実は体には必要不可欠な「コレステロール」
いまだ悪者扱いされることの多いコレステロールですが、実際には、体にとって、なくてはならない成分の一つです。
コレステロールは、副腎皮質ホルモンや性ホルモンの原料になります。
また、脂肪の消化を助ける胆汁酸も、コレステロールから作られています。
したがって、コレステロールが不足すると、健康に悪影響が出るのです。
健康に悪いのは「食品」から過剰に摂取したコレステロール
とはいえ、とりすぎるのも問題です。
過剰に摂取すると、コレステロールが余って血液中にたまり、血液がドロドロになって、動脈硬化を起こす危険性が高まるからです。
動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞など、生活習慣病の引き金となります。
体内のコレステロールには、体内で合成されるものと、食品からとり入れるもの(食餌由来)の2種類があります。
体内でのコレステロールは、主に肝臓で作られます。
このコレステロールは、ほとんどが生命活動に使われてしまうので、余ることはありません。
健康に悪影響を与えるのは、食品として過剰に摂取したコレステロールです。
特に、動物性の油脂に多く含まれています。
「小豆の煮汁」でコレステロール値がほぼ半分になった!
私たちの研究グループは、あずきの加工過程で出る煮汁に着目していました。
そこで、あずきの煮汁が、食品から摂取したコレステロールにどう作用するかを調べました。
実験は、ラットを使って行いました。
植物油中心の高脂肪食にコレステロールを加えたエサを、あずきの煮汁の粉末とともに、ラットに1ヵ月間与え続けます。そして、血液を採取し、血中コレステロールを測定しました。
すると、あずきの煮汁を与えないラットに比べ、コレステロール値が、ほぼ半分になっていたのです。
このことから、あずきの煮汁には、食餌由来のコレステロールが体内に吸収されるのを抑えることで、血中のコレステロール濃度を上昇させない作用があると推察されます。
食べ物のコレステロールを吸収させずに排出する「小豆」の作用

この実験では、もう一つ、別のパターンでもデータを取りました。
エサにコレステロールを入れず、高脂肪食だけにしたのです。
すると、あずきの煮汁を与えても、血中コレステロール値は変わりませんでした。
これは、あずきの煮汁を飲んでも、体内で作られて体の役に立つコレステロールについては、その合成は抑制されないということを示しています。
つまり、あずきの煮汁は、口から入るコレステロールだけを体内に吸収させずに、排出するのです。
体内での合成は阻害しないので、コレステロール不足になって、健康に支障が出る心配はありません。
食生活が欧米化した現代では、脂肪たっぷりの肉や、クリーミーな乳製品を摂取する機会が多くなっています。
特に、外食の多い人は、その傾向が強くなるでしょう。
心当たりのあるかたは、食べ物のコレステロールを吸収させずに排出するあずきの作用を、ぜひ活用したいものです。
例えば、霜降りの牛肉や、ロースカツを食べるとき、あずきの煮汁をいっしょに飲んではどうでしょうか。
コンソメやだしで味をつけて、スープにして飲んでもいいですし、お茶などで割ってもいいでしょう。
また、脂の多い料理が主菜のときに、カボチャとあずきをいっしょに煮た「いとこ煮」など、あずきの入った副菜を食事に添えるのもお勧めです。
白髪の予防・改善にも期待できる
あずきの煮汁には、ほかにもいろいろな作用がわかっています。
私たちは、以下のような実験を行いました。
体毛をバリカンでそったマウスに、あずきの煮汁を加えたエサを与えました。
すると、新しく生えてきた体毛の色は、あずきの煮汁を与えていないマウスに比べて濃くなりました。
これは、メラニンを作る酵素のチロシナーゼが活性化して、メラニンがどんどん作られたことによるものでした。
この結果から、皮膚の色素が部分的に抜けてしまう尋常性白斑の改善に、あずきの煮汁が一助となるのではないかと考えられます。
この実験の結果を見て、私が応用展開を考えているのは、白髪への効果です。
白髪も、頭皮のメラノサイトの機能が低下し、メラニンを生成できなくなった状態です。
ですから、あずきの煮汁が白髪の予防・改善に役に立つことは、十分考えられます。
これは今後の課題です。
私たちが実験に使ったのは、あずき製品を作る過程で出たゆで汁を、あずきポリフェノールの濃度を数十倍になるよう加工した物です。
一般のかたが飲む場合には、市販のあずき茶や、あずきを煮た際の煮汁を利用するといいでしょう。
苦みやにおいが気になるときは、味をつけてスープにしたり、お茶やヨーグルトに混ぜたりすると、おいしくなります。