のどの詰まり感やタン、セキに効く!
自然界には、薬としての効力を持った動物や植物、菌類、鉱物が存在し、これらを総称して生薬といいます。
そのうち、漢方医学に基づいて処方される薬を、漢方薬といいます。
らっきょうも生薬の一つであり、漢方薬として用いられる場合、薤白と呼ばれます。
薤白に「韮」という字が含まれているとおり、らっきょうはニラやネギ、ニンニクなどの仲間で、特有のにおいと辛みがあるのが特徴です。
この鼻をつくにおいと辛みは、「アリシン」という成分によるものです。
アリシンには、食欲増進や消化吸収を助ける働きや、血液をサラサラにして血行を促す働き、菌を殺して免疫力を高める働きがあるといわれています。
さて、漢方医学には、あらゆるものを五つに分類し、同じグループに属するものを関連づけて捉える「五行」という考え方があります。
そして、食材の味覚も五つに分類して考え、これを「五味」といいます。
この考えに則と、らっきょうは「苦」と「辛」に分類されます。
これをさらに各臓器に関連づけると、「苦」は心臓と小腸、「辛」は肺と大腸と深く関係しているのです。
さらに、「苦」と「辛」にはどちらも体を温める働きがあります。
そのため、らっきょうは漢方医学において、体の冷えが原因で生じる症状に対し使用されます。
体から冷えを取り除くためには、気の巡りをよくすることも必要です。
気とは、東洋医学でいう目に見えない生命エネルギーのことで、常に体内で流動していると考えられています。
しかし、この気の巡りが滞ることがあります。その状態を「気滞」といいます。
胸やおなかに張りや痛みがあったり、のどに詰まり感を感じたりするかたは、気滞の状態といっていいでしょう。
らっきょうは、狭心症など、主に胸に圧迫感や刺すような痛みを感じる症状や、呼吸が困難になったときに薬として使用されますが、気滞の状態を改善するのにも有効でしょう。
また、冷えによって水分代謝が悪くなると、のどにタンがたまり、セキが出やすくなりますが、そういった症状にも勧められます。
胃腸の不調にも効きますが、食べ過ぎには注意が必要です。
らっきょうは漢方の生薬としても使われる

刺激やにおいが軽減し食べやすくなる!
毎年、暑くて湿度の高い梅雨の季節がやってきます。
梅雨の時期に体調が悪くなることが多いのは、体内に「湿」が入り、それがたまった状態になるためです。
冷房の中で長時間過ごしたり、冷たい物をとり過ぎたりしても、体が冷えて水分代謝が悪くなり、「湿」がたまります。
文字からイメージされるとおり、「湿」とはジメジメとした、体がだるくて重たくなった状態を指します。
それを予防・改善するには、夏でも体を温める食べ物をとって、体内の「湿」を発散させる必要があるのです。
私自身、夏に冷房の中でずっと仕事をしていると、体がだるくなることが多々あります。
そんなときは、カレーとらっきょうを食べるようにしています。
すると、タンが排出されて胸がスッキリとし、体のだるさも解消するのです。
ただし、カゼによるタンやセキで胸が苦しい場合、らっきょうのような食べ物は、少し注意が必要でしょう。
のどの痛みがあると、辛みが刺激となり、症状が一時的に重くなることがあるためです。
ちなみに、らっきょうを長時間蒸し焼きにした「黒らっきょう」は、とてもいいらっきょうの摂取方法だと思います。
加熱すると甘みが出てくるので、のどへの刺激が少なくなります。
そのうえ、においも軽減して食べやすくなるので、多くの量を摂取することができるでしょう。
さらに、漢方医学的にも評価できます。
先ほどの五味の考え方でいうと、「苦」と「辛」のほかに「甘」にも当てはまるからです。
「甘」は、臓器では脾と胃に関連していて、消化吸収を高め、滋養作用があります。
滋養強壮パワーの強い食べ物の代表といえばニンニクですが、ニンニクが苦手な人が、かわりにらっきょうを食べるのもオススメです。
冷房の中で過ごす機会が増える夏は、案外体が冷えやすいものです。
体を冷えから守る食材としても、大いに活用してください。