
ゴーヤの有効成分を摂取できる「ゴーヤ茶」
ゴーヤは、ニガウリという別名からもわかるように、強い苦みが特徴の、沖縄の代表的な食材の1つです。
最近では、沖縄に限らず、どこでも売られており、すっかりポピュラーな野菜になったといえるでしょう。
ゴーヤを使った料理といえば、ゴーヤチャンプルーや、ゴーヤのサラダなどが挙げられますが、ここで、皆さんにご紹介したいのが、「ゴーヤ茶」です。
ゴーヤ茶は、ゴーヤの種やワタを取り除かずに、身をそのまま薄切りにし、天日干しにします。
このカラカラに干したものを煮出して作るのです。
ゴーヤは、まさに万能薬といってもよいほど多くの健康効果に恵まれた食材ですが、毎日ゴーヤ料理を食べるとなると、手間もかかり、なかなか大変です。
その点、ゴーヤ茶は、作り置きしておけば、数日間は保存がききますし、手軽にゴーヤの有効成分を摂取できるという長所があります。
ゴーヤ茶の健康効果
では、ゴーヤ茶には、どんな健康効果が期待できるでしょうか。
これについては、ゴーヤそのものの効能をお話しするのが最も手っ取り早いでしょう。
まず第1に取り上げたいのは、ゴーヤの糖尿病に対する効果です。
私の専門は、糖尿病患者の食事の研究で、ゴーヤについても、糖尿病との関連を調べてきました。
糖尿病は、次に挙げる2種類に分けられます。
● Ⅰ型糖尿病
もともと膵臓の機能に障害が起こって生じるタイプで、インスリン依存型といわれます。
● Ⅱ型糖尿病
肥満や偏った食事など、生活習慣によって引き起こされるタイプで、インスリン非依存型です。
この2種類の糖尿病のうち、現在、日本の糖尿病患者のおよそ9割以上が、Ⅱ型糖尿病です。
ご存じのとおり、生活習慣から引き起こされるⅡ型糖尿病の場合、食事療法と運動療法が、治療の2つの大きな柱です。
このⅡ型糖尿病について、ゴーヤは、どのような効果を発揮するのか、マウス(実験用のネズミ)を使って実験を行いました。
糖尿病のマウスに、1日1回、体重1㎏当たり100mgのゴーヤの抽出物を与えます。
実験は3週間にわたって行い、1週間ごとにマウスの血糖値を測定しました。
ゴーヤを摂取する前、マウスの血糖値は、500mg/dLを超えていました。
ところが、ゴーヤを摂取すると、血糖値は徐々に低くなっていき、3週間後には、300mg/dL近くまで低下していました。
マウスの正常な血糖値は、150mg/dLです。
糖尿病のマウスはほうっておけば、どんどん血糖値が上がっていくのですが、ゴーヤを与えることで、血糖値の上昇が抑制されただけではなく、どんどん血糖値を下げることができたことになります。
ゴーヤの摂取+運動で血糖値を下げる効果が上がった!
さらに私たちは、別の実験も行っています。
糖尿病のマウスを、ゴーヤを食べさせた群、運動療法をさせた群、ゴーヤを食べさせ、かつ、運動療法もさせた群の3つの群に分け、それぞれ4~5週間かけて、血糖値の変化を調べたのです。
この実験の場合、それぞれ、実験前のマウスの血糖値は、400mg/dLありました。運動療法のみの群では、270~280mg/dLまで血糖値が下がりました。
ゴーヤを食べさせた群は、250㎎/dlまで下がりました。
そして、ゴーヤ+運動療法の群は、最も効果的でした。
150mg/dLまで下がり、マウスの正常値まで血糖値を下げることができたのです。
この実験によって、ゴーヤを食べて運動をすると、より大きな効果が得られる可能性が示唆されたといっていいでしょう。
ゴーヤジュースを飲んで血糖値がおよそ10%下がった!
ところで、なぜ、ゴーヤは糖尿病に対してこのような効果をもたらすのでしょうか。
ゴーヤには、インスリンと似たような作用をする成分が含まれているとされています。
この成分は、「植物インスリン」と呼ばれています。
つまり、ゴーヤを摂取することで、ゴーヤ中の植物インスリンが、膵臓から分泌されるインスリンの代役をしてくれると考えられるのです。
また、ゴーヤには、チャランチンという物質が含まれています。
このチャランチンには、膵臓のβ細胞の働きをよくする作用があると考えられています。ゴーヤの血糖降下作用には、このチャランチンの働きもあるでしょう。
私が行ったのは、マウスを対象とした研究ですが、実際に海外(バングラデシュ)では、糖尿病の患者さんに、ゴーヤジュースを飲んでもらい、血糖値を測る臨床試験も行われています。
その結果、ゴーヤジュースを飲み始めて11日で、患者さんの血糖値がおよそ10%下がったという報告もされています。
豊富に含まれるカリウムが高血圧解消にも役立つ
また、高血圧にも、ゴーヤが有効であることもわかっています。
ゴーヤ100g中には、260mgのカリウムが含まれています。
このカリウムが、高血圧の原因となる体内の余分なナトリウムを排出してくれるのです。
さらに、ゴーヤは、肥満の解消にも役立ちます。
そもそも、私たちが食事から得るブドウ糖は、血液中に入ると、インスリンによって各細胞に取り込まれます。
ところが、糖尿病などでインスリンの働きが悪くなっていると、体内で処理しきれないブドウ糖が、脂肪に合成され、蓄積されていくのです。
それが、肥満にもつながっていくことになります。
この点、ゴーヤの植物性インスリンなどの作用で、インスリンの働きが補われると、余分なブドウ糖が血中に残りにくくなります。
食べたものも効率よくエネルギーとして燃焼させられますから、基礎代謝も上昇し、この結果として、ダイエットに役立つことになるのです。
それに、そもそもゴーヤは、100gで17 kcalしかありません。
油で炒めても、53 kcalにふえるだけですから、ゴーヤ自体がとても低カロリーな食品なのです。
ゴーヤのビタミンCは熱に強い
加えて、ビタミンCの効果もあります。
ゴーヤ100g中には、ビタミンCが76mgと、豊富に含まれています。
ビタミンCは、優れた抗酸化作用があり、シミやソバカス、シワやたるみなどの予防・改善にも役立ちます。
しかも、ゴーヤのビタミンCには、1つの特長があります。
通常、ビタミンCは熱を加えられえると、壊れてしまいます。
ところが、ゴーヤのビタミンCは熱に強く、分解されにくいのです。
つまり、ある程度加熱しても、壊れずに残っているのです。
この点も、ほかのビタミンCの多い食品との大きな違いということができるでしょう。

ほのかな苦みがおいしいゴーヤ茶
種の不飽和脂肪酸の働きでダイエット効果も得られる
ここまでゴーヤの効能についてお話ししてきましたが、以上のような健康効果は、おそらくゴーヤ茶においても同じように期待できると考えられます。
加えて、ゴーヤ茶の場合、つけ加えられるメリットがあるとすれば、種もいっしょにお茶として煮出しているという点です。
ふだん食用にはしないゴーヤの種には、共役リノレン酸という不飽和脂肪酸(脂肪を構成する成分で植物油に多い)が含まれています。
この共役リノレン酸は、脂肪の燃焼を高める働きがあります。これは既に、北海道大学の研究グループが実験を行って証明しています。
つまり、この種の不飽和脂肪酸の働きによって、脂肪燃焼が促進されることになります。
この点から、ダイエット効果も期待することができます。
また、共役リノレン酸が、脂肪燃焼を促進させることは、インスリンの働きも助けますから、その面からも、糖尿病の予防・改善に役立つでしょう。
くり返しになりますが、ゴーヤは、健康の万能薬といってもいい食材です。
ゴーヤ茶や、ゴーヤ料理を毎日のメニューの中に取り入れて、ゴーヤの健康効果を活用してください。
解説者のプロフィール
鈴鹿医療科学大学保健衛生学部教授
三浦俊宏
●鈴鹿医療科学大学保健衛生学部
三重県鈴鹿市岸岡町1001番地1
http://www.suzuka-u.ac.jp/