解説者のプロフィール

本橋登
1940年、東京都生まれ。
東北大学大学院薬学研究科修了。薬学博士。
明治薬科大学教授、明治薬科大学理事を歴任。
現在は、インド国立大学博士論文審査官。
フルーツ博士として、テレビやラジオ、書籍、雑誌などでおなじみ。
【Q】なるべく国産のレモンを使いたいのですが、時期によっては輸入物しか手に入りません。 農薬やワックスが気になりますが、落とす方法はないでしょうか?
海外から輸入されるレモンは、原産国にもよりますが、通常1ヵ月程度の時間をかけて船便で運ばれてきます。そのため、防腐剤やツヤだしワックスなどを使用していることが大半です。その点を気にされる読者のかたも多いでしょう。
レモンはタワシなどでしっかりと洗えば、表面についているものはたいてい落とせます。それでも気になるかたに私がお勧めする方法が二つあります。
❶中性洗剤で洗う
野菜や果物を洗うための洗剤や、野菜や果物を洗ってもよい食器洗い用の中性洗剤があります。この洗剤を用いてレモンの外側を洗います。洗剤で洗った後は、しっかりと流水で落とすようにします。
❷50℃のお湯に浸す
洗ったレモンを、50℃ほどのお湯に浸けます。お湯に浸ける時間は、熟した軟らかめのレモンであれば5分程度、固いレモンであれば10分程度が目安です。
表面に付着した汚れやワックスは、50℃以上のお湯であればたいてい取り除くことができます。しかし、60℃以上の熱いお湯だと、レモン本来の持つツヤが失われるなど、熱によるダメージも考えられます。そのため、お湯の温度は50℃くらいが最適です。
【Q】それでも農薬が気になります。 皮をむいてお酢に漬け込んでレモン酢を作ったら、やはり有効成分は減ってしまうでしょうか?
レモンの皮の部分に健康にいい機能性成分が多いことは事実です。また、レモン酢のレモン(皮部分)を食べることで、食物繊維を摂取することもできます。皮をむくと、これらの機能性成分の摂取量は減少します。
もともとレモンは食品なので、食品衛生法で使ってもよい防腐剤の量の限度が決められています。
また、通常レモンの皮を何キロも食べるわけではないでしょうし、Q1で紹介した方法で外側を十分に洗えば、人体に害を及ぼすようなことは起こりにくいと私は考えています。
しかし、感じ方や考え方には個人差があります。どうしても気になるかたは、皮をむいたレモンでレモン酢を作っても、もちろん構いません。
【Q】大量に買ってしまったレモンは、どう保存したらいいのでしょう?
次のような方法がお勧めです。
ビニール袋に5〜6個のレモンを入れ、縛るなどして封をします。レモンの細胞は生きていますので、針や千枚通しなどで空気穴をいくつか空けておきましょう。
この状態で、冷蔵庫に保存します。常温に置くと追熟が進みカビにも侵されやすくなるので、冷蔵庫で保管するようにしましょう。こうすれば、およそ1ヵ月は鮮度を保つことができます。
【Q】おいしい、よいレモンの選び方を教えてください
レモンを選ぶポイントは、いくつかあります。レモンをいくつか手に取って比べてみましょう。
●芳香が強いレモン
香りが強いものほど芳香成分のリモネンが豊富に含まれており、いわば元気なレモンということになります。
●形が整っていてツヤツヤしているレモン
皮に傷があるものや、色ツヤが明らかに悪いものは避けましょう。
●軟らか過ぎないレモン
レモンに限らず、果物は熟していくと軟らかくなります。熟した果物はおいしいものですが、熟しきったときがピークで、それからは腐敗が始まっていきます。ですから、明らかに軟らか過ぎるレモンは避けましょう。
●ズッシリと重みがあるレモン
およそ同じ大きさ、形のレモンを手に取ってみましょう。軽いものは、水分が抜けつつあって、いわばスカスカしたレモンである可能性があります。ズッシリと重いレモンは、水分や機能性成分、ミネラルなどのバランスがよくおいしいレモンとなります。
【Q】少し温かいところにレモンを置いていたら、色が赤くなってきました。使っても大丈夫でしょうか?
レモンは基本的に温かいところには置かず、冷蔵庫で保管するようにしましょう。
常温や温かいところに置いておくと、どんどん熟していきます。熟しきったレモンはそのときをピークに、腐敗を始めます。レモンを常温で放置すると、レモン全体が軟らかくなり、水分が失われてシワシワしてきて、色も赤褐色から、最後には黒褐色に変色していきます。
しなびたレモンはおいしくないですし、水分も失われ、レモン自体のコクもありません。ですから、なるべくなら、変色する前にレモン酢にしてしまいましょう。
【Q】 レモンの成分を塗って日に当たるとシミになると聞いたことがあります。 飲んで日に当たってもシミになりやすいということはあるのでしょうか?
レモンやミカン、グレープフルーツなどのかんきつ類に多く含まれるソラレンという成分は、光を浴びると紫外線に過剰に反応し、シミができるなどのダメージを与えてしまうことがあります。これを「光毒性」といいます。これは、かんきつ類の精油などを皮膚に塗布したときに起こることが多いようです。
また、クエン酸など、レモンに含まれる有機酸の成分を皮膚に塗ると、その成分が酸化してシミやかぶれの原因になることがあります。
しかし、レモン酢は皮膚に塗るのではなく、飲食するものです。飲んだり食べたりする量もそれほど大量ではありません。体内に入った有機酸はエネルギー源として使われますので、飲用による皮膚への悪影響はそれほど心配しなくてもよいでしょう。
ですが、まれに有機酸にアレルギーを起こす人がいます。レモンやかんきつ類でかぶれを起こしやすいと自覚している人は、レモン酢を皮膚の目立たないところに薄く塗ってみてください。それで赤みがはっきりと出るような人は、飲用も含めてレモン酢健康法を避けたほうがよいでしょう。
【Q】レモンの酸で歯が溶けてしまうというようなことはないのでしょうか?
歯の表面を覆うエナメル質は、口内が酸性の状態だったり、歯に酸性の物質が付着したりしたときに溶けやすい性質があります。ですから、理論上、レモン酢中の成分がエナメル質を絶対に溶かすことはないとは言い切れません。
しかし、レモン酢をずっと口に含んでいるわけではありませんし、食事の後には誰しも歯を磨くはずです。ですから、大きな影響はないと考えてよいでしょう。それでも気になる人は、レモン酢を飲んだ後に口をゆすいでください。
【Q】ユズやライムなど、レモン以外のかんきつ類で代用することはできますか?
理論的には可能です。
ですが、例えばユズは有機酸(クエン酸など)が多過ぎて、おそらく、酢をそのまま飲むのと同じような強い刺激があるでしょう。また、ライムも酸味が強いので、食べるのには通常適さないでしょう。
レモンはその点、酢に漬け込んだレモンの味覚、そして入手のしやすさなど、さまざまな点で機能性と味覚のバランスが優れたものだといえるでしょう。
【Q】レモン酢を作るときに、電子レンジを使わずに、そのままお酢につけても大丈夫でしょうか? レンジを使わない場合に気を付けることなどはありますか?
時間さえかければ、電子レンジを使わずともレモン酢を作ることは可能です。その場合は、レモンを酢に漬けてから1週間後くらいから飲み始めることができます。
電子レンジは、超音波を利用して細胞を軟化させます。すると、酢に漬けたときにレモンの成分が酢に溶けだしやすくなります。また、酢の成分もレモンの中に浸透しやすくなります。ですから、電子レンジを使用すると出来上がりが早くなるのです。