解説者のプロフィール

出居貞義(いでい・さだよし)
大宮レディスクリニック院長。
信州大学医学部卒業後、自治医科大学産婦人科学教室に入局。
産科、婦人科などを経て、2004年に大宮レディスクリニックを開業。
妊娠しやすい体を他力本願ではなく自己実現する不妊治療で、なかなか妊娠できない女性が簡単に妊娠できるようにするとともに、女性のライフクオリティーの向上と、安全な出産や産後の母子の健康づくりを進めている。
●大宮レディスクリニック
埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-7-5ソニックシティビル14F
TEL 048-648-1657
http://www.omiya-lc.com/
骨盤内の冷えの原因は「運動不足」
私のクリニックに不妊治療で来院される患者さんの平均年齢は40代前半です。
不妊で悩まれている患者さんには1つの共通点があります。
それは骨盤内の臓器が冷えて固まっていること。
もちろん子宮も含まれます。
骨盤内が冷えているということは、血流が悪いということです。
このようなかたは、さらにいろいろな不調を抱えている傾向にあります。
生理痛が重い、生理不順、子宮や卵巣の病気がある、腰痛、肩こり、慢性疲労感などです。
こうした不調も骨盤内の冷え、子宮の冷えが原因であると考えられます。
私は、骨盤内が冷える最大の要因は、運動不足であると考えています。

骨盤は、腸腰筋や腹横筋、大腿四頭筋といった体の中でも最大の筋肉群に囲まれています。
特に腸腰筋は骨盤内の奥深くにある深層筋ですが、ここを鍛えようとすると、足を骨盤より高い位置に上げなければなりません。
日常生活ではそういうシーンはほとんどないため、なかなか鍛えられない筋肉なのです。
かつて腸腰筋は日常生活の中で自然と鍛えられていました。
昔の人たちは床の拭き掃除から洗濯、炊事、和式トイレで用を足すときまで、日常的に足を骨盤より高く上げなければならないシーンがあったのです。
健康な女性には生理痛はない
その昔、神学者であり、医師でもあったアルベルト・シュヴァイツァー博士(1875〜1965)は、アフリカに行ったとき、生理痛で苦しむ女性がいなかったことに驚いたという記録があります。
これは日々の生活の中で、骨盤周囲の筋肉が鍛えられているから。
本来、生理痛というものはありません。
生理痛があるのは体質などではなく、骨盤周囲の筋肉が衰えて固まり、中の子宮が冷えているからなのです。
骨盤周囲の筋肉を鍛えなければならないのですが、激しい運動では続きませんし、かえって体を傷める危険もあります。
そこで私が勧めているのが、いすに座って骨盤を動かす「骨盤ゆらゆら」です。
子宮を温める「骨盤ゆらゆら」のやり方

「骨盤ゆらゆら」で重症生理が軽くなった!
骨盤ゆらゆらは、骨盤を前傾・後傾させたり、上下させたりする簡単な運動ですが、骨盤周辺の深層筋をじゅうぶんに動かすことができます。
これらの筋肉が鍛えられるので、子宮や卵巣が温まり、骨盤内の血行改善にもとても効果的です。
血流が改善されると、子宮内膜が厚くなり、また、子宮や卵巣も温まることで機能が高まるので、妊娠しやすくなります。
私のクリニックでは月に2回、骨盤ゆらゆらの講座を開催しており、これまでに150人以上が受講して、多くの人が効果を得ています。
中には重症生理痛が、たった1回骨盤ゆらゆらを行っただけで、翌月の生理が軽くなったかたや、長年不妊に悩んでいたのに妊娠されたかたなどもいらっしゃいます。
肩こりやむくみの解消、ダイエットにも効果大

そのほか、グラフのとおり、冷え症、肩こり、腰痛、発汗、むくみ、ウエストやヒップのシェイプアップなどにも効果が出ています。
「便秘が改善した」「寝違えなくなった」「カゼを引いても治りが早くなった」といった声も聞きました。
また、医学的データでは、排卵数や受精卵が増えているという結果が出ています。
このことは、産婦人科学会で詳しく発表する予定です。
効率的に筋肉を鍛えられるため、運動が苦手な人や高齢者でも無理なく継続することができます。
その証拠に、骨盤ゆらゆらの講座を受講した人のうち、6割以上が自宅でも継続していると答えています。
ストレスがたまるどころか、むしろリラックスできる運動なのです。
代謝が上がってより妊娠しやすくなる
骨盤周辺が温まり、血流がよくなると、全身が温まり、代謝も上がってきます。
クリニックの不妊治療では、運動療法のほかに栄養療法の指導も行っていますが、骨盤ゆらゆらで代謝が上がることで栄養療法の効果もグンと上がり、より妊娠しやすくなります。
仕事は一日じゅうデスクワーク、掃除は掃除機、炊事は全自動、トイレは洋式……という毎日では、どうしても骨盤の周囲の筋肉は衰え、子宮は冷えてしまいます。
手軽で効果の高い骨盤ゆらゆらを実践して、「温かい子宮」を保つことを心がけてください。