【軽度認知障害(MCI)とは】物忘れの延長線上に認知症がある 症状と治療薬について

【軽度認知障害(MCI)とは】物忘れの延長線上に認知症がある 症状と治療薬について

日本では、認知症に対する医療や社会の理解が非常に遅れています。結果、誤った対応によって症状がより深刻化し、ご本人や周りの人たちがつらい思いをしてしまうケースが後を絶ちません。医師や介護職の人はもちろん、家族も病気に対する正しい知識を持つ必要があります。【解説】長尾和宏(長尾クリニック院長)


65歳以上の4人に1人が”認知症”の時代に突入

現在、日本では認知症の人がどんどん増えています。
その数は、全国におよそ462万人。

認知症予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)の人も合わせると、860万人に上るといわれています。
65歳以上の高齢者は、現在3400万人ほどなので、実に4人に1人が認知症ということになります。

認知症は、もはや特別な病気ではなく、誰もがいずれなりうる病気になってきている、といえるでしょう。
にもかかわらず、日本では、認知症に対する医療や社会の理解が、非常に遅れています。

その結果、誤った対応によって症状がより深刻化し、ご本人や周りの人たちがつらい思いをしてしまうケースが、後を絶ちません。
ですから、医師や介護職の人はもちろん、認知症の人の家族も、認知症という病気に対する正しい知識を持つ必要があります。

では、認知症とはどんな病気なのでしょうか。
認知症とは、簡単にいうと、脳内の神経細胞が減少したり、神経細胞どうしの情報伝達が悪くなったりすることで、認知機能に障害が出る(中核症状)病気です。

しかし、認知症でも、社会生活が送れている人、なかには仕事を続けている人もいます。
実際、「どこまでが単なる物忘れで、どこからが認知症になるのか?」という線引きは、なかなか難しいものです。

少なくとも、生活に支障が生じて介助が必要になった状態は認知症、とはいえるでしょう。
私は、物忘れと認知症は別物ではなく、連続しているものと考えます。

つまり、物忘れの延長線上に、認知症があるのです。
認知症は、ある日突然に発症する病気ではありません。

症状は一人ひとり異なり改善の可能性は十分にある

次に、認知症に対する二つの誤解を解いていきましょう。
まず一つは、「認知症=一つの病気」と思われている点です。

脳の神経細胞が減少する原因は、数十〜数百種類あるといわれています。
認知症とは、これら複数の病気の総称なのです。

なかでも4大認知症と呼ばれているのが、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症(ピック病)」「脳血管性認知症」です。
これらのうちの一つが、時間の経過とともに、違う認知症へと様相が変わっていくこともあります。

そして、どれか一つに限らず、複数が混合しているケースも多くあります。
つまり、ひとくちに認知症といっても、その症状や対処法は一人ひとり異なるので、その人に合わせた治療を、きめ細かく行う必要があるのです。

ところが、なかには、「認知症=抗認知症薬」というぐあいに、画一的な治療しか行わない医師も多くいます。
その結果、薬が合わずに症状が悪化する人や、副作用で新たな症状に苦しめられる人が現れるのです。

これは非常に大きな問題です。
また、認知症は、本人や周囲を悩ませる周辺症状(徘徊、暴力、幻覚、抑うつなど)を招きます。

症状は人によって違うので、どんな症状で困っているのかは、本人もしくは家族に聞かなければわかりません。
認知症は、ある程度、症状や治療法が共通しているほかの病気と異なり、医師が、患者やその家族の声によく耳を傾けなければいけない病気なのです。

しかし、実際にそれを行っている医師は、多くないように思います。
もう一つの誤解は、「認知症は改善しない病気」と思われている点です。

従来、認知症は、一度起こったら、進行していく一方の病気だと考えられてきました。
しかし、適切な対策を施せば、認知症を発症した人が、治るとはいかないまでも、改善する可能性は十分あります。

特にMCIの人は、運動と食事の意識を高めるだけで、正常範囲に戻る確率が飛躍的に高まるのです。
しかし、多くの人は、「認知症になったらおしまい」「もう普通の社会生活は送れない」「介護施設・精神病院行き」といった偏見を、いまだ根強く持っています。

そのため、「早期診断」はしたものの、「早期絶望」という、皮肉な状態になっている人も存在するのです。
こうして、認知症と診断された家族は、慌てふためきます。

そして、病院での過剰な薬物療法に頼ったことで、ますます認知症が悪化するという、不幸な結果を招く場合も、少なくありません。
また、今は、専門職ではない人も介護職に携わっている時代です。

介護訴訟も激増しています。
そのため、認知症の人が問題を起こさないよう、施設では部屋にカギをかけて認知症の人を閉じ込めます。

すると、それまで歩けていた人も、あっという間に寝たきりになり、認知症も進行します。
これらはまさしく、医療が原因で作られた「医原病」であり、介護が原因で作られた「介原病」です。

このような状況を未然に防ぐためには、やはり医療者・介護者・行政を含めた社会全体が、認知症を正しく理解する必要があります。
そして、認知症になっても周囲が支えてくれる、優しい環境づくりを行うことが望まれます。

ちぐはぐなことは聞き流し否定はしない!

最後に、認知症の人を支える家族について、お話ししましょう。
認知症医療においては、ほとんどが家族の裁量にかかっています。

だからこそ、家族は認知症についてしっかり理解をし、医者選びや施設に入れるかどうか、どんな治療を受けるかなどを選択しなければなりません。
その正しい選択をするためには、家族が認知症と診断されてもパニックにならず、情報収集に努めることが大切です。

本やインターネットはもちろん、地域にある家族会や認知症カフェへ出かけて、生のクチコミ情報を得るのもよいでしょう。
また、2014年には「日本認知症ワーキンググループ」ができ、認知症の当事者たちが声を上げ始めました。

彼らの声に耳を傾けることも、大いに参考になるはずです。
認知症の人への接し方としては、当人のいうことを否定し、プライドを傷つけるようなことは、決してしないでください。

「なぜわからないの!」「なんで忘れるの!」といっても、それがわからない、それを忘れてしまうのが認知症です。
ちぐはぐなことをいっていても、さりげなく聞き流し、荒波を立てないのが一番です。

これを意識するだけでも、家族のストレスはだいぶ軽減されるでしょう。
認知症と闘い、悩むのではなく、認知症の人に寄り添い、ともに歩むことを心がけてください。

長尾和宏
1958年生まれ。長尾クリニック院長。医療法人社団裕和会理事長。関西国際大学客員教授。医学博士。95年に長尾クリニックを開業。2006年より在宅療養支援診療所として、外来診療と24時間体制での在宅診療を続ける。また、講演活動なども精力的に行っている。近著に『薬のやめどき』『痛くない死に方』(ともにブックマン社)などがある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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