便秘には「オリーブオイルココア」、オナラの悩みには「おヘソのぞき」体操
便秘の治療で何より重要なのが、生活習慣の改善です。便秘を解消するための「腸活」の基本は、先に述べたように1日三食とウオーキングです。
ここでは、その基本にプラスして効果をアップさせる「オリーブココア」と、「おヘソのぞき」という二つの腸活についてご紹介しましょう。
オリーブオイルは、紀元前から「自然の下剤」として用いられてきた

私のクリニックでは、例年、1~2月と、8月に便秘で来院する患者さんが増えます。その原因は、冬場の寒さと、夏場のエアコンの冷気で腸が冷え、働きが抑制されるからです。
いわば腸の冷えからくる便秘です。このタイプは、冷たい水を飲んだり、サラダやヨーグルトを食べたりすると、腸がさらに冷やされて、症状が悪化します。そんな人のために考案したのが、腸の温かさを保つ「オリーブココア」です。
オリーブオイルには、紀元前から、自然の下剤として用いられてきた歴史があります。イタリアでは、現在でも子どもの便秘予防に、ティースプーン1杯のオリーブオイルを飲ませる習慣があります。
オリーブオイルの主成分は、オレイン酸という脂肪酸です。オレイン酸は、短時間では吸収されにくく腸内にとどまる作用があります。このとどまっている間に、オレイン酸が腸を刺激して動きを促すと同時に、消化物に混じることで腸内での便の滑りがよくなるのです。
私は、下剤を常用する慢性便秘症の患者さんに、エキストラバージンオリーブオイルを毎朝取ってもらうという実験を行いました。64人の患者さんに、毎朝30㎖を取ってもらった結果、1人を除く63人が、下剤からの離脱、および下剤の減量ができました。
そのため、私は便秘の患者さんには、1日大さじ1~2杯のエキストラバージンオリーブオイルの摂取を勧めています。
オリーブオイル単体で飲むのが苦手な人は、サラダにドレッシングとしてかけたり、ここで紹介するようにココアに混ぜたりするといいでしょう。ココアにはリグニンという食物繊維が豊富に含まれ、腸を刺激して動きをよくする働きがあります。
また、オリゴ糖はビフィズス菌のエサとなって善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。1日3gのオリゴ糖で、腸内のビフィズス菌が数倍に増えます。
さらに、オリーブオイルは、私の研究によってお湯を冷めにくくする作用が判明しました(特許出願中)。ココアが冷めにくくなり、長時間にわたって腸の温め効果も期待でき、便の排出運動が促進されるのです。
オリーブオイルの働きに加えて、ココアの食物繊維、オリゴ糖の腸内環境の改善効果などもプラスされるため、オリーブココアは腸にとっては最良のドリンクといえるでしょう。夕食後のくつろぎタイムにぜひ飲んでください。
オリーブオイルを毎日取ったら太ると心配される人もいますが、大さじ1~2杯であればその心配は無用です。むしろ、悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化予防にも役立つなど、健康効果のほうが大きいことがわかっています。
ガスがお腹に溜まってつらい人、オナラが出過ぎて困る人、おならの硫黄臭(卵の腐った臭い)に心配な人に効果的な体操

ガスがお腹に溜まってつらい人や、オナラが出過ぎて困る、硫黄のようなニオイのおならが臭すぎて心配になる人のために役立つ体操が「おヘソのぞき」です。
私たちが排便をするときには、下腹部に力を入れていきみます。いきむと、腹圧がかかって腸が刺激され、排便が促されるのです。このときに最も使うのが腹筋です。腹筋でも、おなかの中央を縦に走る「腹直筋」の力が重要になります。
この腹直筋をはじめとする腹筋は、運動不足や加齢によって衰えていきます。特に女性の場合、男性と比べると元々の筋肉量が少ないので、日ごろから腹筋を鍛えておくことが便秘予防にも重要です。腹筋を鍛えると、いきんだときの腹圧を強め、便を先へと送り出す腸の蠕動運動を促すことができます。
この腹筋(ことに腹直筋)の強化に役立つのが、おヘソのぞきです。簡単に見えますが、腹筋を確実に鍛える効果があります。ぜひお試しください。

松生恒夫(松生クリニック院長)
1955年、東京都生まれ。東京慈恵会医科大学を卒業。同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門センター診療部長を経て、2004年より現職。現在までに約4万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた第一人者。著書に『「排便力」をつけて便秘を治す本』(マキノ出版)などがある。
●松生クリニック
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