解説者のプロフィール

尾花明
聖隷浜松病院眼科部長。
1983年大阪市立大学医学部卒業。
加齢黄斑変性の診断と治療や抗酸化サプリメント研究に力を注ぐ。
著書に『加齢黄斑変性といわれたら』(眼鏡光学出版株式会社)がある。
●聖隷浜松病院
http://www.seirei.or.jp/hamamatsu/index.html
緑黄色野菜は青魚と一緒に食べるとよい
加齢黄斑変性は現在、日本人の失明原因の4位です。しかし現在の状況を考えると、今後、さらに増えると予測されます。
そこで、予防のために、食事と光への対策、睡眠の観点から、注意点を挙げておきます。
まず、網膜の黄斑色素を増やすために、普段の食事でルテインやゼアキサンチンを含むものを取ってください。前述のように、ルテインやゼアキサンチンのような黄斑色素には、青い光を吸収したり、活性酸素を消去する抗酸化力があります。
黄斑色素が増えると、青い光を防御する以外に、見え方にもよい働きをします。
黄斑色素が多い人は、物を見たときの明暗がはっきりするため、クッキリ見えます。同時に、光がまぶしく感じられるわずらわしさが少ないとされます。これは、黄斑色素が、網膜の中で、散乱する青色の光を吸収するため、まぶしさの軽減につながるのです。
表にあるように、ルテインは緑の葉もの野菜、ゼアキサンチンは黄色の野菜や果物に含まれています。
アメリカの調査では、ルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンC、E、亜鉛、銅を含むサプリメントを取ったところ、加齢黄斑変性の発症が、普段、緑黄色野菜を取らない人で26%も抑えられていました。
また、私の研究でも、ルテインのサプリメントを治療に併用すると、抗VEGF注射の回数を減らすことができました。ルテインの摂取は、黄斑変性の予防や改善に大変有効だと考えられます。
ルテインを緑黄色野菜で取る場合、1日4mgを目指すとよいでしょう。ホウレンソウやコマツナなら、3分の1束が目安です。カロテノイドは油に溶けやすい物質なので、油で炒めたりドレッシングをかけると効率よく摂取できます。
加えて、私がお勧めしたいのは、魚と一緒に取ることです。魚(特に青魚)には、オメガ3系のドコサヘキサ塩酸(DHA)やエイコサペンタ塩酸(EPA)が多く含まれています。
これらの魚油と一緒にルテインを取ると、黄斑色素が増えやすいことが私たちの研究でわかっています。
DHAやEPAの推奨摂取量は1日1gですから、イワシやアジなら1匹程度です。
それ以外に、ビタミンCやEといった抗酸化ビタミンの多い食品も取るとよいでしょう。
外に出るときは、日光を目に直接浴びないように、帽子をかぶり、サングラス、または青い光を遮断する遮光メガネをかけるとよいでしょう。
目の黄斑の図解

加齢黄斑変成を予防する食品

青い光は睡眠のリズムも妨げるので要注意
日光に当たるのは、午前中がお勧めです。朝、光を浴びると、十数時間後にメラトニンという睡眠を促す物質が分泌され、睡眠のリズムを作るからです。
テレビ、パソコン、携帯電話は、就寝する3時間前からは見ないようにします。寝る前に青い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制されるからです。どうしてもパソコン作業が必要なときは、パソコン用メガネ(遮光メガネ)を着用します。
照明は、白色LEDではなく、自然色LEDにすると、青色光を減らすことができます。
また、喫煙者は、ぜひ禁煙してください。喫煙者は、非喫煙者の2.97倍も、加齢黄斑変性の発症率が高いことが疫学調査でわかっています。