、西洋医学に準じた病院に勤務する一方で、歯科医院と連携したクリニックを開設し、東洋医学的視点から、女性のさまざまな不調の改善に取り組んでいます。
そこでは、漢方薬や食事指導に加え、足指の変形が全身の不調を招く可能性を視野に入れ、必要な患者さんに、足指のケアを勧めています。
ふくらはぎと足首は子宮、足先は卵巣と考える
私が勧める足指のケアは、みらいクリニック院長・今井一彰先生の「ひろのば体操」がベースになっています。
足の指を伸ばし、広げる体操です。
私自身、ひろのば体操で、骨盤のゆがみだけでなく、気になっていた外反母趾が改善して、立ち仕事が楽になりました。
足の指をもんで伸ばす方法は、下の図解をご覧ください。
足の指もみのやり方

ポイントは、力を入れ過ぎないこと。
最初は、手の指が入りにくかったり、足の指が動かなかったりするかもしれません。
その場合、足の指を1本ずつ、もんだり伸ばしたり、さすったりしても効果が得られます。
5分以上行ってもかまいませんが、痛みを感じまでやるのは逆効果。
少しずつ、毎日続けることが効果を得る近道です。
足の指をもんだり伸ばしたりしたかたのほとんどは、冷えとむくみの改善を実感しています。
足の指が整うと咀嚼が改善、消化器や生殖器への負担が減る
また、足の指の変形が改善することで、床に密着する足裏の面積が増加すると、上下の歯が接する面積も増えるという研究データを、歯科医師の先生が発表しています。
しっかりした咀嚼の刺激は脳にも伝わり、集中力アップなどにつながります。
特に、お子さんは変化が顕著に表れるので、喜んでいる親御さんが多いようです。
また、全身の骨格が整って、しっかり咀嚼できるようになると、食べ物が消化・吸収されやすくなり、消化器や生殖器への負担が軽減します。
その結果、子宮筋腫や卵巣嚢腫の改善にもつながりやすくなります。
さらに、足指の変形から骨格がゆがんで生じた肩こり、腰痛、ひざ痛も、足指のケアで全身の骨格が正常な位置に戻ると、緩和しやすくなります。
足指の変形が改善すると、婦人科の病気にもいい影響を与えます。
骨盤の傾きやゆがみが整うことで、骨盤内の子宮や卵巣の血流が改善し、老廃物が排出されやすくなるからです。
加えて、あごのずれが直ると、周辺の筋肉の緊張が取れ、自律神経のバランスが整います。
そのため、耳鳴り、めまい、イライラ、頭痛といった更年期障害の症状も改善が期待できます。
体の土台である足の指を整えることは、体すべてに好影響を与えるのです。
なお、私は、足と生殖器は相関していると考えています。
足に足首があるように、子宮にも「首」を表す「頸」の文字がついた子宮頸部があります。
ふくらはぎを子宮体部、足首を子宮頸部、足先を卵巣ととらえるのです。
実際、ふくらはぎが張っている人は子宮に瘀血(血の滞り)があったり、足の指がかたく動きにくい人は、排卵にトラブルを抱えていたりする傾向を感じます。
子宮や卵巣の状態が反映していると思うと、足のケアをする際にも、いたわりの気持ちがわくのではないでしょうか。