解説者のプロフィール
血栓を溶かす作用は薬より強いといわれる
血液をサラサラにして、血栓(血の塊)ができるのを予防する食品は、数多くあります。
タマネギやニンニク、イワシやサバなど青魚がよく知られています。
しかし、できてしまった血栓を溶かす食品は、現在のところ、納豆だけしか確認されていません。
納豆の特徴であるネバネバには、「ナットウキナーゼ」という酵素が含まれています。
ナットウキナーゼには、血栓の主成分であるフィブリンというたんぱく質を溶かす働きがあります。
そもそも、納豆菌が大豆のたんぱく質を分解し、発酵することで納豆ができるのですから、ナットウキナーゼが血栓を溶解するのも、十分理にかなっています。
私たちの体は、皮膚に傷がつくと、血液を固めてかさぶたを作り、傷口を修復します。
同様に、血管内に傷ができると、血栓によって傷口が修復されます。
健康な状態なら、傷を修復したあとに、血栓を溶かす酵素が分泌されます。
ところが、加齢やストレスにより、この機能が衰えると、血栓が溶けきれずに残ってしまうのです。
脳や心臓の血管に血栓が詰まると、脳梗塞や心筋梗塞を発症します。
また、血栓が血管内に詰まったり、血液自体がドロドロになったりすると、流れが悪くなり、血圧は上昇します。
ですから、血栓溶解を促す栄養素を積極的にとり入れることが重要なのです。
血管内の血栓が溶ければ、当然ながら血液の流れがよくなります。
そのため、高血圧の改善も十分期待できるのです。
ナットウキナーゼは、1980年に日本人研究者が発見し、その血栓溶解作用が注目されて以来、世界中で研究が進められています。
なかには、ナットウキナーゼの作用は、脳梗塞などの緊急時に用いられる血栓溶解薬(t‐PA)よりも強いという報告もあります。
血圧を上げる酵素の働きを抑える!
私もかつて、ナットウキナーゼの血栓溶解効果に関する実験を行いました。
人工的に培養した血栓成分にナットウキナーゼを投入したところ、わずか3時間ほどで、血栓成分が溶ける様子を確認できたのです。
ナットウキナーゼの健康効果は、血栓を直接溶かすだけではありません。
近年の研究では、血栓を溶解する酵素を作る細胞を増やす効果も判明しました。
さらに、血圧を上昇させる酵素の働きを抑える作用も、わかってきたのです。
健康のためには積極的に納豆をとりたいものですが、その粘り気や、独特の風味が苦手という人もいるでしょう。
また、症状によっては、納豆の摂取が向かないケースもあります。
例えば、納豆にはプリン体が多いため、痛風の患者さんにはあまりお勧めできません。
カリウムが豊富なので、腎臓病の人も、避けたほうがよいでしょう。
なかでも注意が必要なのは、血栓症の既往歴があり、ワルファリン(商品名・ワーファリンなど)を処方されている人です。
ワルファリンは、血液を固まりにくくする薬です。
納豆に多く含まれるビタミンK2は、このワルファリンの働きを弱めてしまうのです。
納豆を控えたほうがいい場合は、ナットウキナーゼの健康食品を利用する方法もあります。
ナットウキナーゼを抽出した健康食品なら、ビタミンK2が除去されているので、ワルファリンの働きが弱まることはありません。
それは、私が以前に行った二重盲検法による臨床試験でも実証されています。
協力してもらったのは、ワルファリンを処方されている心臓血管病の患者さん60人です。
薬と並行して、ナットウキナーゼ単体の健康食品を摂取してもらいました。
結果として、ワルファリンの作用は阻害されることなく、安定して働くことが確認できました。
被験者のなかには、71歳以上の高齢者や、アレルギー疾患、糖尿病、肝障害などの合併症のある患者さんもいましたが、副作用は報告されていません。
その後は、狭心症や心筋梗塞、手術で心臓に弁を入れた患者さんなどにも、薬とナットウキナーゼの健康食品との併用を、安心して勧めています。
日本ナットウキナーゼ協会では、健康維持を目的とした場合、1日に平均2000FUのナットウキナーゼを摂取するよう推奨しています(FU=フィブリンを溶かす活性を表す単位)。
ちなみに、市販の納豆1パックを50gとすると、ナットウキナーゼ含有量は、平均しておよそ1500FUです。
1日に2パックの納豆を食べれば、推奨量に達すると思われます。
ただ、納豆は発酵食品という性格上、ナットウキナーゼの含有量は商品によって大きく異なります。
また、それだけの量を継続して食べるのも大変でしょう。
その点、健康食品であれば、安定した量のナットウキナーゼを、毎日手軽に摂取することができます。
これも、私が健康食品の利用を勧める理由です。
ぜひ、健康な血管と安定した血圧のために、ナットウキナーゼを活用してください。
納豆の健康効果を積極的に活用したい

二宮淳一
1977年、日本医科大学大学院医学研究科修了。79年、米国トロント大学心臓血管外科へ留学。循環器・脈管専門医として、生後数時間の新生児から90代までの心臓血管外科の手術を手がけ、かつ10万人以上の診療に携わる「人を診る専門医」。NPOプロフェッショナル・ドクターズ・ネット理事長。