体験者のプロフィール

窪田好直
グリル満天星総料理長。
1932年生まれ。
1954年、当時宮内庁御用達だった『丸の内会館』でフランス料理の修業を始める。
「天皇の料理番」として知られる秋山徳蔵氏仕込みの本格フレンチに、和の風合いと健康への気遣いを盛り込んだレシピが、世代を超えて人気を呼んでいる。
薬を使わず食事療法で糖尿病を治療したい!
私は今年、84歳になりますが、現役でレストランの総料理長を務めています。
糖尿病になったのは、今から40年ほど昔のことです。
あるとき、排尿時に、妙に甘いにおいがするのに気づきました。尿の泡立ちも気になったため、「ひょっとしたら糖尿病かもしれない」と検査を受けたところ、予想が当たったのです。
当時の私は、働き盛り。フレンチはこってりとした料理が多いものですが、味見はシェフの重要な仕事です。仕事柄、おいしいものを次々と口にしているうちに、糖尿病を患ってしまったのでしょう。
糖尿病の症状は、特に現れなかったのですが、食前血糖値は20mg/dl以上、高いときには300mg/dl近くもありました(基準値は110mg/dl未満)。体重は約75kgで、年々増加傾向。血圧も、最大血圧で200mmHg以上と、かなり高めでした(基準値は140mmHg未満)。
医師からまず勧められたのは、インスリン注射です。しかし私は、それは避けたかったので、薬を使わず、食事療法に取り組むことにしたのです。
許可されたエネルギー摂取量は、1日に1500キロカロリーまで。しかし、それを守ろうとすると、空腹でしかたありません。腹持ちがよく、エネルギーは少なく、病気の治療にいいものはないかと探しました。
その結果、たどりついたのが、「タマネギスープ」なのです。
タマネギスープの作り方

70代の女性は1ヵ月でインスリンが不要!
タマネギスープは、週に1度、1週間分をまとめて作ります。私はそれを朝晩、カップに1杯ずつ飲むようにしました。
すると、血糖値がみるみる改善。なんと、半年ほどのうちに120mg/dlまでに下がったのです。医師からも、「インスリンの必要はない」と、お墨付きをもらえました。
こうしたわけで、かれこれ40年間、このタマネギスープを中心とした食事を続けています。このスープは、自然な甘みがあり、ご飯にもパンにも合うので、飽きることがありません。
参考までに、私の1日の食事パターンをご紹介しましょう。
●朝食
100gのご飯に、梅干し1個、生卵1個、納豆30g、オリーブオイル大さじ1を加え、混ぜて食べる。それに、ゆで野菜と生野菜のサラダ。そして、タマネギスープを1杯。
●昼食
焼きイモやおせんべいを、ほんの少しつまむ程度。何も口にしないこともある。
●夕食
主菜は魚の切り身か、ときには肉のことも。食パンを1切れと、野菜サラダ。そして、タマネギスープを1杯。
お酒を飲むのは、会合などのときだけ。甘いものは、たまの楽しみにとっておきます。
こうした生活を続けるうちに、血糖値は120mg/dl台で安定するようになりました。
会合などが続くと、130〜140mg/dl程度に上がることもありますが、少し節制すれば、すぐ元に戻ります。
体重はいつの間にか18kgほどへり、もうずっと57kg程度をキープしています。血圧もだいぶ下がりました。最大血圧は、120mmHgくらいです。
食事を変えることで、いっさい薬を使わずに病気をコントロールできるというのは、食に携わる私にとって、ほんとうに喜ばしいことです。
以前のこと、レストランにいらした、70代くらいの女性のお客様が糖尿病だというので、タマネギスープをご紹介しました。インスリンも使っていると話していたので、私より症状が重かったのでしょう。
そのかたは、早速実践したところ、なんと1ヵ月でインスリン注射が必要なくなったそうです。報告を受けて、私もうれしく思いました。
健康を守るタマネギスープ。ぜひ皆さんもお試しください
長く続けるうえでおいしさも重要(水嶋クリニック院長・水嶋丈雄)
タマネギには、イオウ化合物である硫化アリルと硫化プロピルが含まれています。硫化アリルは血液をサラサラにする働きがあり、硫化プロピルは糖の代謝を促進して血糖値の上昇をおさえてくれます。そこに酢が加わることで、その効果はさらに高まります。酢にも、血糖値の急激な上昇をおさえる作用や、血液をサラサラにする働きがあるからです。
ですから、酢タマネギに代表される、タマネギと酢の組み合わせは、糖尿病のかたに大変お勧めです。窪田さんが考案された「タマネギスープ」も、酢が入ったことで、糖尿病の改善効果が高まったのでしょう。さらに、ニンニクやベーコン、刻みコンブなどを加えることでうまみが増します。長く続けるうえで、おいしさも重要です。