MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【認知症と睡眠】「アルツハイマー型」を予防する“短時間の昼寝”

【認知症と睡眠】「アルツハイマー型」を予防する“短時間の昼寝”

30分以内の昼寝を実行すると、アルツハイマー型認知症の危険性を大幅に減らすことがわかりました。よく眠ることは、認知症を予防し進行を送らせるうえで、大いに推奨できるのです。ですから、夜よく眠るための努力を地道に続けることが重要です。【解説】長谷川洋(長谷川診療所院長)

ぐっすり眠れば脳の老廃物が排出される!

いうまでもなく、健康を守るためには、睡眠は極めて重要な要素です。
よく眠れない日々が続くと、老若男女を問わず、たちまち生活の質が下がってしまいます。

認知症になると厄介なのは、睡眠障害がしばしば生じることです。
よく知られているのが、夕方から夜にかけて、興奮して異常行動を起こすパターンです。

興奮して徘徊したり奇声を発したりするなど、さまざまな異常行動が見られます。
当然、このような状態になると夜間に十分な睡眠を取れません。

結果、日中にダラダラと居眠りをして過ごすことになり、夜に眠れなくなるという悪循環が起こります。
こうして認知症患者のかたが、完全に昼夜逆転の生活をするようになると、介護する家族にとっては、大きな負担となってしまいます。

一方、うつ病の場合も、しばしば睡眠障害が起こります。
ただし、うつ病の睡眠障害の特徴は、「一度眠っても真夜中や早朝に目覚めてしまう」「目覚めるときにドキドキしたり、息苦しかったり、体が重たかったりする」などの身体症状を伴うことが多くなります。

眠れずに過ごした深夜や早朝は、誰にも相談することができません。
このため、うつ病の患者さんの場合「私なんか生きていてもしかたないんだ」など、1人で誤った判断をする危険性があります。

それが、自殺という最悪の事態を招いてしまうことさえあるのです。
このように、睡眠障害は、認知症の人にとっても、うつ病の人にとっても、併発すると非常に厄介な症状です。

特に、認知症治療の場合、以前から睡眠は重要視されてきました。
睡眠をよく取って体調を整え、生活習慣病があるならできるだけ改善するよう努めること。

これは、認知症の予防に役立つだけでなく、既になってしまった場合でも、進行を遅らせるうえでのポイントです。
しかも、近年の認知症研究の進展によって、睡眠が、認知症と深く関連のあることがわかってきました。

認知症の6~7割を占める、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるのが、「アミロイドβ」と呼ばれる脳の老廃物です。
加齢に伴って、アミロイドβが脳内に多量に蓄積することが、神経細胞を死に追いやり、脳の萎縮を引き起こすと考えられています。

アミロイドβは、加齢によって徐々に蓄積されますが、一方で、脳から排出されてもいます。
つまり、アミロイドβの排出がスムーズに行われているなら、脳内に多量の蓄積が起こらず、認知症を発症しにくくなるのです。

先日、あるテレビ番組でも紹介されていましたが、このアミロイドβの排出を進める条件こそ、「睡眠の質」だと判明しています。
つまり、深くぐっすりと眠ることが、アミロイドβを減らして、認知症を防ぐことに役立つのです。

ちなみに、推奨される睡眠時間は、6~8時間です。

60分以上の昼寝は逆効果寝過ぎないように注意!

このように、よく眠ることは、認知症を予防し進行を送らせるうえで、大いに推奨できるのです。
ですから、夜よく眠るための努力を地道に続けることが重要です。

例えば、朝起きたらウォーキングなど適度な運動をして、日の光を浴びて体内時計を調節するといいでしょう。
さらに、お勧めしたいのが「昼寝」です。かつては、「昼に寝てしまうと、夜になって眠れなくなる」という理由で、昼寝は控えるようにいわれたものです。

ところが、最近の研究では、短時間の昼寝をすると、日中の眠気を防げるだけでなく、不眠症を予防・改善するうえで効果があると考えられています。
日中、ずっとうつらうつらするのを避けるためにも、きっちりと短い時間昼寝をして、頭の中をスッキリとさせることが望ましいのです。

昼間の眠気が解消できれば、日中はより活動的に動けます。
そうなれば自然と疲労がたまり、夜、スムーズに眠りにつくことができるでしょう。

短時間の昼寝が、認知症の予防に役立つことは、以前から研究報告でも示されています。
2000年に、国立精神神経センターが行った疫学研究があります。

これは、アルツハイマー型認知症の患者さん337名と、その配偶者260名の間で、昼寝の習慣を比較調査したものです。
それによると、30分以内の昼寝を実行すると、アルツハイマー型認知症の危険性を大幅に減らすことがわかりました。

ただし、30分程度の昼寝であれば、危険性は明らかに低くなりますが、60分以上昼寝をしてしまうと、逆に、危険性が高まるとされています。
昼寝は、認知症を予防するために非常に役立ちますが、寝過ぎないように注意して、30分くらいを心がけましょう。

年配のかたは、昼寝をすることに罪悪感を持つ傾向があるようですが、認知症を予防・改善するために、昼寝を毎日の習慣にしてください。

昼寝を習慣にしよう

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
納豆はコレステロールや脂質の含有量が少なく、糖尿病や脂質異常症を引き起こす可能性が低い優れた食材です。ナットウキナーゼには、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし血栓を作りにくくする効果があり、動脈硬化を予防します。アマニ油と摂ると血管若返りに効果が期待できます【解説】広川慶裕(認知症予防医・ひろかわクリニック院長)
認知症が進行すると、自分がいる場所がどこで、話している相手は誰かなど、自分の置かれている状況の見当がつきにくくなってきます。これを「見当識障害」といいます。現実見当識訓練は、脳に残っている機能に働きかけて現実見当識を高め、認知症の進行を遅らせることを目指します。【解説】石井映幸(ふれあい鶴見ホスピタル副院長)
近年、記憶と関連の深い脳の海馬などでは、新しい細胞が毎日生まれていると判明しています。ですから、脳の萎縮が進んでも、それをカバーする脳内の環境作りは十分可能だといえます。今からでも遅くはありません。耳もみを早速実践して、脳の血流を活発にしてください。【解説】広川慶裕(ひろかわクリニック院長)
片足立ちは、有酸素運動とバランス運動を兼ねています。片足立ちを1分続けることは、50分歩くのとほぼ同じ運動量になります。有酸素運動が認知症予防に有効であることは、多くの研究データが示すところです。また、転倒予防という点からも優れています。【解説】長谷川嘉哉(土岐内科クリニック院長・医療法人ブレイングループ理事長)
食後2時間血糖値の高い人ほど、アルツハイマー病の発症リスクが高く、中年期に糖尿病になって、病歴の長い人のほうが、海馬の萎縮が強いことも判明しました。したがって、食事の最初に野菜をたっぷり食べ、食後の血糖値が上がらないようにすることも大事です。【解説】二宮利治(九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生分野教授)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル