バナナはお腹や肌の調子をよくする
私たちにとって、とても身近なフルーツであるバナナは、甘くておいしいだけでなく、栄養成分が豊富です。
バナナを食べると、バナナに含まれる有効成分が腸内で作用し、おなかや肌の調子がよくなると、以前からいわれてきました。
確かに、バナナにはエネルギー源になる糖分をはじめ、マグネシウムやカリウムといったミネラル類、ビタミンB群、ビタミンE、葉酸、アミノ酸の一種であるトリプトファン、食物繊維などの成分が含まれています。
なかでもマグネシウムは、日本人の必須栄養素の中でも不足しがちなものの一つです。
マグネシウムは腸管に働きかけて、腸の細胞から水分を引っ張ることで、便を軟便にして排便をスムーズにする働きがあります。
その結果、腸内環境を改善させるのです。
また、トリプトファンはビタミンB6とともに作用し、セロトニンを合成します。
セロトニンは、その95%が腸で産生され、腸管運動を起こす物質として作用するのです。
さらに、豊富な食物繊維は便のもとになるため、便秘が改善します。
さらに、豊富に含まれるビタミンB群によって、肌の若返り効果まで期待できます。
腸内環境の改善と皮膚の水分量の増加を実験で実証
しかし、これまでそれらを実証するデータはありませんでした。
そこで、私は日本バナナ輸入組合と共同で、肌と腸に対するバナナの効果を調査することにしたのです。
まず、「肌の衰えを感じている」女性36人にご協力頂き、調査開始の2週間前に、皮膚画像診断と、皮膚弾力性測定を行いました。
その中から皮膚の水分値が低い21名に、バナナを1日2本(200g)ずつ、4週間にわたって毎日食べてもらったのです。その間の食事、生活はいつもどおりにしていただきました。
その結果、バナナを摂取して4週間後には、排便の状況が改善するというデータが得られました。
それとともに、肌の明るさや水分量、油分量、弾力性などが増したことが判明しました。
特に、肌の水分は、バナナの摂取開始2週間前と比べて、バナナを摂取した後は際立って増加していました。
さらに、バナナの摂取をやめたところ、その2週間後には肌の水分が減少することもわかったのです。
このデータは、腸内環境がよくなって、皮膚の水分量が増し、肌の老化が予防できたことを示しています。
なぜ、腸内環境が改善すると、肌の状態がよくなるのかは、はっきりとはわかっていません。
しかし結果として、確かな効果があることが実証されたわけです。
調査に参加した女性たちは、バナナを食べ続けても、体重の増加はありませんでした。
そのうえ、質のよい排便が習慣的にあったことが確認できたのです。
なかには、おなかの張りが取れたかたもいました。
バナナ摂取後の肌の水分、油分、弾力の変化

寒い季節には特にお勧め!花粉症の症状を改善する効果も
一般的に、冬になると腸の運動障害が起こり、便秘に陥りやすくなります。
また、皮膚が乾燥しやすく、肌の保湿力が低下します。
寒い季節にバナナをとることで、これら二つの悩みを同時に解消できるのです。
そのほか、バナナには、免疫力の増強作用も期待できます。
マウスを使ったある実験では、ガン細胞を移植したマウスに乾燥バナナを食べさせたところ、腫瘍の増殖が抑えられ、腫瘍の重量も軽くなるという結果が得られたそうです。
別の実験では、腫瘍細胞を壊死させるINFという物質を増やす作用が、ほかのフルーツに比べて高いこともわかっています。
ある実験の結果からは、バナナを食べることで、スギ花粉によるアレルギー反応を抑制するとも考えられているのです。
腸内環境を整えて、肌を若返らせるだけでなく、体をいきいきと健康にしてくれるバナナ。
まさに、自然のサプリメントといっても過言ではないでしょう。
一年じゅう安価で手に入るので、早速バナナ生活を始めてみてはいかがでしょうか。
そのまま食べるのはもちろんのこと、オリーブオイルでソテーしたホットバナナもお勧めです。
解説者のプロフィール

松生恒夫(まついけ・つねお)
松生クリニック院長。
1955年、東京都生まれ。
東京慈恵会医科大学を卒業。
同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門センター診療部長を経て、2004年より現職。
現在までに約4万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた第一人者。
著書に『「排便力」をつけて便秘を治す本』(マキノ出版)などがある。
●松生クリニック
東京都立川市羽衣町2-12-27
TEL 042-522-7713
https://matsuikeclinic.com/