健康効果の高い「レモン牛乳」
主要な栄養素の中で、日本人が特に不足しがちなのがカルシウムです。老齢人口の増加とともに、カルシウムの摂取不足から生じる骨粗鬆症の問題が、よく指摘されています。
その問題を解決する一つの手段として、ぜひ役立ててほしいのがレモンです。私たちの研究によって、カルシウムを含む食品にレモン汁を加えると、カルシウムの吸収率が格段に高まることがわかってきました。
そもそもカルシウムは、吸収率のいいミネラルではありません。一般に野菜に含まれているカルシウムの吸収率は約20%、小魚でも約30%です。優秀といわれている牛乳でさえ約40%に過ぎません。牛乳でカルシウムを取っても、そのうちの60%は体内に吸収されず、排泄されてしまうのです。
せっかくカルシウムを多く含む食品を取っているのに、半分以上は利用できないのですから実に残念です。ところが、そこにレモン汁を加えると、話は一転するのです。
私たちはラットを使って、ある実験を行いました。
まずラットを四つのグループに分け、①基本のエサだけ、②基本のエサにレモン果汁を配合したもの、③基本のエサに牛乳を加えたもの、④基本のエサに牛乳を加え、さらにレモン果汁を配合したもの、という四つの方法で4週間飼育しました。
これらの実験食では、すべてカルシウム濃度を0.3%に統一し、加えたレモン汁は0.2%です。そして、カルシウムの吸収率を算出するために、ラットのフンに含まれるカルシウム量を測定してみました。
すると、レモン汁を加えることで、明らかにカルシウムの吸収率が高まることがわかりました。先に牛乳のカルシウムの吸収率は約40%だといいましたが、私たちの実験では牛乳にレモン汁を加えると、1・5倍の約60%まで高まるのです。
カルシウムの吸収率の比較

吸収率だけでなく保持率も高める
吸収率を見たら、次に保持率も調べる必要があります。保持率とは、カルシウムが体内に残る割合を指します。
実は、たんぱく質や脂肪などの栄養素はエネルギーの元になったり、体を作る材料として利用されたりするため、そのまま便や尿などで排泄されることはまずありません。
ところが、カルシウムは骨にとっても体の細胞にとっても必要なミネラルであるにもかかわらず、腎臓などから尿としてすぐに出ていってしまうのです。つまり、いったん吸収されても体の中で利用されずに、体外に出てしまうものが多いのです。いくらカルシウムの吸収率が高くても、それが体の中に残って、利用されないと意味がありません。
この保持率を調べたところ、やはりレモン汁を加えたほうが明らかに高くなりました。
さらに、より正確な吸収率を調べるため、次のような実験をしました。ラットに麻酔をかけ、腸管をくくってそこに直接①牛乳カルシウムのみ、②牛乳カルシウムにレモン汁を加えたものを注入して、30分後に門脈の血液中のカルシウム濃度を測ってみたのです。
腸管内のカルシウムは、小腸の内壁にある絨毛という突起から吸収され、毛細血管を流れ、門脈という血管に集められ、肝臓に送られて利用されます。ですから、門脈中の血液のカルシウム濃度を測れば、実際に吸収されたカルシウムの率が明らかになるのです。
この実験でも、レモン汁を加えると、門脈の血液中のカルシウム濃度は高くなり、レモン汁はカルシウムの吸収率を高める働きのあることが明らかになったのです。
それでは、どうしてレモンと一緒に取るとカルシウムの吸収率が高まるのでしょうか。これについては、私たちにもよくわかりません。
ただし、レモンに大量に含まれるクエン酸には「キレート作用」のあることが知られています。キレート作用とは、クエン酸がカルシウムなどのミネラル成分をカニのハサミのように挟んで、水に溶けやすいかたちにして、吸収を高める作用のことです。こうした作用が関係していると予想されています。
いずれにせよ、レモン汁がカルシウムの吸収を高めるのは間違いないことですから、毎日の食生活で利用しない手はありません。牛乳を飲むときにレモン汁を加えたり、焼き魚にレモン汁をかけたりして食べるのは、食品をおいしくするだけでなく、その栄養をむだなく利用することになるのです。
また、体調不良などであまり食べられない人や、少食の人、ダイエット中の人などが、少ない量からより効率的にカルシウムを摂取しようとする場合も、レモン汁は有効といえます。
「レモン牛乳」を勧める、横越先生