医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営

【立ち仕事】足が痛い 痺れる 間欠性跛行の症状 脊柱管狭窄症の対策を専門医が解説

【立ち仕事】足が痛い 痺れる 間欠性跛行の症状 脊柱管狭窄症の対策を専門医が解説

脊柱管狭窄症も、慢性痛の一つです。原因は、脊柱管が狭くなって神経を圧迫するためだといわれていますが、それだけではありません。痛みに対する不安やストレスなど、心理的な要因も、慢性痛に深く関係しているのです。【解説】井上真輔(愛知医科大学学際的痛みセンター准教授)


15分しか歩けなくなって受診する人が多い

私が勤務する学際的痛みセンターは、さまざまな慢性的な痛みに対して、診療科を問わず、痛みにかかわるあらゆる専門分野と連携して、治療や研究に当たっています。

脊柱管狭窄症も、慢性痛の一つです。
原因は、脊柱管が狭くなって神経を圧迫するためだといわれていますが、それだけではありません。
痛みに対する不安やストレスなど、心理的な要因も、慢性痛に深く関係しているのです。

そのことに触れる前に、脊柱管狭窄症はどういう病気か、説明しましょう。

皆さんはどんな症状が出たら脊柱管狭窄症を疑い、病院を受診するでしょうか。
最初に感じるのは、「長く立っていられない」ことや「長く歩けない」ことです。

例えば、長時間立ち仕事をしていると、足がだるくなったり、痛くなったり、しびれてきたりします。
そのうち、自然に姿勢が前かがみになり、足が痛くなって歩けなくなります。
しかし、しゃがんで少し休むと、また歩けるようになります。

これが脊柱管狭窄症に特有の「間欠跛行」です。

病状が進行するとだんだん歩ける距離が短くなり、15分くらいしか歩けなくなると、病院を受診する人が多いようです。
脊柱管狭窄症はこのように、長く立ったり歩いたりすると症状が出て、腰を丸めてしゃがむと和らぐという特徴があります。

なぜそうなるのかといえば、脊柱管の構造に理由があります。

脊柱管が非常に狭くても病状が出ない人もいる!

脊柱管は、背骨(脊椎)の中にあります。
背骨は、椎骨という骨と、椎間板というクッションの役目をする軟骨が、積み重なってできています。
首から腰にかけて、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で構成され、横から見ると、緩やかな「S字状のカーブ」を描き、体重をうまく分散させる働きがあります。

椎骨は、おなか側の椎体、背中側の椎弓から成り、それらの間にできた、筒状の空間の通り道が「脊柱管」です。

脊柱管の中には、脊髄(脳と体の各部を結ぶ神経組織)という大事な神経があります。
それを守るために、脊柱管の周囲はかたい膜(硬膜)に覆われており、その中を脳脊髄液が満たしています。
この脳脊髄液と硬膜、背骨によって、脊髄は三重に守られているのです。

脊髄は、第2腰椎の辺りで終わり、そこから下は馬のしっぽのような末梢神経の束になります。
これを馬尾神経といいます。
ここから神経は左右に枝分かれし、下肢(下半身)に出ていくのです。

脊柱管狭窄症は、この枝分かれした根もと(神経根)が圧迫されたり、馬尾神経が圧迫されたりすることで起こるといわれますが、一般的に多いのは後者です。

馬尾神経がどうして圧迫されるのか、いくつか原因はありますが、その代表的なものが、脊柱管の背中側にある黄色靭帯です。
これは椎弓をつないでいる弾性線維(弾力に富む結合組織)で、加齢とともに分厚くなります。
そして、脊柱管の中に張り出してきます。
また、脊柱管のおなか側にある椎間板も、加齢などで変性して、張り出してきます。

こうして、後ろから黄色靭帯が、前から椎間板がせり出してくると、脊柱管が狭くなり、馬尾神経が圧迫されてしまうのです。
黄色靭帯は、背中を反らすとさらに縮まって前に飛び出し、脊柱管を狭くします。
それによって馬尾神経がより圧迫され、脊柱管狭窄症の症状はさらに悪化します。

しかし、背中を丸めると、黄色靭帯が伸びて脊柱管が広がり、症状が和らぐのです。
長く歩くと、徐々に背中が曲がってくるのも、神経に楽な姿勢を取ろうとするためです。

馬尾神経が圧迫されると、左右両側のお尻から足先にかけて、主に外側側面に痛みやしびれが現れます。
また、「足の裏が分厚く感じる」「厚いスリッパをはいているようだ」「足の裏に砂がついているみたい」などの異常感覚を訴えます。

