【鍼灸師解説】「仙骨」を温めると腰の激痛が改善する理由 ストレス性の腰痛にも効果的

【鍼灸師解説】「仙骨」を温めると腰の激痛が改善する理由 ストレス性の腰痛にも効果的

仙骨は、上半身と下半身をつなぐ要であり、私たちの骨格を支えている中心的な骨といえます。ですから、仙骨に負担がかかってゆがみが生じると、全身の骨格に影響が出ます。特に、仙骨と直接つながる腰椎には支障が生じやすく、腰痛の大きな原因になるのです。【解説】中野朋儀(陽だまり‘はり・きゅう’治療室院長)


中野朋儀
自治医科大学附属病院麻酔科・鍼灸師。陽だまりはり・きゅう’治療室院長。鍼灸師として25年のキャリアを持ち、関東の4地区で診療にかかわる。浦和専門学校で鍼灸師の育成に取り組む。近著『仙骨を温めればすべて解決する』(SBクリエイティブ)が好評発売中。

仙骨は上半身と下半身をつなぐ要

 私が院長を務める「陽だまり'はり・きゅう'治療室」では、患者さんに鍼灸治療を行いながら、症状の緩和に役立つ自宅療法のアドバイスをしています。その中でも、好評なのが、「仙骨の温め」です。
 これは、文字通り、仙骨という骨(仙骨の場所は後述)を温める方法です。

 温めることの効用については、『安心』2018年1月号でも解説しました。すると、読者の皆さんから大きな反響がありました。
 なかでも、「腰痛が改善した」というお便りが、編集部に多数寄せられました。そこで、今回は、仙骨を温めることで、なぜ腰痛が改善するのかお話ししましょう。

 そもそも仙骨とはどんな骨で、腰痛とどんなかかわりがあるのでしょうか。

 仙骨は、骨盤の背中側の中央にある平たい骨です。背骨を下にたどっていくと、お尻の割れ目の上で尾骨という出っ張りに触れます。その5cm上辺りを手のひらで触れると、平たい骨があるのがわかるでしょう。これが仙骨です。

 仙骨は、骨盤の中心部分の骨であると同時に、背骨の土台部分でもあります。背骨は、仙骨の上に腰椎(背骨の腰の部分)、胸椎(背骨の背中の部分)、頸椎(背骨の首の部分)が連なってできているのです。

 つまり仙骨は、上半身と下半身をつなぐ要であり、私たちの骨格を支えている中心的な骨といえます。ですから、仙骨に負担がかかってゆがみが生じると、全身の骨格に影響が出ます。特に、仙骨と直接つながる腰椎には支障が生じやすく、腰痛の大きな原因になるのです。

 仙骨は、体の中心にあって、私たちの骨格を支えているだけではありません。全身の血液循環にも深くかかわっています。

筋肉より骨のほうが熱が伝わりやすい

 人体の腹部には、体の血流の主要通路ともいえる「腹大動脈」という太い動脈が通っています。この腹大動脈から枝分かれした多数の血管は、骨盤を通ります。その大部分は、仙骨を経由するのです。
 ですから、仙骨を温めると、多数の血管を熱で刺激して、全身の血流を促す効果が得られます。特に、仙骨のそばにある腰の血流は即効でよくなります。

 普段、感じておられるかたも多いと思いますが、腰は冷えやすい部分です。特に、骨盤や背骨にゆがみがあったり、腹部や腰周りの筋肉がこわばっていたりすると、腰周りの血流が妨げられ、余計に冷えやすくなります。血流が悪いと、筋肉がこわばり、それがまた骨盤や背骨のゆがみを招くという悪循環が起こるのです。

 これは、腰痛が起こりやすく、悪化しやすい危険な状態です。その悪循環を断ち切るのに効果的なのが、仙骨の温めです。仙骨は冷えやすい半面、幸いにも温めれば、熱伝導の効率がよい場所でもあります。

 体内を温めるのに、筋肉を温めるのもよさそうですが、これは誤解です。血管が豊富な場所でも、厚い筋肉におおわれていると、外から温めたとき、なかなか内部に温熱刺激が届きません。温熱刺激がダイレクトに伝わるのは、実は筋肉ではなく骨なのです。

 仙骨部分は、触れてわかるとおり、皮膚のすぐ下にあるので、ここを温めると、温熱刺激がダイレクトに体の深部に伝わります。仙骨を温めると、「体が芯からポカポカする」という人が多いのもそのためです。

 こうして深部から温まると、腰周りの血流は抜群によくなります。骨盤や背骨のゆがみは、温まって血流がよくなると、筋肉がほぐれて、リセットされやすくなります。
 また、血流がよくなると、ブラジキニンなど、血中に含まれる痛み物質も流されやすくなり、腰痛の軽減・解消に大きな力を発揮するのです。

 仙骨の温めは、さまざまな腰痛の緩和に役立ちます。脊柱管狭窄症(背骨内部の神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されて痛みやしびれが出る病)や、座骨神経痛などによる腰痛は、基本的に血流の悪さと神経への圧迫によって症状が助長されているので、仙骨の温めによる改善効果が期待できます。
 さらに、ストレスからくる慢性的な腰痛の改善にも効果的です。

 なぜなら仙骨には、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のうち、リラックス状態を作り出す副交感神経が主に通っています。前述したとおり、仙骨は温熱刺激がダイレクトに伝わる部分。つまり骨だけでなく、副交感神経にも熱が伝わりやすいのです。

 仙骨を温めて、副交感神経の働きが高まれば、リラックス状態が作れるので、ストレス性の腰痛の緩和にもなります。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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