解説者のプロフィール
松生恒夫(まついけ・つねお)
松生クリニック院長。
1955年、東京都生まれ。
東京慈恵会医科大学を卒業。
同大学第三病院内科助手、松島病院大腸肛門センター診療部長を経て、2004年より現職。
現在までに約4万件以上の大腸内視鏡検査を行ってきた第一人者。
著書に『「排便力」をつけて便秘を治す本』(マキノ出版)などがある。
●松生クリニック
東京都立川市羽衣町2-12-27
TEL 042-522-7713
https://matsuikeclinic.com/
「オリーブオイル納豆」で便秘が改善し下剤が不要になる
私は、便秘に悩む患者さんたちに、私が考案した「オリーブオイル納豆」(以下「オリーブ納豆」)を勧めています。
これは、納豆に少量のオリーブオイルを混ぜるだけのシンプルな食べ物ですが、便秘改善の効果は劇的です。
便が柔らかくなって排便しやすくなったり、おなかの張りが取れたりして、下剤が不要になったケースもあります。
例えば、46歳の女性は、毎日4錠の下剤を使用していました。
それがオリーブ納豆を1日1回、1パック食べるようにしたら、排便が促進され、4日目には下剤を使わなくても気持ちのよい便が出るようになったのです。
オリーブ納豆の作り方


オリーブオイルは便のすべりをよくする効果がある
そもそも、オリーブオイルは、紀元前から便秘に有効であるといわれてきました。
ヒマシ油と同様、腸を刺激して排便を促進する作用があり、その作用はヒマシ油よりもすぐれています。
オリーブオイルの成分は脂肪がほぼ100%で、脂肪酸の構成は、オレイン酸75%、リノール酸10.4%と言われます。ほかにリノレン酸、飽和脂肪酸も含んでいます。
これら4つの脂肪酸を含む食品はオリーブオイルだけ。
また、抗酸化物質のビタミンEが多いこともオリーブオイルの特徴です。
ちなみに、コレステロールは0です。
オリーブオイルとヒマシ油の便秘改善効果を比較した動物実験の報告では、ヒマシ油の主成分であるリチノール酸とオリーブオイルの主成分であるオレイン酸を比べると、短時間ではオレイン酸のほうが腸に吸収されにくいと述べられています。
このことから、短時間でオリーブオイルを比較的多く摂取すると、オレイン酸が腸内に多量に残り、腸管内容物と混ざって便が柔らかくなって、排便の促進につながると考えられます。
オリーブオイルは、主に小腸で吸収されます。
つまり、オリーブオイルは、小腸から大腸へ行くとき、便の滑りをよくするので排便が促進される、というわけです。
以前、便秘の患者さんたちにオリーブオイルの実験に協力していただいたことがあります。
66人に、朝食時、オリーブオイル20 mLの摂取を2週間続けてもらいました。
その結果、最も症状が重かった患者さんを除く65人が下剤の使用量が減り、下剤が不要になった人や硬い便が柔らかくなって排せつしやすくなった人もいました。
なお、便の元になる食物繊維が豊富な食品とオリーブオイルをいっしょに取ると、便秘改善の効果がより高まります。
そこで考慮したのが、オリーブ納豆なのです。
納豆には排便を促し腸内細菌を改善する効果がある
納豆には、不溶性の食物繊維が豊富で、100g中4.4gも含まれます。
不溶性の繊維は、胃で水分を吸って膨らみ、便のかさを増やします。
加えて、腸壁を刺激して便通を促す働きもあります。
また、水溶性の食物繊維も100g中2.3g含まれており、便を柔らかくするのにも有効です。
ところで、納豆の中にいる納豆菌の大部分は、生きたまま腸まで到達し、大豆のたんぱく質を分解します。
このときできたブドウ糖や麦芽糖をエサにして、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が増えていきます。
その結果、腸内は善玉菌が優勢になります。
つまり、納豆には、排便を促すと同時に、腸内細菌の状態をよくしてくれる働きもあるのです。
以上のように、オリーブオイルと納豆を合わせることで、便秘改善の効果はさらに高まります。
オリーブオイルは主に小腸や大腸で作用し、納豆は主に大腸で作用します。
メカニズムは異なりますが、オリーブオイルと納豆は、確実に腸の健康作りに役立つのです。
ちなみに、オリーブオイルも納豆も植物性食品ですから、思いのほか相性がよく、味はとてもおいしく、納豆特有のにおいも和らぎます。
私は、数年前から常食しており、私の娘も好んで食べています。
納豆嫌いの人にも安心して試してもらえると思います。
腸の健康は心の健康につながる

シンプルだが、便秘解消効果は劇的
ところで、腸と皮膚は密接な関係があると、経験的にわかっています。
便秘などで腸の状態がよくないと肌が荒れ、逆に腸の状態がよくなると肌が美しくなります。
ですから、特に女性にとって、便秘を改善し、腸の状態をよくすることは、美容の面からも重要です。
先に紹介した46歳の女性は、オリーブ納豆で便秘が改善しただけでなく、肌がしっとりと潤ってきたと、喜んでいます。
また、腸には脳に次いで神経が多く分布し、そのため第2の脳とも言われます。
現代人に多い腸の病気・過敏性腸症候群は、ストレスによって悪化します。
また、うつ状態は腸の不調によってもたらされることが多々あります。
こうしたメンタルヘルスの面からも、腸の健康は非常に重要です。
食事前の1パックでダイエット効果も
オリーブ納豆は、主に便通促進のために考案しましたが、実践したらダイエットができた人もいます。
そのためのポイントは2つ。
食事前に1パック食べることと、オリーブオイルの量は1日15 mLまでに抑えること。
食事前に食べれば満腹感が得られ、ご飯の食べすぎを防げるでしょう。
オリーブ納豆を考案した、松生恒夫先生