「毛穴の汚れが薄毛の原因」は完全な迷信!
薄毛に悩んでおられるかたに、私が専門の皮膚科医としてお勧めしている方法があります。
それは、有効成分をたっぷり含んだ育毛剤や育毛シャンプー、などといった、高価な製品ではありません。
実は、そういった物をいっさい使わず、お湯だけで洗髪すること、すなわち「お湯洗髪」をお勧めしているのです。
これまでは、頭皮を清潔にすることが、髪の健康にもつながるといわれてきました。
ところが、この清潔志向そのものが、実は、髪と頭皮にかえって悪影響を及ぼすことがわかってきたのです。
皆さんは、「ハゲや薄毛の原因は毛穴の汚れ」という宣伝文句を耳にしたことがあるでしょう。
実はこれは、完全な迷信なのです。
もちろん、過剰な皮脂やはがれた角質が毛穴に蓄積し、そこに細菌が繁殖すれば脱毛が起こるケースも、ごくまれにはあるでしょう。
しかし、抜け毛を気にして過剰に洗髪する→頭皮が乾燥してしまい、肌を守るはずの角質がはがれる→フケ(はがれた角質)が増えて毛穴にたまり脱毛を引き起こす、というケースのほうがずっと多いのです。
それだけではありません。
シャンプーの成分自体に大きな問題があります。
シャンプーには、脂を浮かせて取り除くための「界面活性剤」という成分が入っています。
これは、硫酸系とアミノ酸系の二つに大きく分けられます。
硫酸系のシャンプーに含まれる主な成分には、スルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどがあります。
もちろん、これらの成分は、人体に悪影響を及ぼさない程度まで薄めて使用されています。
硫酸系は、アミノ酸系に比べて洗浄力が強く、泡立ちもよいという特長もあります。
しかし、薄めてあるとはいえ、そもそもが硫酸です。
硫酸は、たんぱく質を溶かす作用があり、使い過ぎると頭皮を守る角質層を溶かす恐れがあります。
たとえ、毛穴がキレイになっても、角質層がボロボロになってしまっては元も子もありません。
それが原因で脱毛が起こるからです。
非常に残念なことに、市販されているシャンプーの大半は、この硫酸系です。
現在、皆さんのご自宅にあるシャンプーに、硫酸系の成分が入っていたら、使用を控えることを考えてみてもいいでしょう。
一方のアミノ酸系は、植物由来の合成成分が中心です。
髪に優しくて、爽快感が強いというメリットはありますが、泡立ちや脂を切る効果はいまひとつ。
また、どこのスーパーでも販売しているわけではなく、価格が高いという短所もあります。
薄毛の改善にお湯だけの洗髪がお勧め

かゆみも髪のベタつき感もしだいに解消する
そこで、お勧めしたいのが、お湯洗髪なのです。
お湯洗髪とは、シャンプーをいっさい使わず、お湯だけでしっかり流すだけの洗髪法です。
とはいえ、「お湯だけで汚れが落ちるの?」と思われるかたもいらっしゃるでしょう。
確かに、慣れないうちは不快かもしれません。
今まで、毎日シャンプーを使ってきたかたは、その強い洗浄力で過剰に皮脂を洗い流していました。
すると、皮脂腺が、常に足りない皮脂を補おうとして活発になります。
シャンプーを使うのをやめると、最初は皮脂腺からどんどん皮脂が分泌されるので、髪がベタベタになります。
しかし、それでもお湯洗髪を続けると、皮脂腺からの分泌量が減っていきます。
個人差がありますが、だいたい1ヵ月くらいで不快な症状は落ち着いてくるでしょう。
もし、「お湯だけで髪を洗うのは、やっぱり気持ち悪い」というかたは、シャンプーのかわりに、固形せっけんを使ってみてください。
ただし、固形せっけんは、洗い終わったときに髪がサラサラになりません。
それが気になるかたには、アミノ酸系のシャンプーをお勧めします。
アミノ酸系のシャンプーは、硫酸系のシャンプーのようにいつまでもヌルヌルして不快に感じることがなく、髪へのダメージも少ないのです。
質のよいアミノ酸系のシャンプーは、それだけで髪をサラサラにする効果があります。
リンスやトリートメントの必要はなくなります。
逆に、そうした物を使わないと、髪がゴワゴワになってしまうとしたら、それはあまりお勧めできないシャンプーということになります。
私自身、試しにお湯洗髪を行ってみたことがあります。
4日めくらいまではかゆみが残っていましたが、それ以降、かゆみは解消しました。
髪がベタつく感じは、2週間ほどでなくなりました。
ただし、シャンプーしたときのような、ふわふわサラサラ感がなく、まとまってペタッとした髪になってしまうのは難点です。
現在は、基本的にお湯洗髪を実践し、3日に1度くらい自分が開発した、漢方生薬配合のシャンプーで洗っています。
結果として、以前と比べて、明らかに抜け毛は減っています。
シャンプーで発毛、育毛はできなくても、抜け毛が減れば、薄毛は改善していきます。
いちばん大事なのは、頭皮を傷めないことです。
そのために、お湯洗髪をしたり、アミノ酸系シャンプーを使ったりするなど、ご自分に合った方法を選んでください。
解説者のプロフィール

荒浪暁彦
あらなみクリニック総院長。慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師。浜松医科大学卒業後、同大皮膚科に入局。静岡市立清水病院、富士宮市立病院などを経て、現在に至る。著書に『最強!の毛髪再生医療』、『さらば薄毛、最強の自毛復活プロジェクト!』、『人の寿命は「肌」でわかる、「腸」で決まる』(すべてワニブックス)などがある。
●あらなみクリニック
http://www.bihada-clinic.com/