ぐっすり眠れば脳の老廃物が排出される!
いうまでもなく、健康を守るためには、睡眠は極めて重要な要素です。
よく眠れない日々が続くと、老若男女を問わず、たちまち生活の質が下がってしまいます。
認知症になると厄介なのは、睡眠障害がしばしば生じることです。
よく知られているのが、夕方から夜にかけて、興奮して異常行動を起こすパターンです。
興奮して徘徊したり奇声を発したりするなど、さまざまな異常行動が見られます。
当然、このような状態になると夜間に十分な睡眠を取れません。
結果、日中にダラダラと居眠りをして過ごすことになり、夜に眠れなくなるという悪循環が起こります。
こうして認知症患者のかたが、完全に昼夜逆転の生活をするようになると、介護する家族にとっては、大きな負担となってしまいます。
一方、うつ病の場合も、しばしば睡眠障害が起こります。
ただし、うつ病の睡眠障害の特徴は、「一度眠っても真夜中や早朝に目覚めてしまう」「目覚めるときにドキドキしたり、息苦しかったり、体が重たかったりする」などの身体症状を伴うことが多くなります。
眠れずに過ごした深夜や早朝は、誰にも相談することができません。
このため、うつ病の患者さんの場合「私なんか生きていてもしかたないんだ」など、1人で誤った判断をする危険性があります。
それが、自殺という最悪の事態を招いてしまうことさえあるのです。
このように、睡眠障害は、認知症の人にとっても、うつ病の人にとっても、併発すると非常に厄介な症状です。
特に、認知症治療の場合、以前から睡眠は重要視されてきました。
睡眠をよく取って体調を整え、生活習慣病があるならできるだけ改善するよう努めること。
これは、認知症の予防に役立つだけでなく、既になってしまった場合でも、進行を遅らせるうえでのポイントです。
しかも、近年の認知症研究の進展によって、睡眠が、認知症と深く関連のあることがわかってきました。
認知症の6~7割を占める、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるのが、「アミロイドβ」と呼ばれる脳の老廃物です。
加齢に伴って、アミロイドβが脳内に多量に蓄積することが、神経細胞を死に追いやり、脳の萎縮を引き起こすと考えられています。
アミロイドβは、加齢によって徐々に蓄積されますが、一方で、脳から排出されてもいます。
つまり、アミロイドβの排出がスムーズに行われているなら、脳内に多量の蓄積が起こらず、認知症を発症しにくくなるのです。
先日、あるテレビ番組でも紹介されていましたが、このアミロイドβの排出を進める条件こそ、「睡眠の質」だと判明しています。
つまり、深くぐっすりと眠ることが、アミロイドβを減らして、認知症を防ぐことに役立つのです。
ちなみに、推奨される睡眠時間は、6~8時間です。
60分以上の昼寝は逆効果寝過ぎないように注意!
このように、よく眠ることは、認知症を予防し進行を送らせるうえで、大いに推奨できるのです。
ですから、夜よく眠るための努力を地道に続けることが重要です。
例えば、朝起きたらウォーキングなど適度な運動をして、日の光を浴びて体内時計を調節するといいでしょう。
さらに、お勧めしたいのが「昼寝」です。かつては、「昼に寝てしまうと、夜になって眠れなくなる」という理由で、昼寝は控えるようにいわれたものです。
ところが、最近の研究では、短時間の昼寝をすると、日中の眠気を防げるだけでなく、不眠症を予防・改善するうえで効果があると考えられています。
日中、ずっとうつらうつらするのを避けるためにも、きっちりと短い時間昼寝をして、頭の中をスッキリとさせることが望ましいのです。
昼間の眠気が解消できれば、日中はより活動的に動けます。
そうなれば自然と疲労がたまり、夜、スムーズに眠りにつくことができるでしょう。
短時間の昼寝が、認知症の予防に役立つことは、以前から研究報告でも示されています。
2000年に、国立精神神経センターが行った疫学研究があります。
これは、アルツハイマー型認知症の患者さん337名と、その配偶者260名の間で、昼寝の習慣を比較調査したものです。
それによると、30分以内の昼寝を実行すると、アルツハイマー型認知症の危険性を大幅に減らすことがわかりました。
ただし、30分程度の昼寝であれば、危険性は明らかに低くなりますが、60分以上昼寝をしてしまうと、逆に、危険性が高まるとされています。
昼寝は、認知症を予防するために非常に役立ちますが、寝過ぎないように注意して、30分くらいを心がけましょう。
年配のかたは、昼寝をすることに罪悪感を持つ傾向があるようですが、認知症を予防・改善するために、昼寝を毎日の習慣にしてください。
昼寝を習慣にしよう
