
病気の9割は自助努力で治せる
患者さんの顔を見れば、「薬をやめてみませんか?」といっている私には、いつしか「ドラッグバスター(薬退治人)」という異名がつきました。
このニックネームは、アメリカのSFコメディ映画『ゴーストバスターズ』をもじったものです。
悪さをする幽霊退治さながら、薬の害を説いて回る私に、仲間たちが勝手につけたものです。
私が「ドラッグバスター」になったのは、ささいなきっかけでした。
友人の一人が、高血圧で降圧剤を飲み始めて以来、体調不良で悩んでおり、その相談を受けたのです。
私は彼に降圧剤をやめ、生活習慣を変え、血圧が上がる要因となるストレスをへらすことを提案しました。
すると彼は、みるみる元気になりました。その彼が、薬の害に悩む患者さんを、次々紹介してきたのです。
こうした例が実に多いことを知った私は、薬の害について、患者さんや老人ホームのお年寄りにも説いて回りました。
病気の九割は、自助努力で治せる「命にかかわらない病気」です。
にもかかわらず、病気が治らないのは、薬に頼り切り、薬の害を受け続けているせいなのです。
薬は「百害あって一利なし」ではありますが、「一利」くらいはあるということは認めてもいいでしょう。
薬を飲み続けていい3つのケース
以下のケースでは、薬を飲み続けてもいいと思います。
①病気のなり始めで症状が激しいとき、なだめ薬(役)として、短期間の使用はいいでしょう。
②痛みがあまりに激しく耐えがたいときは、我慢せず使っていいでしょう。慢性痛のある人は、痛みが治まったら、自己の治癒力を高める自助努力で、痛みの再発を防いでください。
③ガンの治療を行う場合も、抗ガン剤は免疫力の低下を招きますから、基本的には避けるべきです。ただ、ガンの勢いが非常に強く、体が負けそうになっているときは、患者さんの体をよく診て、さじ加減をすることを条件に飲んでもいいでしょう。
それは、あくまで緊急避難です。
抗ガン剤は、「時間稼ぎ」のために使ってください。
安易に薬を飲む前に生活を見直す「薬の飲みどき、やめどき」
頭痛薬
次に、どんなとき薬を飲むべきか、やめるべきかを、具体的にお話ししましょう。
まず、頭痛薬です。頭痛の患者さんのほとんどは命にかかわるものではなく、肩のこり、目の酷使などによって生じる慢性頭痛です。
ありふれた症状なので、安易に痛み止め(消炎鎮痛剤)を使用しがちです。
目が開けられないほどの痛みや、吐き気を催すような痛みが起こった場合は、薬を使うのはやむをえません。
しかし、頭痛が起こったら、即、痛み止めという使い方は避けるべきです。
便秘薬
第二に、便秘薬です。
便秘薬を常用すると、薬の刺激に腸が慣れてしまい、さらに便秘が悪化します。薬をやめ、食生活の改善によって、便秘解消を目指すべきでしょう。
胃腸薬
次に、胃腸薬です。
胃腸薬は、サプリメントを飲むような感覚で、常用に抵抗を持たない人が多いようです。
しかし、ことにお年寄りの場合、胃腸薬の飲みすぎで、複数の副作用が起こることがあります。
安易に胃腸薬を飲むことは、危険と知っておいてください。
降圧剤
次に、降圧剤です。
血圧が高くなるにはその人なりの理由があります。
家族が皆、遺伝的に高血圧というかたの場合などは、無理に降圧剤で血圧を下げると、さまざまな体調不良が出てくることがあります。
検査で血圧が高めに出ても、健康状態がよいなら、慌てて薬に頼る必要はありません。
最大血圧が200ミリ以上で、それが体の負担となっているときは、薬で下げる必要もあります。
しかし、200ミリ以下を保っているなら、体が血流を調整している範囲と考えていいでしょう。
血糖降下剤
それから、血糖降下剤です。
糖尿病の場合、まず、血糖を上げている根本原因を取り除くために、生活面の見直しを図ることが大前提です。
薬を使う前に、まず自助努力で血糖値を下げることを目指してください。
コレステロール降下剤
最後に、コレステロール降下剤です。
コレステロールを下げすぎると、細胞が生きる活力を失い、健康を害するおそれがあります。
やはり、ここでも生活の見直しが第一。薬に安易に頼らないことが大事です。
薬をやめる4週間ルール

では、薬をやめるには、どうしたらいいのでしょうか。
それには、「薬をやめる四週間ルール」を実践してみてください。
第一週めは、まず薬の量を半分にして、様子を見ます。
この第一週めが最も注意が必要です。
この「半減」をクリアできれば、おおむね離脱は成功です。
薬の種類やその人の服用期間、症状の度合いによって、半減の段階に、2〜3週間かかる場合もあります。
第二週めは、第一週めで何も不具合が起こらなければ、さらに半分の量にへらします。
最初の量の四分の一になります。
第三〜第四週め。
ここまで不具合がなければ、第三週めは、さらに半分(最初の量の8分の1)。
これで問題がなければ、第四週めで、さらにその半分の量(最初の量の16分の1)にします。
第五週め以降、不具合が起こらなければ、薬をやめます。
この「薬をやめる四週間ルール」で、たいていは無理なく薬からの離脱ができるはずです。
ご自分の体調を見ながら、ときには理解のある医師の助けを借りながら、焦らず、ぼちぼち進めるようにしてください。
解説者のプロフィール

e-クリニック医師
岡本裕(おかもと・ゆたか)
●e-クリニック
http://e-clinic21.or.jp/