耳鳴りの音によって原因が異なる
あなたの耳鳴りは、どんな音でしょうか?
「ジー」とか「ブーン」といったボイラー音のような低い音の場合は、東洋医学でいうところの「腎」の弱りが考えられます。腎とは、腎臓だけでなく、副腎や血液やリンパ(体内の老廃物や毒素、余分な水分を運び出す体液)の循環も含みます。
また、「ピー」「キーン」という高音の耳鳴りなら、肝臓の機能の低下が、そして「ザァー」「サァー」といった風のような音は、胃腸の機能低下がかかわっていることが多いようです。
私は、鍼灸をはじめ、さまざまな東洋医学を治療に導入しています。患者さんは、西洋医学では治りにくい病気や症状の人がほとんどで、全国からお越しになっています。
なかでも、耳鳴り・難聴の症例は500例以上に上り、高い治療効果を上げてきました。
東洋医学では、耳鳴りや難聴は、内臓の機能低下が影響していると考えます。すぐにわかる症状としては、血流が悪く、体が冷えており、人によってはむくみや高血圧があります。
また、寝不足や体を酷使すること、そして老化も、内臓、特に腎にダメージを与えます。
ただ、こうした冷えや疲労からくる耳鳴りや難聴であれば、生活習慣を見直して、循環をよくすることで、比較的、改善しやすいものです。
また、加齢による難聴も「年だから」とあきらめる必要はなく、意外と簡単に治ることが多いものです。
耳は腎の出先器官。こすれば腎もよくなる
そこで今回は、内臓の中でも特に「腎」の弱りからくる耳鳴りに著効のセルフケア、「耳こすり」をご紹介しましょう。
やり方は、人さし指と中指を耳の後ろに、薬指と小指を耳の前に当て、耳を挟んだ状態で上下にさするだけです。
耳こすりのやり方
耳鳴りや難聴が現れているのが片方であっても、耳こすりは両方行ってください。
一方が聞こえにくいと、それを補おうとして、もう片方の耳にも大きな負担がかかっているからです。
東洋医学では、「耳は腎の出先器官」といわれているほど、耳と腎は関係性の深い場所です。つまり、耳の循環をよくすることは、腎臓を元気にすることにもつながります。
もちろん、肝臓や胃腸の弱りが原因の耳鳴りにも、耳こすりで耳周辺のツボを刺激し、血流をよくすることは有効です。

突発性難聴が3日で治ったケースも
では、耳こすりの症例をご紹介しましょう。
80歳の男性Aさんは、腎臓がんの手術をした3日後から、突発性難聴を発症しました。退院後、当院に来られたのですが、当初、回復には相当、時間がかかるだろうと思っていました。 ところが、治療と並行して耳こすりを行ってもらったところ、3日後には回復し、元どおり聞こえるようになったのです。
以後、5年後に天寿を全うされるまで、耳に不自由することなく過ごされました。
そのほか、耳鳴りは、気温が下がる朝方にひどくなることが多いのですが、「朝、耳こすりを行うと耳鳴りの音が小さくなる」という声も多数いただいています。
実は、この耳こすりは、私が祖父から教えてもらった方法です。祖父は60歳のときから毎日耳こすりを行い、94歳で天寿を全うするまで耳が遠くなることは一切ありませんでした。
60代や70代の若いうちから耳こすりを毎日行えば、耳が遠くなるのを予防する効果もあると私は考えており、私自身、毎日実践しています。
そのほか、首や肩のこりがある人も、ぜひ実践してください。耳鳴りや難聴の原因は、内臓の弱りだけでなく、首周りの筋肉が硬くなることで、耳周りの神経が圧迫されることも一因だと思われるからです。
耳の症状を改善し、「腎」を活性化する耳こすりを、ぜひお試しください。
解説者のプロフィール

藤井清史(ふじい・きよし)
●呑気堂Fujii鍼灸治療院
京都府亀岡市篠町柏原町頭8-4
TEL 0771-23-3440
http://nonkido.jp/
1968年北海道生まれ。鍼灸師。
18歳のときに大病にかかり、19歳のときに「余命いくばくもなし」と宣告を受ける。
鍼灸および玄米食養に出合い、九死に一生を得る。
以後、「自分のような人の手助けをしたい」という一心から鍼灸の道を歩み始める。
「病の原因は心にある」をモットーに、開業当初よりさまざまな治療法を導入し、日本全国から難病を抱えた患者が来院するようになる。
著書『耳鳴・難聴・めまいは治ります!』(白順社)が好評発売中。
力を入れる必要はありません。上下にこすって往復して1回とカウントし、100回さすりましょう。これを朝晩1日2回行います。
コツは手のひらをピタリと肌に当てることです。すると、耳の前後にあるツボを刺激することができます(図参照)。
これらのツボは、耳鳴りや難聴に有効なだけでなく、リンパや血液の流れも改善します。また、あごの下までこすることで、耳周辺だけでなく、顔や首の血流までよくなります。