内科医の父はハトムギを研究しガン患者に推奨
私は長年、自然食を勧める運動を行い、玄米菜食を実践してきました。
私のクリニックに来られる患者さんにも、玄米菜食を柱とした食事指導を行っています。
なぜ玄米菜食が優れているのか。それは、進化の歴史を見れば明らかです。
海で発生した生物は、やがて陸に上がりますが、先に陸に上がったのは植物でした。
動物は、それに遅れること数千万年以上です。
その間、植物は太陽光を利用して炭水化物を合成する光合成という生理機能を獲得しました。
この炭水化物(植物の実)が、動物の食料の原点です。
したがって、我々人間にとって、炭水化物を中心とする玄米菜食はあたりまえなのです。
その炭水化物のなかでも、やせた土地でよく育ち、病虫害が少なく、生命力の強い食品が「雑穀」です。
そして私が、特にお勧めしている雑穀の一つが「ハトムギ」です。
イネ科の植物で、中国では古くからヨクイニンという生薬(漢方薬の原材料)として使われてきました。
ヨクイニンは、ハトムギの殻や皮を取り除いた子実です。
私がハトムギに興味を持ったのは、内科医だった父が、一時期、ハトムギとジュズダマ(ハトムギに似たイネ科の植物)の研究に身を投じていたからです。
食料も薬も乏しかった戦中戦後、自然の植物からなんとか薬を作ろうと必死だったのでしょう。
父の作ったハトムギ茶には抗腫瘍作用があり、父はガンの患者さんに勧めていました。
その印象が強く残っていることと、その後にハトムギを試した実感から、私もハトムギを患者さんに勧めるようになりました。
特に、ガンや腎臓病、胃腸障害、便秘、痔などの患者さんには、積極的にとるように指導しています。
腸の水分を調節し便秘にも下痢にも効く
ハトムギには、多様な作用があります。
その代表的なものが、利水作用でしょう。
ハトムギの利尿作用は、昔からよく知られています。
体の中の余分な水分をどんどん外に排泄する作用です。
それによって腎臓の負担を軽くして、弱っている腎機能を高めます。
それだけではありません。
体内に水分が不足しているとき、水を集めて潤す作用もあります。
優れた自然食は、余分なものの排出だけでなく、足りないものを補うという、両方向の生理機能を持つのです。
足りない水分が補われると、胃や腸も潤って働きがよくなります。
漢方の古典である『本草綱目』にも、ハトムギは胃腸の働きを活発にするとあります。
胃腸の消化・吸収がよくなるので、体に活力も湧いてきます。
また、ハトムギには食物繊維が多く、腸のぜん動運動(便を送り出す動き)を促進します。
その面でも便秘の改善に役立ちます。
一方で、下痢にも効きます。
前述したハトムギの利水作用によって、腸の余分な水分が調節されるからです。
ここにも、下痢と便秘を改善するという、ハトムギの両方向の機能が見られます。
こうして腸の働きがよくなれば、肌もキレイになります。
漢方では、腸と皮膚は同じものととらえられています。
人間の体を空気の抜けたゴムまりにたとえると、指でグーッと押してくぼんだところが腸で、その外側が皮膚です。
腸も皮膚も同じものから発生した組織で、組織学的にも同じ上皮細胞です。
したがって、腸によいものは皮膚にもよく、腸がきれいになれば皮膚もキレイになるのです。
ハトムギは昔から、イボ取りの妙薬として有名です。
イボは体の外にできた腫れ物ですが、体内にできたポリープやガン、痔も、イボと同じ腫れ物の一種です。
ですから、イボが取れるように、ポリープやガン、痔も消えると考えられます。
ガンや痔は、血液の汚れや滞りがその主な原因といえます。
ハトムギで腸がきれいになり、血液の質がよくなることで、ガンや痔などは少しずつ改善するでしょう。
さらに、ハトムギには、体の免疫力をアップする強い働きもあるので、イボやガン、ポリープに効くといえます。
そういう多面的な考察をしなければ、ハトムギのほんとうの姿は見えてきません。
このように多様な健康効果を持つハトムギを手軽にとる方法として、私はハトムギ玄米ご飯やハトムギ茶を勧めています。
ハトムギ玄米ご飯は、玄米10に対してハトムギを1か2加えて、圧力鍋や炊飯器(玄米モード)で炊きます。
これにアズキをハトムギと同量足すと、利尿・解毒作用がさらに高まります。
ハトムギ茶は、殻や皮、子実を焙煎してお茶にした物です。
多くの有効成分を含んでいますから、緑茶のかわりに飲むとよいでしょう。
ハトムギ玄米ご飯の作り方
