ゴマ酢はモンゴルにルーツを持つ民間療法

健康の要である胃腸の働きをよくする
「ゴマ酢」は、黒ゴマとトウガラシを酢に漬けたもので、モンゴルにルーツを持つ民間療法です。
この組み合わせを聞いたとき、私は「なるほど!」と、感心しました。
ゴマは油(脂肪酸)の多い食品、酢は酸味でさっぱりさせる食品、トウガラシは辛くて刺激の強い食品です。
また、五味のうち、三味をそろえています。
五味とは酸、苦、甘、辛、鹹(塩辛い味)の五つの味のことで、ゴマは甘、酢は酸、トウガラシは辛に当たります。
このように、性質も味も異なる三つの食品の組み合わせは、幅広い効能をもたらします。
その中で、私が真っ先に思ったのは、「これこそ、現代人が必要としている食品だ」ということでした。
今の日本人は、自由になんでもたくさん食べているのに、疲れています。というのも、冷たい飲食物をとることが多く、胃腸が冷えているからです。
胃腸が冷えると、いくら栄養のある物をとっても、うまく消化・吸収されません。そのため疲れやすく、太っているのに元気がないのです。
しかしゴマ酢をとると、食欲が出て、胃腸の働きがよくなります。これは、トウガラシによって胃腸の血流がよくなり、消化・吸収が促されるからです。
加えて酢は、水分のとりすぎで薄まった胃酸の働きを整えます。また、ゴマは、トウガラシや酢の刺激から胃壁を守る働きがあります。
食べることは、呼吸の次に大事です。食べた物の栄養が十分に吸収されれば、全身の細胞に栄養が行き渡り、細胞が活性化して、元気になります。
それこそが健康を維持する基本だと、私は思っています。
2型糖尿病の予防にもお勧め
黒ゴマも酢もトウガラシも、古くから健康によい食品として使われてきました。
ゴマは、五臓(東洋医学でいう内臓の分類。心・肺・肝・脾・腎に分けられる)のうちの腎を助けて生命エネルギーを高める作用、酢は血液をサラサラにし、代謝を整えて疲れを取る作用、トウガラシには血流を促進して代謝を高める作用などがあります。
こうした働きが組み合わさることにより、次のような効果も期待できます。
①疲労回復
ゴマ酢の材料である酢とトウガラシには、どちらも血流改善効果があり、体内の疲労物質を速やかに流してくれます。加えて、ゴマにも毒(老廃物)を散らす作用があるので、より疲労回復効果がアップします。
②老化防止
スムーズに疲労が回復すれば、疲れがたまらず元気でいられて、老化も予防できます。特に、植物の種であるゴマは、腎を補って生命力を強化するので、腎虚(腎の働きの衰え)による老化を防ぐだけでなく、若返り効果も期待できます。
③高血圧や動脈硬化の予防・改善
ストレスなどで血管が硬くなると、血圧が上がりやすくなります。酢は肝に働いてストレスを発散させて、ストレス性の高血圧を防ぎます。また、血液をサラサラにするので、高血圧、動脈硬化の予防や改善に有効です。
ゴマは、動脈壁に栄養を与えている微小血管の血流をよくして、動脈を柔らかくします。
④免疫力の強化
免疫は、自分ではないものを見つけて排除するシステムです。その排除すべきところに免疫細胞を届けるには、血流が大事です。
トウガラシには、血流を促進する作用があります。また酢は、免疫の働きをじゃまする不要な油の代謝を高め、ゴマは生命エネルギーを高めることによって、免疫を強化します。
⑤耳鳴りやめまいの予防・改善
漢方では、ゴマは腎、酢は肝を補う食品です。腎は耳、骨、髪や泌尿器、肝は目や精神状態をつかさどるので、耳鳴り、難聴、めまい、骨粗鬆症(カルシウムの不足によって骨がもろくなる病気)、夜間頻尿、白髪、白内障(目のレンズに相当する水晶体が濁る病気)、老眼などの予防・改善にも有効です。
また、ストレスによる過食にブレーキをかけますから、過食によって起こる2型糖尿病の予防にもいいでしょう。
⑥こむら返りや貧血の予防・改善
ゴマ酢には、血流をよくする作用があるので、筋肉の酸素不足で起こるこむら返り、血液不足による貧血なども防げます。
ゴマ酢は、漬け酢を食後にそのまま飲むのが基本ですが、酢やトウガラシの刺激が気になる人は、40℃程度のお湯で薄めて飲んでもいいでしょう。お湯で薄めれば、刺激が和らぎ、胃腸を冷やしません。
胃の弱い人は、少なめの量から試してみて、様子を見てください。ただし、逆流性食道炎のある人は、無理して飲まないほうがいいでしょう。
残ったゴマとトウガラシも、捨てずにぜひ食べてください。トウガラシは細かく刻み、ゴマと一緒にラーメンやスープ、みそ汁などに入れると、おいしく食べられます。

「現代人にぴったり」と井上先生