【糖尿病専門医】糖尿病を改善したいなら歯科も受診をするべし!自ら実証した「口腔ケア」の重要性

【糖尿病専門医】糖尿病を改善したいなら歯科も受診をするべし!自ら実証した「口腔ケア」の重要性

近年の研究で、糖尿病に歯周病が関係していることがわかってきました。しかしながら、医師も歯科医師も、そのことに対する意識が高いとはいえません。当然、患者さんは正しい情報を得られず、「歯周病も糖尿病もなかなか治らない」という状況に置かれているのです。【解説】西田亙(にしだわたる糖尿病内科院長)


血圧と血糖値が正常化!不整脈も消えた!

近年の研究で、糖尿病に歯周病が関係していることがわかってきました。
しかしながら、医師も歯科医師も、そのことに対する意識が高いとはいえません。

当然、患者さんは正しい情報を得られず、「歯周病も糖尿病もなかなか治らない」という状況に置かれているのです。
まず、下の写真を見てください。

上は8年前、2009年の私です。
身長176cmで体重が92kg。血圧も血糖値も高めで、りっぱな糖尿病予備群。

不整脈(脈の乱れ)もあり、まさに「医者の不養生」でした。
顔写真の隣りにあるのが、当時の私の歯です。

細菌の塊である歯垢と、歯垢が固まった歯石がびっしり付着し、歯茎は腫れています。
リンゴをかじると、リンゴが血で染まるほどの歯周病でした。

ちょうどそのころ、愛媛大学と歯科医師会が共同で、ある調査を行いました。
県内の歯科医院20軒で、歯周病患者の血糖値を調べたところ、血糖値が200mg/dL以上の人が3割近くに上ったのです。

この結果から、糖尿病と歯周病の関係に着目した私は、長年放置していた自分自身の歯周病を治療し、日常的な口腔ケアの指導を受けました。
それ以来、きちんと歯磨きをして、歯科医院で定期的に歯をチェックしてもらうようになりました。

すると、まず、体重が落ちていきました。
たった1年で自然に18kgも減量し、74kgになったのです。

高かった血圧と血糖値も下がり、基準値内で収まっています。
糖尿病予備群から、無事抜け出すことができました。

不整脈も消えました。歯周病を治療し、口腔内の清潔を心がけたことで、私はなぜ健康体になれたのでしょうか。

体内の炎症が治まってインスリンの働きが回復

口の中には、1000億から1兆もの細菌が存在するといわれます。
そのうちの悪玉細菌が毒素を生み出し、歯茎を腫らし、血やウミを出し、歯の周りの骨を溶かす原因となります。

これが歯周病です。
炎症を起こした歯茎の組織からは、悪玉ホルモン(炎症性サイトカイン)が分泌されます。

歯茎から出血すると、悪玉細菌や細菌が産生した毒素、さらに悪玉ホルモンが、血流に乗って全身に拡散されるのです。
悪玉ホルモンは、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを弱めます。

体は、より多くのインスリンを作ろうとしますが、この状態が続くとインスリンを作る膵臓が疲弊し、糖尿病を発症します。
もう一つ、歯周病による炎症で味覚障害が起こることも、糖尿病を悪化させます。

味がわからないため、濃い味の物を食べ続けたり、いくら食べても満足できなかったりするのです。
歯周病を治療し、歯垢や歯石を除去することで、口腔内の炎症が治まり、味覚は回復します。

薄味の料理を味わえるようになれば、腹八分で満足でき、血糖値のコントロールが可能になるのです。
もちろん、早急に治療が必要な糖尿病は薬が必要ですが、その場合も歯周病対策を並行して行います。

糖尿病の治療は、歯科との連携が不可欠なのです。
ですから私は、患者さんの歯や歯茎に汚れを見つけたら、すぐに歯科を受診するように伝えます。

歯周病があると、私の処方する薬や治療の効果が、思うように出ないからです。
糖尿病と歯周病が密接に関係することを示す、患者さんの例をご紹介しましょう。

Aさん(42歳・男性)は、ヘモグロビンA1cが10%台になり入院。
問診時に「歯茎からの出血で毎朝、枕が赤く染まる」とわかり、大学病院内の歯科を受診してもらったところ、重度の歯周病でした。

入院当初は、インスリン注射と食事制限を行っていたにもかかわらず、血糖値は200~300mg/dLと高い値で推移していました。
ところが、歯周病を治療すると血糖値が急速に改善し、インスリンの投与量はあれよあれよという間に減少。

退院2日前にはインスリンが不要となり、飲み薬1種類だけになりました。
10%台で推移していたヘモグロビンA1cは、退院後1ヵ月で7.4%まで降下。

体内の炎症状態を示す血清CRPの値は、入院時の0.35mg/dLから、0.16mg/dLに下がっていました(基準値は0.3mg/dL以下)。
歯周病の治療によって炎症が治まって悪玉ホルモンが減り、インスリンの働きが回復したと考えられます。

Aさんは退院後、外来診療に見えたとき、こういいました。
「先生、以前はやたらと脂っこい物や味の濃い物ばかり食べていたのに、歯周病を治したら、野菜や豆のおいしさがわかるようになったよ。すると自然に体重が減ってきたし、なんだか体を動かしたくなって、最近フットサルを始めたんだ」

血糖値が降下した背景に、食事療法と運動療法があることは間違いありませんが、そのきっかけとなったのは歯周病の治療でした。
炎症を解消することで高血糖が改善するとともに、味覚が正常化して、自然と正しい食生活へ導かれるのです。

糖尿病を改善したければ、内科だけでなく、ぜひ歯科も受診して口腔内をきれいにしてください。
歯と歯茎の健康こそが、病気治療の基本です。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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