馬尾神経は、膀胱の働きとも密接に関係しており、圧迫されることで、頻尿・尿もれといった排尿障害が現れることもあります。
これらの症状は、神経が圧迫されることにより、周囲の毛細血管の血流や脳脊髄液の流れが悪くなるためだと考えられています。

その一方で、脊柱管が非常に狭くなっているのに、症状が出ない人もいます。
おそらく、そういう人は筋力があって、腰がしっかり支えられ、安定しているために、脊柱管が狭くても、症状をある程度抑えられるのではないかと推測されます。
ですから、脊柱管狭窄症だからといって、安静にばかりしているのではなく、できる範囲で運動して筋力をつけるほうが、症状の緩和につながるのです。

また、脊柱管狭窄症の人は、前かがみの姿勢になりがちです。
そうすると、上半身の重心が前に移動するため、お尻や太ももの筋肉に負担がかかります。
そのため、筋肉痛を生じたり、転倒しやすくなったりします。

ですから、痛みや転倒を防ぐためにも、筋力をつける運動が必要になります。

椎骨の断面図

背骨の構造

「運動が怖い」という考え方は払拭すべきもの

ところが、過去にすごく強い腰痛を経験したり、運動したとたんに痛みがぶり返したりした経験があると、いくら「運動がいい」と勧められても、怖くてできない人がいます。
痛みに対して、強い恐怖心があるからです。

そういう人は、いつまで経ってもコルセットが手放せませんし、薬や注射に頼りがちです。
体がかたくなって動かなくなり、筋力も衰えてきます。
そして、さらに体を動かせなくなって、どんどん腰痛が悪化するという、痛みの連鎖にはまり込んでしまいます。

それを助長するのが、心理的な要因です。
痛みがあると、それだけで精神的に落ち込みます。
そのうえ、どこに行っても、何をしても痛みが治まらなければ、うつ状態に陥る傾向があります。
すると、よく眠れなくなって疲労がたまり、ますます腰の環境が悪くなっていきます。

こうした心理的な側面に対処しながら、運動療法を指導するのが私たちの取り組みです。
慢性腰痛のある人は、常に不安を抱えています。
ですから、まずその不安にしっかり耳を傾けます。
そのうえで、痛みに対する不安を一つひとつ取り除いていくような、カウンセリングを行います。

それと並行して、少しずつ体を動かすことを始め、運動しても痛くないことを実感してもらうのです。
その経験を重ねて自信がついてくると、積極的に運動ができるようになります。

こうして、「痛みがあるから体を動かせない」「運動が怖い」という考え方を少しずつ払拭し、痛みに対するマイナスの連鎖を、プラスの連鎖に変えるのです。

一般的な整形外科の治療だけでは、筋力をつけたり、筋肉の柔軟性を増したりすることはできません。
しかし、それらを獲得しないと、脊柱管狭窄症の人は、長時間立つことも、歩くこともできなくなります。

「ゆっくりスクワット」のやり方

解説者のプロフィール

井上真輔
愛知医科大学学際的痛みセンター准教授。医学博士。1997年、高知医科大学医学部卒業。2005年、高知大学医学部附属病院整形外科助手。2011年、愛知医科大学医学部学際的痛みセンター講師。2015年、アイオワ大学医学部客員教授を経て2017年より現職。専門は脊椎脊髄疾患、慢性痛、神経障害性疼痛。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


布施博が脊柱管狭窄症を克服!足の激痛と歩行困難から救った方法とは?

布施博が脊柱管狭窄症を克服!足の激痛と歩行困難から救った方法とは?

腰の辺りから肩甲骨の下辺りまで指圧しても、せいぜい3分程度しかかかりません。実際にやってみると、これがすごく気持ちいいんです!こわばっていた筋肉がほぐれていくのを実感できます。なにしろ、脊柱管狭窄症の症状が目に見えてよくなりましたね。右足に感じていた激痛が、すっかり治まったんです。【体験談】布施博(俳優)


脊柱管狭窄症の「足裏の違和感」が解消!ゆうきプログラムで股関節痛が改善した

脊柱管狭窄症の「足裏の違和感」が解消!ゆうきプログラムで股関節痛が改善した

特に気に入ったのが「ひざ頭の8の字ゆらし」です。これを行うと股関節がほぐれるのがはっきりわかりました。変化を実感しながら取り組んだことがよかったのか、効果はあっという間に現れました。ゆうきプログラムを始めて1ヵ月たった頃には、歩くときの痛みがなくなりました。【体験談】横山久美(パート勤務・47歳)


