血糖コントロール【骨ホルモンの効果】"かかと落とし"でオステオカルシン分泌

血糖コントロール【骨ホルモンの効果】"かかと落とし"でオステオカルシン分泌

2007年に骨から作られるたんぱく質の一種「オステオカルシン」が、膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促進し、血糖をコントロールする(血糖値を下げる)と発表されたのです。通称、「骨ホルモン」とも呼ばれます。【解説】太田博明(国際医療福祉大学教授・山王メディカルセンター女性医療センター長)


臓器の働きを活性化する新たな役割が判明

私たちの体は、およそ200個の骨で構成されています。
目には見えませんが、肌や髪と並んで、身近に感じられる器官の一つではないでしょうか。

では、骨がなんのためにあるのか、皆さんはご存じですか。
知っているようで知らない、骨の秘密に迫ってみましょう。

骨は、骨格として全身を支える「支持作用」、脳や内臓などの重要な器官を保護している「保護作用」、関節を支点にして体を動かす「運動作用」など、私たちが生きていくうえで欠かせない役割を持っています。
しかし、骨の役割はこれだけではありません。

まずは、「貯蔵作用」です。
骨は、カルシウムやリンを主体に、ナトリウム、カリウムなども貯蔵されており、必要に応じて、血液中へと放出しています。

さらに、「造血作用」もあります。
骨の内部にある骨髄では、赤血球や白血球、血小板が産生され、新しい血液を作っているのです。

そして、2007年にアメリカ・コロンビア大学遺伝子発達学部門のジェラルド・カーセンティ教授による研究発表が、世界中を驚かせました。
骨から作られる、たんぱく質の一種が、膵臓に働きかけてインスリンの分泌を促進し、血糖をコントロールする(血糖値を下げる)というのです。

そのたんぱく質こそが、「オステオカルシン」です。
通称、「骨ホルモン」とも呼ばれます。

骨ホルモンの働きは、血糖のコントロールにとどまりません。
その後の研究で、次のような臓器の働きを活性化することがわかっています。

●脳……神経細胞の結合を維持させて、認知・記憶機能を改善する。
●心臓・血管……動脈硬化を防いで、心筋梗塞などの血管性疾患を予防する。
●肝臓……肝細胞の代謝を上げて、肝機能を向上させる。
●腎臓……骨で作られているFGF23というホルモンが、腎機能を改善する。
●小腸……糖などの栄養吸収を促進する。
●精巣……男性ホルモン(テストステロン)の分泌を増加させ、生殖能力を高める。
●皮膚……皮膚組織と同じ種類のコラーゲンが、骨で作られるため、シワの改善に役立つ。

つまり、骨は、臓器へ情報を伝える発信機であり、臓器の働きを活性化する、という新たな役割が判明したのです。
骨ホルモンの研究は、まだまだ発展途上にあります。

今後の研究によって、ほかの臓器にも好影響を与えることがわかってくるかもしれません。
これらの事実は、私も出演し解説した、2017年の2月に放送されたNHKの『ガッテン!』で紹介され、大きな反響を呼びました。

認知症、肝臓病、腎臓病、心筋梗塞の予防にも期待

では、骨ホルモンについて、もう少し詳しくご説明しましょう。
私たちの骨は、全部で三つの細胞で構成されています。

全体の90~95%を占めている骨細胞、新しい骨を作る骨芽細胞、古い骨を壊す破骨細胞です。
意外に知られていませんが、骨は、皮膚や髪と同じように、日々、新陳代謝(ターンオーバー)をくり返しています。

❶破骨細胞が古い骨を溶かして、穴(凹み)を作る(骨吸収)。
❷破骨細胞が溶かした穴に、骨芽細胞が集まってきて、新しい骨を作る(骨形成)。
❸役目を終えた骨芽細胞が、骨に埋没して骨細胞に変化する。

骨は約5ヵ月かけて、このサイクルを通じて生まれ変わっています。
そして、骨ホルモンの分泌は、骨のターンオーバーに深い関係があるのです。

骨ホルモンは、唯一、骨芽細胞から分泌されます。
古い骨を壊して新しい骨を作ろうと、骨芽細胞の働きが活発になったときに、骨ホルモンが分泌されやすくなるわけです。

つまり、骨ホルモンの分泌を増やすには、骨の代謝を活発にしなければなりません。
そのためには、食事などで栄養素を摂取するだけでは、あまり効果がありません。

いちばん効果があるのは、骨が外部からの刺激を受けること、つまり運動です。
体を動かすと、その刺激(振動)は骨にも伝わります。

すると、骨の大部分を占める骨細胞から「骨を壊せ」という情報が破骨細胞に届きます。
そして、破骨細胞が骨を溶かし、そこに骨芽細胞が集まってくる、という前述した骨のターンオーバーが始まるわけです。

運動といっても、大げさに体を動かす必要はありません。
軽いウォーキングやジャンプでも、十分に効果があります。

とはいえ、それさえもつらい、というかたも少なくないことでしょう。
そこで、私がお勧めしているのが「かかと落とし」です。

足を肩幅に開き、かかとを上げて、そのままトントンと地面に落とすだけ。
これなら、誰にでも手軽に実行できます。

バランスに不安がある人は、イスの背やテーブルなどにつかまって実行してもかまいません。
実際に試してもらえばわかるように、地面に打ちつけた振動が、かかとから頭まで、全身に伝わることを感じられるはずです。

とても簡単な体操ですが、骨への刺激は体重の約3倍になります。
骨の代謝を促すには、十分な刺激です。

前述したテレビ番組では、ヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖状態がわかる指標)の高かった6名に、1日30回のかかと落としを1週間続けてもらう、という実験を行いました。

その結果、6名中5名の骨ホルモンの分泌が上昇。
さらに、全員のヘモグロビンA1cが低下したのです。

ただし、少数例のデータですので、今後の検討が必要です。
骨ホルモンは、血糖値を下げるだけでなく、全身の臓器に働きかけて、私たちの健康維持に役立ちます。

認知症や肝臓病、腎臓病、心筋梗塞などの予防も期待できるのです。
また、肌のたるみやシワの防止にも役立つので、見た目が若返る可能性もあります。

もちろん、骨ホルモンの分泌が増えれば、骨密度が高まって、骨粗鬆症の予防・改善にもつながります。
時間が空いたときには、かかとを上げてトントンと落とす。

健康で若々しい体を維持するためにも、ぜひ、かかと落としを習慣にしてください。

太田博明
1970年、慶應義塾大学医学部卒業。1980年、米国ラ・ホーヤ癌研究所留学、2000年、東京女子医科大学産婦人科主任教授などを経て、2010年、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授、山王メディカルセンター女性医療センター長となる。2015年に日本骨粗鬆症学会賞受賞。著書に『骨は若返る!骨粗しょう症は防げる!治る!』(さくら舎)など。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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