
手もみでリラックスし治療がスムーズに運ぶ
「気持ちがよかった〜!」
「体がすごく楽になった!」
治療が終わった後の、患者さんたちの声です。
歯の治療後なのに、皆さんがこう喜んでくださるのは、診療室が癒しの空気に包まれているからでしょう。
歯科医院を開業して、はや32年。
開業以来、私は、女性ならではのアットホームな歯科医院を心がけてきました。
応接間にお客様を迎えるように患者さんをお迎えし、笑顔で帰っていただきたい。
そのため、私は東洋医学を始めとする、さまざまな手法を治療に取り入れてきました。
その1つが、手もみです。
歯科治療を受けられる患者さんは、不安や緊張で口の筋肉がこわばっていて、口が大きく開きません。
その不安や緊張を取り除き、リラックスしていただくために、私は治療の前に、患者さんの手をもんでいました。
でも、私が手をもめる人数は限られています。
そこで私は、患者さんが自分で手をもめるように、ペンチに似た形の専用の器具を開発しました。
患者さんは治療を待つ間や治療中、この器具を使って自分で手をもんでいます。
すると緊張が取れて口が大きく開くようになり、リラックスして治療を受けていただけるのです。
私たち歯科医も、患者さんの口がこわばっていると治療に苦労します。
それでなくても歯科医は、片手に重い器具を持ち、もう片方の手に神経を集中させて治療するので、手や肩が疲れます。
その疲れを取るのにも手もみがとても有効でした。
小指への刺激は過緊張に効果
東洋医学では、手と脳や体には密接な関係があり、手には全身が投影されていると考えられています。
私が行っている手もみは、古くからある手の刺激療法をベースに、福田稔医師(自律神経の働きに注目した、新しい免疫療法の創始者)が考案された「爪もみ」を加味したもので、爪の生え際をもんだり、手のひらをもんだりする刺激法です。
過緊張に特に効果があるのは、小指への刺激です。
小指の指先を刺激すると、自律神経(※自分の意志ではコントロールできない神経で、交感神経と副交感神経がある。体を緊張状態にするのが交感神経、リラックス状態にするのが副交感神経。)の副交感神経が優位になって緊張がゆるみます。
また全身の血流がよくなるので、足の先まで温かくなります。
睡眠薬がなくても眠れるようになった
この小指刺激は、過緊張だけでなく、不眠、うつ、頭痛などにも効果があります。
小指をもんでいるうちにリラックスして、眠ってしまう患者さんもいるほどです。
私の歯科医院で手もみの効果を体験し、自宅でも実践している人は少なくありません。
その中には、30年来の不眠症が治ったかたもいます。
53歳の男性Hさんです。
Hさんは仕事のストレスから不眠症になってしまい、長年、睡眠薬が手放せない状態でした。
私の治療をよく理解され、自宅でも手もみを続けたところ、睡眠薬がなくても眠れるようになり、とても喜んでいただきました。
緊張が取れて国家試験もほぼ100%の合格率
私が校長を務める歯科衛生士の学校の生徒たちも、国家試験の当日は手もみで緊張をほぐしています。
息を大きく吸いながら、小指をもみ、「だいじょうぶ!」とみんなで声を掛け合うと、さっきまで緊張と不安で泣きそうだった生徒たちの顔に笑顔が戻ってきます。
そのおかげか、私の専門学校は毎年、ほぼ100%に近い合格率です。
小指もみのやり方は、下のやり方をご覧ください。
過緊張や不眠に効く「小指もみ」のやり方

❶小指の爪の生え際を、親指と人さし指ではさみ、ギュッと力を入れる
❷心地よい程度の強さで5秒押す
❸左右の小指を同じようにもむ
これを1セットとして、1日5回繰り返す

指のまたを両手でつまむのも効果的
小指もみをすると、フワーッと体がゆるんで、とてもいい気持ちになります。
今回は小指もみを紹介しましたが、健康維持のためには、左右の手のすべての指をもむようにするといいでしょう。
加えて、指のまたの部分(いわゆる、水かき)を、もむこともお勧めします。
指のまた刺激も、体調管理にかなりの効果があります。
解説者のプロフィール

七沢久子(ななさわ・ひさこ)
山梨県歯科衛生専門学校校長・七沢歯科医院院長。
1953年生まれ。
1978年、神奈川歯科大学卒業。
1982年、開院。2007年、山梨県歯科衛生専門学校校長に就任。
日本バイ・ディジタルオーリングテスト協会O-リング認定医。
アットホームな雰囲気の中で、リラックスして治療に臨むことがたいせつと考え、レーザー治療や超音波振動治療などで無痛治療を心がけている。
東洋医学も取り入れて、歯の治療を通じて体も心も癒される歯科統合医療の提供に努める。
●七沢歯科医院
http://nanasawadental.com/index.html