重要な神経伝達物質を一度に摂取できる!
昨今、現代人の食生活の乱れが問題になっています。
特に私が危惧しているうちの一つが、酸っぱい物=酢酸の摂取不足です。
酢酸は、体内に取り込まれると、クエン酸に変化し、疲労回復効果を発揮します。
酢酸というと、どうしてもクエン酸の効能ばかり注目されがちですが、酢酸自体にも重要な働きがあります。
それは、酢酸には、自律神経のバランスを整える働きが期待できるということです。
自律神経とは、私たちの意志とは無関係に働き、体調を整えている神経です。
自律神経には、正反対の作用を持つ交感神経と副交感神経があり、互いにバランスを取りながら、内臓の働きや血流、体温など、生命維持に必要なあらゆる機能をコントロールしています。
そして、副交感神経を刺激するために必要なのが、アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質です。
副交感神経に働きかけるだけではなく、記憶力などの脳の機能、さらには運動神経を最終的に動かす、自然治癒力の源になります。
アセチルコリンは、酢酸とコリンをもとに、体内で生成されます。
つまり、酢酸が不足すると、アセチルコリンの生成も減ってしまい、自律神経の乱れに直結するだけでなく、脳の機能や運動機能にも悪影響を与えるのです。
一方、酢酸と同じように、アセチルコリンの原料となるコリンの不足も懸念されています。
コリンは、あまねく生物の細胞内に存在している物質です。
これまでは、コリンが不足すると、体内で細胞を分解・供給するため、欠乏することはないと考えられてきました。
しかし、先日、FDA(米国食品医薬品局)が、現代人はコリンが不足しているため、積極的な摂取を推奨するという声明を出したのです。
コリンの不足は、アセチルコリンの欠乏にもつながります。
そこで役に立つのが、ピーナッツを酢に漬けた「酢ピーナッツ」です。
酢の主成分は、酢酸です。
そして、ピーナッツには、レシチンが含まれています。
レシチンは、コリンを作るために役立つ栄養素です。
ダイズや卵に多く含まれますが、ピーナッツにも多く含まれています。
つまり、酢ピーナッツは、アセチルコリンの材料を、一度に摂取することができるわけです。
体内でアセチルコリンが増えれば、副交感神経が刺激され、血管が拡張しやすくなります。
その結果、自律神経の乱れが解消されます。
高血圧や糖尿病といった生活習慣病、耳鳴り、めまい、うつなど、さまざまな病気・症状の改善に役立つでしょう。
酢ピーナッツは、アセチルコリンの材料を一度に摂取できます

ピーナッツの良質な油を酢が吸収しやすく分解
ピーナッツの主な成分は脂肪ですが、その大半は、不飽和脂肪酸と呼ばれる良質な油です。
積極的に摂取したい脂質です。
また、ピーナッツは土の中で育つ希有な豆なので、地中のミネラルをたっぷりと吸収しています。
さらに、ビタミンEやビタミンB3、食物繊維も含まれており、実は、栄養素的にも優秀な健康食材です。
一方、酢には、脂肪を分解する乳化作用があるため、ピーナッツとの相性は抜群です。
ピーナッツの体にいい脂肪を細かく分解して、体内に吸収されやすくしてくれます。
酢ピーナッツは、作り方も簡単なうえ美味です。
もし、食べにくいという人は、レモンの汁や輪切りを加えることで、風味がさわやかになり、食べやすくなります。
また、ペースト状にすれば万能調味料になります。
そして、みそとも好相性です。
前述のとおり、ダイズにはレシチンが豊富です。
ダイズの発酵食品であるみそと、酢ピーナッツを組み合わせて料理に活用すれば、よりアセチルコリンの生成を促せます。
なお、用意する酢はお好みでかまいませんが、3年以上熟成した物を使うと、より健康効果を引き出してくれるでしょう。
私のお勧めは、黒酢です。
各種アミノ酸が豊富で、体を温める効果も期待できます。
ピーナッツは、薄皮ごと漬けましょう。
薄皮には、レスベラトロールという、多くの健康効果が実証されているポリフェノールが含まれているので、食べない手はありません。
酢ピーナッツは、さまざまな料理と合います。
サラダといっしょに食べるなど、1日10~20粒を目安に、自分好みの食べ方を見つけてください。
解説者のプロフィール

高木智司
心神診療室院長。日本自律神経病研究会理事。1984年、名古屋大学医学部卒業。2002年に心神診療室を開院。食生活などの生活習慣の改善から、体が本来持つ免疫力を高めることで、病気を根本から治す治療に力を入れている。著書に『「首に枕をする」と腰痛が治る』(マキノ出版)などがある。
●心神診療室
http://sinsin-clinic.d.dooo.jp/