解説者のプロフィール
家族4人で月にレモンを200個消費
病気を回避し、健康に恵まれたいとは誰もが願うことです。
一方で、健康はあくまで自分でつくり上げていくもので、与えられるものではありません。そのための最も有効な手段が、毎日の食事でしょう。
健康な人が病気の予防のために食事に気を付けるのはもちろんのこと、病気になってからも、食事を変えることで健康を取り戻すことが可能です。
食事の重要性に気づいた私は、20年近くをかけてガン患者のための食事療法を研究、確立しました。
その食事療法の柱となるのが、次の四つです。
①大量の野菜や果物の摂取
②動物性脂肪の制限
③塩分制限
④未精製の穀物を摂取
①の大量の野菜や果物の摂取として、私が最もよく勧めているのが、レモンなのです。
レモンを含む食事療法を始めて、効果のあったガン患者さんはたくさんいます。私の父も、レモンのおかげで劇的な回復を遂げました。
私の父は84歳のとき、衰弱して歩けなくなってしまいました。物も食べられなくなって入院し、チューブで鼻から流動食を入れ始めました。
ところが、朝晩、レモン1個を搾ったレモン汁20㎖を流動食に混ぜたところ、2週間後には、父は普通に食事ができるようになりました。
その後、どんどん元気に回復し、3ヵ月後には元気に歩いて退院することができたのです。
それ以来、わが家でも、家族全員が毎日、レモン2個分の搾り汁を飲むようになりました。父の目ざましい回復で、みながレモンの威力を思い知ったからです。
現在も、家族4人で月に200個ものレモンを消費しています。
老眼にも効いている
60歳をとうに過ぎた今も、医師としての激務をこなしながら私が健康を維持できているのは、レモンを毎日取っているおかげだと思います。
昔からの腰痛や肩こりが解消したことや、老眼の進行を防いでいることも、レモンが一役買っているのでしょう。
こうした効果は、レモンの代表的な栄養成分であるビタミンCと、酸味成分のクエン酸、さらには、ポリフェノール成分のエリオシトリンによってもたらされています。ポリフェノール成分とは、抗酸化成分ともいい、老化や病気の原因となる活性酸素に対抗する成分です。
ビタミンCには、血管を強化する働きや、ガンや動脈硬化の原因となる活性酸素(体内で増え過ぎると細胞を傷つけ老化の一因となる物質)を除去する働きがあります。
クエン酸には、体内に入った食べ物をエネルギーに変える「クエン酸サイクル」を活性化する働きがあり、クエン酸を取ることで代謝が上がり、疲れた体がよみがえるのです。
クエン酸には、鉄分やカルシウムなどのミネラルを吸収しやすくし、骨や細胞の老化を予防する「キレート作用」という働きもあります。
エリオシトリンは、レモンの皮と実の間の白い部分にあるポリフェノールですが、過酸化脂質(動脈硬化の原因物質)の生成を防ぐ効果を発揮します。
レモン酢は「天然の若返りドリンク」
このように、レモンには、素晴らしい成分が凝縮されていますが、この有効成分を効率よく取り続ける方法があります。
それが、レモンの輪切りを酢に漬ける「レモン酢」です。
酢には、体に必要なすべてのアミノ酸が含まれています。
アミノ酸は、私たちの体を構成する、たんぱく質の材料になるものです。細胞も筋肉も、すべてアミノ酸からできているのです。
食品でアミノ酸を補給することで、健康が維持され、免疫細胞(生体を防御する機能)も活発に働くようになるのです。
レモンのクエン酸と、酢のアミノ酸を一緒に取ることで、クエン酸の抗酸化作用が高まることが知られています。
また、レモンにも酢にも、代謝(体内の物質の処理)を促進させる効果があるため、その相乗効果が期待できます。レモン酢はまさに、「天然の若返りドリンク」といっていいでしょう。
レモン酢は、レモンを皮ごと酢に漬けますが、こうすることで皮と実の間にある前述の有効成分、エリオシトリンを取れるので、とても効果的です。
レモン酢を作るさいには、国産のもの、できれば無農薬のレモンを選んで作るようにしてください。
それが手に入らない場合は、表面の皮だけをむいて、白い部分を残して酢に漬けてもいいでしょう。
また、レモンを漬けるさいに用いる氷砂糖を、ハチミツにすると、甘さに深みが増します。ハチミツが持つ免疫力を高める作用により、さらなる健康効果が期待できそうです。
済陽高穂
1970年、千葉大学医学部卒業後、東京女子医科大学消化器病センターに入局。73年、国際外科学会交換研修員としてアメリカ・テキサス大学外科教室(J.C.トンプソン教授)に留学し、消化管ホルモンについて研究。帰国後、東京女子医科大学助教授。都立大塚病院副院長、トワーム小江戸病院院長などを兼任後、2008年より現職。『今あるガンが消えていく食事』(マキノ出版)など著書多数。