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いびきが重大な病気を引き起こす可能性も
以前は「いびきをかいてグーグー寝ている」という姿は、気持ちよく寝ているような健康的なイメージでした。
しかし、今では、いびきは睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があることが知られ、注意が必要になっています。
いびきは、気道が狭くなることで起こります。狭いところで呼吸をすると空気抵抗が大きくなり、振動で音が生じるのです。
太って体に脂肪がつくと、のどにも同じように脂肪がつき、気道が狭くなるので、いびきをかきやすくなります。
そのため「いびきをかくのは太った中年の男性」が中心だと思っている人が多いのですが、やせている女性にも起こります。
下あごが小さい場合、舌がのどのほうに下がりやすく、気道が狭くなるのです。
また、鼻に病気がある人も、口呼吸で気道が狭くなるため、いびきをかきやすくなります。
さらに、年齢とともにのどの筋肉が緩むことも、いびきの原因になっています。
このように、老若男女、体形を問わず、誰でもいびきをかく可能性はあるのです。
いびきをかく人は、大きな音で周りの人へ迷惑をかけるだけでなく、病気を引き起こす危険があることが問題となっています。
特に、いびきをかいて寝て、「よく寝たはずなのに日中眠い」「頭がぼーっとして集中できない」といった、脳疲労の自覚がある人は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、1時間に5回以上、10秒間呼吸が止まったり、弱まったりする病気です。
血中の酸素濃度の低下を繰り返すために、高血圧や心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などの合併症を招くことも少なくないのです。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ているときに、いわば酸素の薄い高地でトレーニングを行っているようなもの。睡眠中にこのような状態では、ぐっすり眠ることはできないですし、夜間に突然死を引き起こすこともあります。
また、電車やバスの事故は、運転手の睡眠時無呼吸症候群だったというニュースもよく聞きます。
睡眠時無呼吸症候群になると、日中、睡魔に襲われて、居眠り運転などの交通事故を起こす危険も指摘されているのです。
自覚症状のあるかたは、一度、専門のクリニックで診察を受けることをお勧めします。
片鼻呼吸やテープで鼻呼吸を習慣に
また、いびきは、自分でできる改善法があります。
まず寝るときの姿勢ですが、仰向けに眠ると舌が下がりやすいため、横向きで眠ることをお勧めします。
横向きで寝ていても、いつのまにか仰向けになっている人は、抱き枕を抱えて眠ると、姿勢が安定し、いびきをかきにくくなるでしょう。
また、口呼吸を行っている人は、鼻呼吸に切り換える訓練をしてください。
寝ているときだけ鼻呼吸を意識するのは難しいので、日頃から口を閉じるようにして、鼻で呼吸をするようにしましょう。
ヨガの「片鼻呼吸」を行うのも、鼻呼吸を意識するのに役立ちます。
片鼻呼吸のやりかた

片鼻呼吸は、難しいものではなく、左右の鼻呼吸を交互に行うだけですが、続けるうちに鼻呼吸の習慣がつくようになります。
さらに、ゆっくり呼吸を行うことで、リラックスでき、寝る前に行うと、寝つきもよくなるでしょう。
眠っているときに鼻呼吸ができているか心配な人は、鼻呼吸を誘導してくれる、市販の口閉じテープを利用するのも1つの方法です。
ほかにも、下あごを浮かせて気道を広げるマウスピースも販売されており、こちらもいびき対策には効果的です。
口閉じテープを使ってみる

しらはま りゅうたろう
睡眠、呼吸器内科、在宅医療の専門クリニック「RESM新横浜」院長。医学博士。日本睡眠学会認定医。筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大附属病院を経て2013年に「RESM新横浜」を開設。『1万人を治療した睡眠の名医が教える 誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム)ほか著書多数。
●RESM新横浜
http://www.resm.info/