【脊柱管狭窄症】手術のタイミングは?痛みを軽くする体操・セルフケア法

【脊柱管狭窄症】手術のタイミングは?痛みを軽くする体操・セルフケア法

腰部椎間板ヘルニアの場合などは、自然寛解することがよくあります。脊柱管狭窄症の場合も、ヘルニアほど顕著ではないものの、同じことがいえます。特に、症状が体の片側に出ている場合は比較的軽快しやすいので、がんばってセルフケアを続け、経過を見守りましょう。【解説】稲波弘彦(稲波脊椎・関節病院院長・岩井整形外科内科病院理事長)


歪んだ体を正す「正座あおむけ」でひざ痛が軽減!過剰な食欲も正常に

歪んだ体を正す「正座あおむけ」でひざ痛が軽減!過剰な食欲も正常に

15秒ですらきつかった姿勢の維持も、1分以上維持できるようになりました。徐々に、しかし確実に、体は変わっていきました。腰痛はすっかり消え、右ひざの痛みもいつの間にか消えていたのです。おなかの冷えからくる腰痛もなくなりました。【体験談】朝倉啓貴(派遣インストラクター・49歳)


【カチカチの頭皮をほぐす効果】眼精疲労と溜まっていたストレスから解放

【カチカチの頭皮をほぐす効果】眼精疲労と溜まっていたストレスから解放

実は定年で退職してから、家の中で我慢することが多くなっていたのです。夫が自宅で仕事をしているのですが、納期が近づくと空気が張りつめてきます。1日じゅう一緒にいる私もその空気に巻き込まれて、いつも緊張していました。それをずっと我慢していたのです。【体験談】白石友子(仮名・主婦・66歳)


最新の投稿


布施博が脊柱管狭窄症を克服!足の激痛と歩行困難から救った方法とは?

布施博が脊柱管狭窄症を克服!足の激痛と歩行困難から救った方法とは?

腰の辺りから肩甲骨の下辺りまで指圧しても、せいぜい3分程度しかかかりません。実際にやってみると、これがすごく気持ちいいんです!こわばっていた筋肉がほぐれていくのを実感できます。なにしろ、脊柱管狭窄症の症状が目に見えてよくなりましたね。右足に感じていた激痛が、すっかり治まったんです。【体験談】布施博(俳優)


金属音のような耳鳴りが「酢タマネギ」で大改善した!納豆を入れるのがお勧め

金属音のような耳鳴りが「酢タマネギ」で大改善した!納豆を入れるのがお勧め

作った酢タマネギを、毎朝食べている納豆に混ぜて食べています。酢タマネギを混ぜる量は、私はカレースプーンに2杯、妻は1杯です。こうして毎日の朝食で酢タマネギを食べ続けていたら、耳鳴りの音が徐々に小さくなってきたのです。3ヵ月後には、日中はほとんど気にならなくなりました。【体験談】鈴木興起(無職・80歳)


老廃物を排出してむくみ改善!心身がスッキリする「塩カイロ」の作り方 ・やり方

老廃物を排出してむくみ改善!心身がスッキリする「塩カイロ」の作り方 ・やり方

今回、むくみの予防と改善のためにお勧めするのが「塩カイロ」です。塩カイロは、塩灸をアレンジした、手軽なセルフケアです。塩カイロは、お尻にある尾骨を温めます。尾骨周辺を塩カイロで温めることにより、こりやゆがみが解消し、自律神経のバランスが整って、血液やリンパの流れが改善するのです。【解説】宮本啓稔(新宿西口治療院院長)


【炭酸水パックの美肌効果】ペットボトルでもOK?濃度(ppm)の目安はある?

【炭酸水パックの美肌効果】ペットボトルでもOK?濃度(ppm)の目安はある?

炭酸水につかると、その部位の毛穴から炭酸が浸透。体内で毛細血管に入り、血管内の酸素を細胞に送り出します。これを体が察知すると「酸素が足りていない」と勘違い。炭酸水につかっている部位に酸素を供給しようと、血液がドッと流れてきます。こうして血管が拡張され血流が改善するのです。【解説】齋藤真理子(山本メディカルセンター院長)


貧血を改善する食べ物は海苔がおすすめ!しつこい疲れや憂うつな気分も解消する

貧血を改善する食べ物は海苔がおすすめ!しつこい疲れや憂うつな気分も解消する

実は日本は、貧血大国です。50歳未満の健康な日本人女性1万 3000人以上を対象にした調査で、22.3%の人が貧血に相当し、そのうち25.2%は重度の貧血という結果が出ているほどです。女性に最も多いのは、貧血の約2/3を占めると言われる「鉄欠乏性貧血」です。【解説】山本佳奈(ときわ会常磐病院・ナビタスクリニック内科医)