MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
【ガブ飲み注意】経口補水液の正しい飲み方 高血圧の人は要注意

【ガブ飲み注意】経口補水液の正しい飲み方 高血圧の人は要注意

経口補水液とは、食塩とブドウ糖を水に溶かした飲料のことで、オーエスワン(OS-1)等の商品名で市販されています。下痢、嘔吐、発熱等の症状が原因で脱水症状が起こった際の、水分補給が目的の飲料です。近年は、熱中症対策としても知られるようになりましたが、使用には注意が必要です。【解説】水谷暢秀(水谷脳神経外科クリニック院長)

「OS-1」「アクアサポート」「アクアソリタ」はスポーツ飲料より多くの食塩が含まれている

皆さんは、経口補水液という飲料をご存じでしょうか。

経口補水液は、食塩とブドウ糖を水に溶かした飲料です。
下痢、嘔吐、発熱などの症状が長期間に及んだり頻発したりして、脱水症状が起こった際、水分補給のために飲むものです。
「OS-1」「アクアサポート」「アクアソリタ」といった商品名で売られています。

近年続く猛暑により、熱中症対策の飲料として広く知れ渡りました。
テレビコマーシャルも流れていますし、ペットボトルに入った形状で、薬局やドラッグストアで売られているため、「水分補給用の飲み物」「スポーツ飲料と同じような物」という認識の人も多いのではないでしょうか。

しかし本来、経口補水液は、病院での点滴による水分補給にかわって用いられるものです。
例えば、WHO(世界保健機構)やUNICEF(国連児童基金)は、十分な医療設備がない地域に経口補水液の配布を行い、脱水症状初期での補水治療に関する啓発活動を進めています。
また、先進国の医療機関でも、乳幼児など長時間の点滴が困難な場合に、経口補水液による水分補給を行っています。

つまり、経口補水液は、「点滴をするほどの脱水症状」のときに飲む物なのです。

スポーツ飲料との大きな違いは、食塩の含有量です。
下痢や嘔吐のときは、水分とともに汗や胃液、腸液の塩分(塩化ナトリウム)やカリウムといった電解質が大量に失われます。

そのため、経口補水液は、スポーツ飲料と比べるとナトリウムやカリウムといった電解質の量が多いのです。
メーカーによって差はありますが、経口補水液500mLには、約1.5gの食塩が含まれています。

そのことを知らず、お茶がわりに飲んでいるかたが意外に多いのです。

経口補水液は緊急避難的に飲む物

通常の水分補給は水やお茶で十分

先日も、患者さんと話をしていて、ドキッとしました。
そのかたは血圧が高く、降圧剤を飲んでいます。

夏は血管が緩んで拡張するため、血圧が下がる傾向にあります。
一方で、夏は脱水状態になりやすく、血液が粘度を増します。ドロドロになるのです。

動脈硬化が進んだ高血圧の人の場合、その状態で血圧が下がると、血流の勢いが落ち、それまでは流れていた血栓(血の塊)が、詰まりやすくなります。
夏に脳梗塞や心筋梗塞が増えるのは、そのためです。
そういった知識があったためでしょうか。

私の顔を見るなり、「先生。私、熱中症予防のために、経口補水液を毎日2本ずつ飲んでいるんですよ。脱水を起こすと、血液がドロドロになっちゃいますからね」と、自慢げにいうのです。
私は慌てて、「いやいや。経口補水液は、下痢や嘔吐、高熱のときや、炎天下で滝のような汗をかいたときに、緊急避難的に飲むものです。通常の水分補給は、水やお茶で十分。経口補水液を1Lも飲んだら、塩分のとり過ぎで血圧が上がっちゃいますよ」と説明しました。

実をいうと、こういう患者さんは月に1~2人いらっしゃいます。

日本高血圧学会では、高血圧患者の1日の食塩摂取量を6g未満と推奨しています。
しかし実際に、この目標を達成している高血圧患者は、男性で20%、女性で24%しかいないといわれています。

先ほども説明しましたが、経口補水液のペットボトル1本には、食塩が約1.5g入っています。
2本飲んだら3gです。
つまり、経口補水液だけで1日の目標量の半分をとってしまっているのです。
これでは、いくら食事で減塩を心がけても、6gでは収まらないでしょう。

高血圧のほか、心臓病や腎臓病などで治療中の人は、経口補水液を不用意にガブ飲みしないでください。
実際、経口補水液には、「医師から脱水状態時の食事療法として指示された場合に限りお飲みください」「医師、看護師、薬剤師、管理栄養士の指導に従ってお飲みください」と記載されています。

基本的には、自動販売機では買えず、薬局や薬店で対面販売される商品なので、買うときにお店の人から必ず説明を受けているはずです。
それなのに、なかなか正しい認識が広まらないようです。

もちろん、高血圧の人でも、極度の脱水症状が起こったときには、経口補水液を飲んでください。

私のクリニックには、頭痛の患者さんがたくさん来院します。
夏場は、脱水が原因の頭痛のかたもいて、その場合は経口補水液を勧めます。


経口補水液は、大変優れた飲料です。
それだけに、正しい情報が行き届き、適切に利用されることを願ってやみません。

解説者のプロフィール

水谷暢秀
1967年、静岡県生まれ。日本医科大学卒業後、同大学附属病院脳神経外科、静岡厚生病院脳神経外科診療副部長を経て、2010年、水谷脳神経外科クリニックを開院。脳神経外科専門医。頭痛診療と脳卒中予防が専門分野。
●水谷脳神経外科クリニック
http://www.mizutani-neuro.com/ク

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
これまで、疲労が起きるのは、「エネルギーがなくなるから」「疲労物質が筋肉にたまるから」と考えられてきました。しかし、最新の研究によって、疲労が起きるほんとうの理由は、「自律神経の中枢である、脳がサビつくから」ということが、わかっています。【解説】梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)
症状の原因ははっきりとはわかりませんが人工透析を行う人には老若男女問わずよく現れるものです。これに薬で対応しようとすると体にもっと大きな負担がかかってしまいますし、副作用も心配です。少しでも患者さんの体に負担をかけずに症状をやわらげるのに「手のひら押し」が有効だと思っています。【解説】佐藤孝彦(浦安駅前クリニック院長)
東洋医学には五行思想というものがあり、人の体に起きるあらゆることは五臓につながっていると考えられています。涙がすぐに出るのは、「憂い、悲しむ」感情からです。 これは、五臓の中の「肺」の弱りから発する感情です。肺が弱い体質、もしくは肺が弱っているのかもしれません。【解説】田中勝(田中鍼灸指圧治療院院長)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル