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【根治を目指す】腸の難病を克服した医師が勧めるセルフケア3ステップ

【根治を目指す】腸の難病を克服した医師が勧めるセルフケア3ステップ

私が目指したのは、薬で症状をおさえ込むのではなく、本来の意味での根治でした。さまざまな試行錯誤の結果、私は薬をやめても潰瘍性大腸炎の症状が再発しない状態にこぎつけることができました。以来、この年まで一度も症状が出ていません。【解説】西本真司(西本クリニック院長)

難病指定を受けている原因不明の病気

 現在、二度めの政権を担っている安倍晋三首相の動向を、私はひとかたならぬ関心を抱きながら見守っています。再登板の安倍首相が、日本をどのように導いてくれるかということに加え、私の場合、やはり病気のことが気になるのです。

 安倍首相は、前回政権を担った際、「潰瘍性大腸炎」で苦しんだことは大きな話題となりました。首相を辞任した際も、この病気が辞任理由の一つとして挙げられたほどです。

 潰瘍性大腸炎は、いわゆる難病指定を受けている深刻な病気です。いまだ原因不明とされる自己免疫疾患の一つで、腹痛や血便、激しい下痢などの症状が起こります。

 実は私自身、29歳のとき、潰瘍性大腸炎の診断を受けています。私はなんとかこの病気を克服することができましたが、2011年の時点で、およそ13万8000人の患者さんがこの難病に苦しんでいます。

 安倍さんが再び首相の座に就き、元気に働いておられることは、同じ病気に苦しむ多くのかたたちを大変勇気づけるものだといっていいでしょう。

 私がこの病気を発症したのは、1990年の暮れのことです。一日に7〜8回の下痢から始まり、それがやがて血便へと変わっていきました。潰瘍性大腸炎の診断を受け、合計4回の入退院をくり返しました。その間には、一日40回近くの下痢と血便に苦しんだこともありました。肛門周囲膿瘍という合併症が起こってしまったこともあります。

 一般に、潰瘍性大腸炎は治らない病気とされています。私も、病気の宣告を受けた当初、先輩医師から「99・999%治らない」といわれたものです。

 ちなみに、安倍首相の服用している治療薬「アサコール」が話題になっています。これは、確かに腸の炎症をおさえるうえで役立つ薬ですが、残念ながら、これを飲めば潰瘍性大腸炎が根治できるというものではありません。

 私が目指したのは、薬で症状をおさえ込むのではなく、本来の意味での根治でした。さまざまな試行錯誤の結果、1998年には、私は薬をやめても潰瘍性大腸炎の症状が再発しない状態にこぎつけることができました。以来、この年まで一度も症状が出ていません。目指していた根治へと、ようやくたどりついたのです。

 では、根治のために、何をすればいいのでしょうか。
 私が根治を目指した当初、自分がこの病気になった理由を考えてみました。そして、それまでの自分の性格や生活ぶりを顧みて、さまざまなストレスがこの病気と深く関係していると考えるようになりました。

 これは、私だけではなく、多くの患者さんにも共通する事柄です。現代は大変なストレス社会で、多くのかたが強いストレスを感じています。例えば、若い学生さんは厳しい受験競争を勝ち抜かなければならず、社会に出ても不況の中で生活していかなければなりません。そうした精神的重圧が、この病気の引き金の一つとなるのです。

 自律神経は、交感神経と副交感神経からなり、この両者が拮抗してバランスを取り、有効に働きながら私たちの体調を整えています。

 ところが、ストレスがかかると、自律神経のうち、交感神経が優位になります。自律神経のバランスがくずれると、免疫力が低下し、さまざまな病気が起こりやすくなります。また、ステロイド剤や消炎鎮痛剤などの使用も、交感神経を緊張させます。

 この病気を快方に向かわせるためには、精神的に自分を追いつめているストレスの正体を探り、それを取り除く努力をすることが大切です。このため、私のクリニックでは、根治を目指したい患者さんに、生活面や心の持ち方を含めた指導を行っています。

病気の引き金となるストレスの乱れを改善

 それとともにお勧めしているのが、「爪もみ」「ゆったり体操」「手振り体操」です。
 これらは、ストレスから生じる交感神経の緊張を解き、自律神経のバランスの乱れを改善する助けをしてくれます。

 また、ゆったりした呼吸や、手振り体操などのリズム運動は、精神的な安定をもたらす脳内の神経伝達物質・セロトニンの活性を高めます。病気が長引くと患者さんは悲観し、うつなどの症状を併発することがあります。こうなると、いよいよこの病気は治りにくくなります。ゆったり呼吸や手振り体操でセロトニンの活性を高め、前向きな考え方を持ち続けることが、根治への近道だといえるでしょう。

 また、食事も大切です。食事療法のポイントとしては、一般的には、控えたほうがよいとされる食物繊維の多い食品も、私は、「よくかみさえすればOK」としています。主食としては、玄米かソバがお勧めです。
 肉類は控え、新鮮な魚介類を多くとることや、できるだけ薄味を心がけることも大事です。食事をとる時間や量、食品に含まれる食品添加物などにも注意してください。ただ、あんまり厳密にやろうとすると、それがかえってストレスになることもあります。ですから、欧米風の食事に偏るのを避け、和食を基本にして、感謝しながら楽しく食べるのがいいでしょう。

ゆったり呼吸のやり方

❶あおむけに寝て目を閉じ、口から息を吐き切る。
❷鼻から息を吸いながら「1・2・3」と3秒数える。
❸息を止めて4秒数える。
❹口から息を吐きながら、5秒数える(3-4-5の呼吸)。
❺②〜④を5分間くり返す。

※慣れてきたら、4-5-6、4-6-10と時間を延ばすとよい。

手振り体操のやり方

❶肩幅に足を広げて立ち、鼻から息を吸い、口から吐きながら、足の指で地面をつかむように力を入れる。これを数回くり返し、地面と足の一体感をつくる。
❷ひざの力を抜いて曲げ、手のひらを内側に向けた状態で、両手を同時に前後に振る。手を振る大きさは、前後45度が目安。
❸②の運動を5分間(約250回)行い、それを1日4度(合計約1000回)くり返す。

ステロイド剤をやめられた実例

 2007年に、こうして元気になり、薬の離脱に成功した26名の症例データを集めて、一冊の本にまとめて発表しました(『潰瘍性大腸炎 医師も患者もこうして治した』マキノ出版)。その後も離脱に成功した人の数はふえ続け、現在では、まもなく100名に達しようとしています。

 では、次に、今回ご紹介した方法で潰瘍性大腸炎を克服した患者さんの体験例を紹介しましょう。
 一人めは、50代の女性です。このかたは保育関係の仕事をしており、仕事のうえで強いストレスがあったとのことでした。和歌山にある私のクリニックに来られたとき、潰瘍性大腸炎に対する考え方や、手振り体操のやり方などをお教えしました。

 実際、このかたが本格的に手振り体操などの自己治療を始められたのは、さらに症状が悪化し、入院した後のことでした。けっきょく、入院しても状態は好転せず、ステロイド剤を使っても状態はいっこうに改善しないばかりか、下痢が続く状態だったそうです。
 そんな絶望的な状況だったからこそ、逆に決意したのでしょう。その後、この女性は手振り体操などを一日八時間にわたって、毎日、徹底して実行し続けました。
 こうして続けているうちに、一日の便の回数が徐々にへり始めたのです。一年ほどたって来院したときには、症状はすでに全く出なくなっており、ステロイド剤も完全にやめることができていました。

 二人めは、76歳の男性です。心臓の大動脈弁の手術で入院。この入院中に下痢が始まり、その後、潰瘍性大腸炎と診断されました。いったんはステロイド剤を使うことで症状が落ち着きましたが、一年後に再発。入院してステロイド剤を使用したものの、ほとんど効果がありませんでした。
 そんな状態の5年前、私のところに来院され、爪もみ、手振り体操などを指導しました。それからこの男性は非常に熱心に取り組み、毎日2〜3時間かけて爪もみなどを行いました。
 この結果、激しかった下痢も止まり、ステロイド剤も使わずに済むようになりました。今では、症状は完全に解消し、すっかり元気になられています。

 ただし、長期にわたってステロイド剤を使用してきたかたの場合、必ず医師の指導のもとに離脱を行ってください。
 また、潰瘍性大腸炎のかたが爪もみを行うと、最初は一時的に痛みや下痢が悪化することがあります。しかし、これは、症状が改善する前の生理的な反応ですから、心配せずに気長に続けることが肝心です。

解説者のプロフィール

西本真司
1961年、和歌山県生まれ。近畿大学医学部卒業。熊本大学医学部附属病院麻酔科、熊本赤十字病院麻酔科、山鹿市立病院をへて、1996年、西本第2クリニックを開業。2006年、西本クリニックと西本第2クリニックを統合し、西本クリニック院長に就任。自らの潰瘍性大腸炎の闘病経験を活かしたホリスティックな医療を実践する。著書に『潰瘍性大腸炎 医師も患者もこうして治った』(マキノ出版)などがある。
●西本クリニック
http://home.att.ne.jp/surf/nishimoto/

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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